11/29/2016

[pol] 英米に続き仏も保守回帰、排外へ

フランスの次期大統領選の予備選において、右派共和党(旧UMP)ではFrancois Fillonが決選投票でAlain Juppeを大差で退け、候補者として確定しました。

本選では、Fillonの他、極右派国民戦線のMarine Le Penに加え、現職のHollande大統領率いる社会党を含む3者で候補が乱立する左派が票を食い合う選挙戦が予想されていますが、現時点の世論調査ではFillonが優勢な模様とのことです。具体的には、第一回投票を想定した調査では対Le Penで僅差、左派の各候補には2倍から3倍程度で圧勝の見込みで、また決選投票のように1対1を仮定した場合には、Fillon対Le Penではダブルスコアになる等、いずれの候補にも大差でFellonが勝利する見込みだそうです。要するにFillonの圧勝ですね。

無論本選はまだ数か月も先の話で、新候補はしばしば登場時に過剰な期待を受ける事があるものだし、情況は様々に変化するものにつき予断は禁物ではあります。が、支持の拡大も踊り場に来たように見える極右に競り勝ち、かつ左派3陣営の各候補はFillonには遠く及ばない事からすれば、現時点でFillonが次期大統領になる可能性は相当に高いものと見てよいのでしょう。

特に、左派はもう無理かもしれない、と思うわけです。近々では移民政策での明らかな失敗等から政権への批判が高まって極右や保守に支持が流れ、左派が一枚岩になっても対抗は相当に困難であろう現状にあって、極左とそれ以外の対立に加え、Hollade政権下で事務局長を務めたEmmanuel Macronが独立候補として立って社会党の基盤を大幅に侵食しているうえ、肝心の社会党ではHollande現大統領と首相のManuel Vallsが内紛に近い状態にある、というのですから。率直に言って明らかに対Fillonを云々する以前の段階で全く話になりません。実際、3者(社会党は党として)各々10%前後しか支持が得られておらず、全部足してようやく可能性が生じるにすぎない、というのでは、そもそもその仮定が成立するところの決選投票に進む事すら出来ないという事になるわけで、むしろ不可能と言い切っていいかもしれません。

というわけで、結局のところ、フランスも保守回帰が見込まれるところとなりました。これがさらに極右にまで進む可能性はあっても、左派へと戻る事は当面は考えられないでしょう。すなわち、既に移行が進む英国・米国に加えて仏も保守回帰を果たす事となり、ドイツを除く主要国が揃って国内優先政策に舵を切ったものと言えます。その経緯からすれば、移民政策は根本的に排外へと転換する事は避けられず、経済的保護主義とも合わせて欧州各国間での方針の相違はさらに鮮明となり、EU崩壊の懸念はより一層深まるところとなるわけです。

今や主たる指導者のうちリベラリズムを掲げるものはAngela Merkelただ一人、しかしそのMerkelすら、大幅な支持の低下を前にして難民の大規模な強制送還を打ち出す等の修正ないし転換を余儀なくされている以上、事実上欧州はなべて排外主義に染まったと言っていいのでしょう。実態はともかく、少なくとも建前としては国家や人種、思想の相違を全て受け入れ融和する社会を目指した欧州の夢が、かくも儚くも崩壊する様を見るのは残念なところではありますが、毎日のように難民キャンプで爆発等の騒乱が発生し、不法入国者も一向に減らず、依然としてテロに脅やかされ続ける諸国の現在の有様からすれば、これも必然という他ないのかもしれません。排斥された者達は一体何処へ行き、何者となるのか。誰もが懸念するように、反社会性を帯びた無法者の群れへと転じてしまうのか。どうなろうとも、それを止める事はもはや誰にも出来ないのでしょう。自他共に認める自由の国ですら、抗うことは出来なかったのですから。

France election: Socialists scramble to avoid split after Fillon win

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