1/30/2015

[note] IH調理器の壊れたスイッチを修理

してみました。知人から頼まれて。対象たるクッキングヒーターの型番は今は亡きNational製KZ-K221A、大分古い機種です。2口あるコンロのうち右側用のON/OFFスイッチが全く反応しなくなったとの事ですが、いくら古いと言っても通常の利用方法なら押下回数はたかが知れている筈、それで壊れるとは随分と運が悪い話だな、等と思いつつ、とりあえず分解して調査してみる事に。


他のスイッチは問題なく動作するので、おそらくは当該スイッチ部分の部品のみの破損と推定。であれば、修理するにも確認するにも、ともあれ当該部分の基盤にアクセスする必要があります。というわけでまず天板の取り外しから。天板のネジを数個外し、隙間にマイナスドライバをこじ入れてぐいっと持ち上げます。金属製につきそれなりに重いために結構な抵抗があり、それが何らかの固定がなされている場合と区別が付きにくい事もあって、万が一にも壊さないよう、ちょっとずつ慎重に。


抵抗を確かめつつグリグリとねじこみ、バコッバコッと持ち上げていくと、最後に抵抗が一気に弱まり、バコンガシャンという、何かが落ちたような割と心臓に悪い感じの重い音と共に鉄板が外れます。で、確認してみると、左右各コンロのコイルの中心部が緩めに鉄板に接着されていたらしく、それが鉄板の持ち上げと共にくっついて上り、途中で自重に耐えきれず外れて落下していたのでした。その際にコイル部のスプリング付きの支柱部が外れたりはしていますが、特に破損はなし。ほっと胸を撫で下ろします。


上から見るとこんな感じ。真ん中のこれまたスプリング付きの支柱が鉄板と接着されていたのですね。その点を含め、それなりに凝った作りになっていたのは少し意外でした。


しかし今回はコンロ部は修理も調査も対象ではないので、スルーです。鉄板を外すと現れるパネル部のネジを外し、パネルを手前に引き倒します。


すると基盤にアクセス出来るのです。ケーブルコネクタを外して、


さらにネジを幾つか外して基盤を取り出し。


基盤にはめ込まれているスイッチボタン用のブラスチックプレートを外します。基盤に固定されている液晶部を壊さないように注意しつつ。で、ようやく基盤が露出します。


問題のスイッチは、タクトスイッチのうち右端下側のものですね。[加熱 切/入]となっている赤いスイッチです。テスターで導通テストしてみると、スイッチを押しても全く導通しません。他のスイッチは問題ない所を見ても、単にこのスイッチが壊れただけ、と原因が判明しました。というわけで、大人しく交換すれば終わりです。で、寸法等を調べて、適合する部品を取り寄せました。(下図)オリジナルと同じ色(赤)のものもあったんですが、後々交換した事がわかる方がいいかと思い、色違いのものを使う事に。


交換作業自体は至極単純。はんだごて等で元のスイッチを取り去り、交換するだけです。なお、実は部品を取り寄せている間、当該スイッチが使えなくなるのは不便なので、応急処置的に隣のあまり使わない[揚げ物 切/入]スイッチを[加熱 切/入]の所に移植して使っていたのです。なので、届いた部品は下図の通り、その間抜けていた[揚げ物 切/入]の所に付けられています。


取り付け後にテスターで試したところ、問題無し。というわけでさっさと組み上げて、修理完了と相成ったのでした。無論、実際の動作も問題無し。

作業自体はそんな感じで、何という事もなかったのですけれども。意外でした。何がって、この手の極めて高い耐久性が求められる類の機器の、それもスイッチなんて一番壊れにくく作られている筈な箇所でこんな単純な破損が起こるというのが。スペースには余裕が有りすぎるくらいあって無理な設計というのも有り得ないし、部品自体も特に高価なものではなく、一般にコストカットの対象になるような箇所ではないものと思われるのにも関わらず、こんな致命的な故障に遭遇するというのはやはりとても運が悪いと言っていいんじゃないかと。

まさかソニータイマーよろしくわざと壊れやすくして買い替え・修理の頻度UPを狙った、なんて事もない・・・ですよね?そんな調整出来るようなもんじゃないでしょうし。といって、それは自力で修理が可能だったから言えるわけで、普通はこんな些細な故障でも丸ごと買い替えとかせざるを得ないんでしょうし、ひょっとしたら、と疑心も沸いてしまうのであります。それは考えすぎにしても、いささか不可解に思うくらいには意外な故障でありました。Nationalのようなブランドでも、昔のような耐久性はもはや期待出来ない、その事はよく理解していたつもりではありますが、それでもこうして見せつけられると、今更ながらにいささか残念な気持ちも禁じ難く感じられてしまうわけなのです。

ともあれ、無事修理出来た事はめでたし。というわけで今回はこれでおしまい。

1/23/2015

[pol] 安易な中東紛争肩入れ、曝け出された無謀と取り返しの付かない現実

Isramic Stateによる日本人人質殺害脅迫の件ですが。本件の分析や論評の類は既に山ほど出されていますが、今ひとつすっきり同意出来るものが見当たらないので、個人的に思うところをメモとして。

