1/10/2017

[biz law] VW米法人の規制対応部門責任者逮捕

年末年始を挟んで、Volkswagenの試験チートプログラムを用いた環境性能詐欺、通称dieselgateの周辺が俄に騒がしくなっているようです。

リコールの部分的な承認があったり、米当局への罰金額等が決着に近づいていると報じられたりする一方、仏等EU域内でも集団訴訟が提起され、本件を巡る責任の具体化が一気に進みつつあった中、米国でVWにおける本件の窓口役を務めていた、同社の規制対応部門のトップであるOliver Schmidtが米FBIに逮捕されたんだそうで。

流石にこれは当然の結果というべきでしょうか。何せSchmidtは、2014年頃に本疑惑が浮上して以来、繰り返し開かれた当局の調査や尋問等においてその回答役を務め、そこで繰り返し技術的な問題であり虚偽ではないとして言い逃れを続け、最終的に追い込まれてその答弁が全て虚偽であり、故意の不正であった事を認める醜態を晒した当人であり、従って虚偽答弁・報告という直接的な証拠が存在し、個人として最も罪に問うことが容易な人物だったのですから。

これから同容疑者への尋問等を通じてより内部的な部分への捜査が進められる事になる事は間違いなく、それによって少なくとも経営層の容疑は相当な所まで具体的に把握されるだろうところとなりました。この手の事件において捜査が極めて早い米国にしてはやはり非常に時間がかかった印象が強いところですが、同氏クラスの人物の逮捕というのは間違いなく本件捜査における最重要局面の一つであって、そこで得られるだろう証拠ないし情報は決定的な意味を持つものが期待されるであろうし、またそうそう何度も繰り返し得るものでもない事から、おそらくはそこで期待し得る成果から想定される展開、経営陣や実働部門への追求、あるいは芋づる式の摘発等、その準備に相応の時間がかかったのであろうかと推測されるところです。そうであれば、刑事的な処理の事前準備はほぼ完了しているのでしょうから、これを契機として一気に摘発が進められる事になるのでしょう。

そして、刑事的な処理が進めば、それに伴って未だ不明確な責任の所在も明らかになって行く筈ですから、民事的にも、ユーザからの損害賠償請求、告発、また株主からの代表訴訟等が提起されていく事になるのでしょう。ようやく、本件の実情が具体的かつ公に追求されるようになる、という事です。司法的にはまさにこれからが本番、というわけですが、そこでどんな惨状が曝け出され、どんな教訓が見出され得るのか、やはり興味を抱かずにはいられないのです。

ところで、Volkswagen社は業績的には回復しているんだそうで。極めて意外に感じられるところはありますが、無論これは賠償等が表面化していない、すなわち会計的に損失を先送りしているから、というだけの事なわけですけれども、その辺の責任が具体化する前に潰れて有耶無耶になるという事態を避けられるという意味で、一応は歓迎すべき事と言えなくもないのかもしれません。

しかし、Diesel亡き後の技術的柱のない同社の話ですから、そもそも安定して事業を継続する力があるのか否かは別問題なわけで。いくらDieselの代わりの柱が必要だと言っても、そこに今更EV推しとか。。。あくまで環境をメインコンセプトとする、という事なのでしょうけれども、本件によって、VWが言うcleanはもはやdirtyとしか思えなくなってしまっているというのに、それでもその路線というのは、ちょっと正気を疑わざるを得ないのですよ。そもそも需要も桁が幾つも違うし、Dieselの代わりには成り得ないと思うのですが。自動運転にしても、Teslaよりヤバそうな予感しかしませんし。ともあれ、かように意味不明な状況のメーカーが販売台数世界一というのは、世の中の不条理を具現化しているようにも感じられるところですが、さてこれからどうなることやら。

F.B.I. Arrests Volkswagen Executive on Conspiracy Charges in Emissions Scandal

[過去記事 [biz law] VWディーゼル車に排気ガス適合試験での不正プログラム使用発覚]