4/15/2017

[biz law] 自動ブレーキ試乗デモ失敗で衝突事故

欠陥機能を見切り発車的に載せる自動車メーカーが悪いのか、それともそれに騙される方が悪いのか。いずれにしろ、またやらかしたそうです。今回は千葉にある日産ディーラーの試乗車(セレナ)で、公道を試乗中、前方で停車している車がいる場面で、あろうことか自動ブレーキを故意に働かせようとして敢えてブレーキを踏まないよう運転している顧客に指示したところ、動作せずそのまま前の車に衝突、衝突された車に乗っていた人が軽傷を負ったんだそうで。

無論故意ではないものの、補助機能に過ぎない自動ブレーキ機能の動作の特性を誤解し、事故の危険が伴う違法な指示を出したディーラーの担当者は無論第一に有責であり、おそらく自動ブレーキ機能について知識も乏しかっただろう運転者にも、漫然と指示に従うのみで、自動ブレーキが効かなかった場合に備えて通常のブレーキを動作させられるよう備えておかなかった過失が認められるわけで、いずれも犯罪となります。過失傷害と注意義務違反でしょうか。公道上で事故を起こした責任は、決して軽いものではありません。

本件は、以前マツダのディーラーが同じく自動ブレーキのデモに失敗してフェンスに突っ込んだ件とほぼ同じ事情によるものですが、あれはディーラーの私有地内での単独の物損事故であり、結果的にはまだディーラーの自己責任と言えるものでした。それと比べても、他の車を損壊させ、また人身に被害も生じさせた本件は過失の程度が高く、責任も遥かに重いものと評価すべきところです。

自動ブレーキが作動しなかった理由は天候不良等によるものとされているようですが、そんな事は何の言い訳にもなりません。その程度で動作不良を起こすような、全く信頼に値しない欠陥機能を登載して売りにしているところからして、安全性が何よりも重要な筈の自動車のそれとして不適切だと言わざるを得ないところですし、それ以上にそのような稚拙な機能を完全なものと思い込み、顧客をして事故を起こさせ、何の関係も落ち度もない他人をして被害を被らせるなど言語道断です。

しかしさらに恐ろしいのは、現行セレナが売りにしているのは自動ブレーキ機能のみではなく、より総合的な自動運転機能の登載を謳っている点にあります。一般に自動運転機能、という表現が意味するところは、自動ブレーキ機能以外にもオートクルーズや自動駐車等様々ですが、それらに共通する必要条件として、当然ながら車の周囲の状況、先行車、対向車、歩行者も含む障害物等、およそ全ての状況を把握出来る事が必須になります。そこに誤り、特に見落としや誤認は絶対にあってはなりません。絶対にです。特に走行中であれば、最低限前方の状況の誤認識は許されません。でなければ即事故を起こしてしまうからです。

しかし、今回の事故ではよりによって前方車を見落としてしまいました。見落としをした時点で、衝突事故の発生は必然の結果であったという他ないわけですが、最も基本である筈の、至近距離にある前方車の認識にすら失敗するようでは、より複雑で、速度等シビアな環境で正確な認識を要求するだろう他のアクティブ系の機能が動作すべき時には、なおさら失敗の可能性は高いものと考えざるを得ません。機能が自動ブレーキだけで、かつドライバーが運転を誤った場合等の補助的なパッシブ機能としてのみ動作するのなら、まだ積極的に有害とまでは言えないかもしれませんが、そうではないのです。その他の、能動的な動作を主とする機能に誤動作の可能性が高い、というのは致命的で、到底許容出来る筈もありません。結局のところ、セレナの自動運転機能はきわめて危険なものと評価せざるを得ないでしょう。

当然ながら、いくら便利で先進的な機能でも、その動作に事故の危険を伴うのであれば無意味です。それどころか有害と言えるでしょう。まして、今回のように雨天という当たり前に生じる状況になった位でその誤動作が生じ得る、というのでは話になりません。のみならず、その危険性を十分に認識し、さらに顧客へ周知させる義務を負っている筈のディーラーの担当者ですら全く理解すらしていない、というのでは。。。高速走行中等でなくてまだ良かった、というべきなのでしょう。実際、米ではTesla Model Sで既に死亡事故が起きてしまっています。そのような、取り返しのつかない重大事故が起きてしまう前に、登載自体取りやめるべきだと思うのです。

しかし、日産は無謀にも2020年までの一般道での完全自律自動運転車の実現を掲げているわけで。その目標の経営方針における位置づけの重要さ加減からすれば、おそらくは強制されない限りそれを取り下げる事はせず、従って今回の、比較的軽いと言えるだろう被害の発生程度では防止には動かないのでしょう。そうであれば、その無謀が犠牲者を生むだろう事は殆ど避けられない必然であって、そうと知りつつも避ける事すら困難な現状には、暗鬱たる思いを抱かざるを得ないのです。

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