本件、元々中東の紛争には直接関与せず、おそらく当事者からはその他大勢の一つに過ぎず敵でも味方でもない第三者的な位置づけだっただろう日本が直接の脅迫相手にされた、イラク戦争時の捕虜殺害等とは一線を画す事案ですが、無論それには相応の理由もあるわけです。仮に何もなかったとしたら、普通の人質として関係者に身代金が要求され、あるいはそれを支払えば解放されて終わりだったものと想像される事案なのですから。

そうはならず、一線を画してしまった原因は明らか。安倍首相の中東訪問、その際に発表した政策や発言等の振る舞いに帰せられると言えるでしょう。すなわち、イスラエルとの協力関係構築を初め、中東での紛争関係国の一部に対する従来とは明確に異なる積極的な関与への政策転換と、IS敵対国の支援を明確にした多額の資金提供の決定、またその大々的な発表。これを以って、中東諸国を含め、世界から公式に日本はイスラエルの味方であり、ISの敵と認識される事になりました。ISにとっての敵、というだけですらなく。発言の内容、表現から言っても、誤解の類ではなく、むしろ安倍首相はそういう認識を広く周知させる事を意図したものと解釈する他ない振る舞いをしています。

そういう前提を踏まえれば、本件ISの脅迫も、敵対国へ攻撃を加えるにあたり、今ある手札で取りうる最も効果的な手段を選択し実行したに過ぎないものと理解出来るわけです。すなわち、国際社会から日本とISの敵対関係が認定されたが故の必然的な帰結と言えるでしょう。

で、実際にそういう事態に至ったわけですが・・・そこで曝け出されたのは、本件のように敵対側からの攻撃が実際に行われた場合、日本は何ら取りうる対策を有しないという事です。実力的手段は勿論の事、口頭の交渉すら殆ど不可能。訳が分かりません。そんな事は分かりきっていた、とは思うのですが、今回のように積極的な紛争への関与を打ち出すのなら、それなりの備えがあって然るべき筈、それが蓋を開けてみたら何も考えてませんでした、どうしようもないです、というのですから。幾ら何でもあんまりだと、その無謀、無能ぶりに眩暈がするのです。

集団的自衛権絡みで勇ましい事を言っていたのは何だったのでしょう。散々国民の安全を守ると軍事への備えを説いて組織も作り予算を注ぎ込んでおきながら、リアルな殺し合いには何の備えもなかったとか、笑い話にもなりません。もういいからお前ら全員行って何とかしてこいと。何ともならなかったらそのまま死んでこいと。元々信頼も期待もしてませんでしたから今更失望するわけでもありませんけれども、そのあまりの醜態には、いささか自棄な気分にもなろうというもの。

その上最悪な事に、上記紛争への関与表明等はもう取り返しがつかないのであって。最初から、ISとか区別せずに、紛争で被害を受けた人への人道援助として広く支援する、とか従来通りのスタンスにしておけばよかったものをと個人的には思うし、実際政府は脅迫後公式見解をその線に修正している様子ですが後の祭り。今後は国内でテロとかも冗談抜きにあり得るわけですけど、どうするんでしょうこれから。と言ってどうにもならないんでしょうけど。せめて私や私の知人友人の近くでは起こらない事を祈るばかりです。

Japan's Abe pledges support for Mideast countries battling Islamic State

(後日、追記)

そういう決定的な出来事があってから暫く。その間、事態は何も動かず、否、日本政府は何もする事が出来ず、ただ無意味な非難と解放要求の発信を繰り返すばかりでした。結果、人質の一人が予告通り殺害され、その一連の中で破格の広告効果があり、かつ反撃も無くISにとって安全である事が確認されたが故に、残った人質は広告塔として利用されています。おそらく、この先も相当期間に渡ってそのように利用され続ける事になるのでしょう。そして、その度に、日本社会はその解放を求め、それを受けて日本のメディアはISの要求を世界中に広報し、かつ日本政府はISの脅迫相手となる各国に対し働き掛ける事で、結果として日本全体が各国に対しISの要求に従うよう圧力をかける事にもなるのでしょう。あるいは、新たに日本人の人質を増やそうともするでしょう。取り返しが付かない、というのはそういうことなのです。逆に言えば、そうした利用価値があるが故に、日本人の人質は比較的殺されにくくなる面はあるでしょうけれども。。。気休めにもなりません。

(再追記)

と思っていたら、もう一人の人質もあっさり殺されてしまいました。ご丁寧に、今後の日本人を対象にしたテロの予告も添えて。交渉の余地が無い旨を知らしめる実績を積む事を優先したか、単にパイロットの方が交渉材料として直近の利用価値が高いと判断しただけの事か。いずれにせよ、日本はどうする事も出来なかったし、これからも何も出来ないのだろうから、大した違いもないのでしょうけれど。

[関連記事 [law] ISISに拘束された日本人に思う、武力措置の非現実性]

