10/21/2016

[note] 古いキーボードを修理・その3

随分前に修理した古いキーボードが又調子を崩してしまったので、再修理をする羽目になりました。対象はFMV-KB321、前回の故障の原因はメンブレンの配線パターンの劣化に伴う断線で、断線箇所を特定して導電塗料を塗るだけで修理出来たのですが、しばらく使っていなかった本機を久しぶりに繋げてみたところ、前回とは異なる複数のキーが応答しなくなってしまいました。スペースキーとZを含む文字キーの一番下の段がほぼ全滅。全く使えません。

折角修理したのに、とガックリしつつ、古いモノだし仕方がない、とすぐに諦めて確認してみると、今度は複数箇所、具体的にはカーソルキー周辺の三本のパターンが変色して消えかけてしまっていたのです。その断線している範囲が結構長く、導電塗料だと抵抗値が大きくなり過ぎて無理かな、と不安に思いつつ、駄目元程度のつもりで前回同様に塗料を塗ってみたのですが、やはり抵抗値が大きすぎ(数百Ω〜)るらしく、治りませんでした。


まあ、元々電子楽器等を大雑把にアースするためのものに過ぎないのだし、何cmも回路を繋げ得るようなものじゃないですよね。予想はしていたもののやはり残念。

で、諦めて代わりの方法を検討していたところ、割と最近に発売されていたらしい回路マーカーなる導電インクの一種が目に止まりました。要するに回路パターンをペンで書けるというものですが、割と大きなパターンも書けるというので、試しに一本調達して使ってみたのです。下図のような、どうにも電子工作関連らしからぬチャチなパッケージの割には結構高くて1000円強。"6歳以上"の文字がこれまたなんとも微妙な玩具的な印象を醸し出します。実際、分類としては玩具になるのかもしれませんが、思っていたのとは違う感は否めません。


なんとなくダメそうな予感を抱きつつも、まずは確認と、メンブレンのパターンに使う前に、樹脂の類への乗りだとか、抵抗値だとかを確認するために軽くテストしてみました。

結論から言えば、残念ながらアウト。理由は抵抗値の高さです。数mm程度の幅で数cmの長さのパターンだと、大体数十〜数百kΩにもなります。導電塗料より高く、これでは使えません。実際試してみましたがダメでした。無念。

ただ、このペン(インク)自体は結構面白いです。描いた直後は焦茶色がかった液体状なのですが、時間が経過すると緑がかった銀色になるのです。テストした際の写真を下記に掲載しておきます。

下1つ目の図は、テストに使った樹脂板で、既に時間が経過したパターンが銀色になっています。この左の余白にペンで縦線を描いた直後が2つ目。色はほぼ茶色です。


その数十秒後。拡大すると、かなり黒に近い焦げ茶色になっています。


さらに時間が経つと、黒味が抜けてだんだん銀色に変色していき、


 最終的にはこうなるのです。描いてからここまで数分程度。


変色後の見た目はいかにもAgっぽい感じではあるので、これは金属同等、とまではいかずともそこそこ近い導電性があって、銀パターンの補修に使えるのでは、と期待を持たせてはくれたのですけれども、実際には炭素系塗料を超えるものではなく、使えませんでした。実際にキーボードのパターンの配線にも塗ってみました(下図)が、銀色になってからも抵抗値が極めて高く、当然のようにダメでした。見かけだけだったようで残念。


というわけで回路マーカーも没。これはいよいよ昔からあるところのAgペースト等の金属塗料を使うしかないのか、でもあれは流石にこんな少しの配線補修に使うには高すぎるし、と思案していたところ、もういっそ薄い金属箔を貼り付けて配線してしまおうかと思いつきまして。で、手軽なところで銅箔を使う事にしました。丁度100均で売っているらしいとの情報を得て、調達してきたのが下図。ダイソーの園芸コーナーで、植木鉢用の防虫テープとして売られていました。18mm幅で長さが1mしかありませんが、今回の目的には十分過ぎる程十分です。


これの端からカッターを用いて幅1mm強で長さ数cmずつ細く切り出し、両端付近の接着剤(導電性なし)を一部落としつつ貼り付けます。ガタガタですけど見た目はとりあえず気にしない。で、テスターで導通を確かめつつ、短絡が無いよう微調整(テープの位置をずらして配線間の隙間を確保)します。


銅箔と配線パターンの接触が結構微妙で、若干やり直し等もする羽目になりましたが、なんとか3本とも安定して導通するようになりました。

そして、上側のシートを戻します。 幸い厚みも問題なし。


ラバーシートやキー等を戻し、若干ドキドキしつつテストした結果、全てのキーが復活している事を確認し、完了と相成ったわけです。しかし、気づけば結構な手間と時間を掛けてしまいました。元々は200円かそこらのジャンク品なのに。。。それでも、このシリーズのキーボード、その最高に軽く生産性抜群のタッチには、その手間をかけるだけの価値があると思えるところではあるのだから、まあ仕方ないか、とぼやくだけなのですけれども。またそのうち別のところが壊れたりするんでしょうけど、何時まで修理出来るものやら。やれやれです。ともあれ、今回はこれでおしまい。

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