[biz] ヤマトメール便廃止の明らさまな建前

ヤマト運輸がメール便を廃止するそうですね。チェックが無い、もしくは甘いのをいい事にして大量の廃棄だとか未配だとか色々と酷い事件を頻発させ、その度に世間の顰蹙を買って来た同サービスですけれども、その料金の低さからリスク覚悟の小口通販で広く利用されて来ただけに、結構な規模の混乱が起こりそうです。当面の代替はゆうメールという事になるんでしょうけど、競合が撤退したとなってはこちらもいつまで継続されるか怪しいわけで、ユーザはメール便を利用する事業形態自体の見直しを考慮せざるを得ないでしょう。ご愁傷様です。

メール便自体は特に法規制がかかっているわけでもないし、廃止するのも事業者の勝手ですから、それはまあいいのですけれども、その表面上の理由としたところの「顧客が信書利用した場合に顧客が違法に問われるリスクをなくすため」という建前は不自然不合理極まりなく思われるのです。それは個々のユーザが責任を負うべき話であって事業者の責任ではありえません。別に幇助してるわけでもなし、件数もここ5年で一桁台に過ぎない、とあっては事業自体に問題があるとは到底言えないでしょう。まして継続の是非にかかる要素などとどうして評価し得るのか、全く以て理解出来ないところです。ヤマトは自分達が何を言っているのかわかっているのでしょうか。もしこの論理を是とする、すなわち顧客が違法に問われるリスクは絶対に許容出来ないとの立場を取るなら、そもそも日本郵便の信書便以外、民間の運送業自体が成り立たないだろう結論になるのです。それすなわち自己否定というものです。

ですが、流石に自殺する意図があったわけもないでしょう。であれば、今回の説明の方が建前と結論付ける他ないわけです。メール便事業の実態を見れば、その低料金から個別小口の利用について採算が取れていないだろう事は明らかで、これを廃止したいだろう事もまた明らかなのですし。後継サービスが法人の大口顧客に限定したものという点からしても、結局は単に個人客向けメール便サービスを廃止するだけの事です。

ただ、それを面と向かって言うと単なる営利目的で一方的にユーザへのサービス提供を廃止した、すなわちインフラ事業者としての社会的責任を放棄した形になって体裁が悪いし、とりわけユーザの反発も激しくなるだろうから、責任を利用者側に転嫁した表現を使って回避を試みた、というだけの事なのでしょう。よくある話だし別段違法でも無いのですけれども、臆面もなくそういう姑息な振る舞いを見せつけられるのはとても不愉快に感じるわけです。 こういうのは見えないところでやって頂きたいし、本件のように事案の重大さ等からそれが無理なのであれば、建前を取り繕うにしてももう少し考えて欲しいと思うわけです。こんな明らさまでは逆効果というものですよ。

ともあれ。本件の個人向けメール便廃止ですけれども。おそらくは昨今のコスト高に伴って値上げを検討した際、いっその事面倒な個人客は切り捨ててしまうのが最も採算的には良いだろうと判断したんでしょう。そういう傾向は他の業界でも顕著で、自然な流れとも言えるでしょうけれども、どうにも安直に思えてなりません。個々の企業の判断としては合理的でも、業界、また経済の全体からすればどうなんでしょうか。本件について言えば、需要、それもインフラ部分の、相当な規模のそれを切り捨てているのですから、素直に考えれば社会経済自体を相当に縮小させる方向なのではないでしょうか。と言ってもどうしようもないのですけれども。これも時代の流れと言うことなのかもしれませんね。やれやれです。

ヤマト、メール便廃止 利用者の「信書」同封防ぐ

1/07/2015

[biz] 羽田空港のNEC製鳥検出システム、機能せずゴミに

2年ほど前羽田空港に導入された鳥の自動検出システムについて、著しい誤検出・検出漏れのために事実上放置状態にある旨報道がなされていますね。それで空港がどう対処しているかというと、昔ながらの人的対応すなわち目視による確認に戻ってしまっているそうです。

当該システムはレーダーと監視カメラを用いた、ごくスタンダードな画像認識ソリューションです。ベンダはNEC。一応当時世界初という事で、プレスリリースも発行されました。今となっては、世界初というのは単に技術的に可能な機能に需要が無かっただけの事だったのだろう等と思えてしまうのですが、それはともかく。価格は一式およそ10億円。元々の機能・機器構成の割にいささか高価な感があった本システムですけれども、価格に見合うどころか最低限の働きすら出来ずに粗大ゴミと化す惨状を晒したわけです。しかし飛行機を鳥と間違うとか、どういう事なの。。。

この手の自動認識システム、メーカーの建前を真に受けて導入したところ、いざ実運用してみたらエラー頻発で使い物にならない、なんて事はよくある話ではあるのですが、用途が用途だし、そこそこの額の公金を使った案件でもあるために、社会的にそれ相応の落とし前を付ける必要はあるという事でしょう。こうして世間の批判に晒される運びとなってしまいました。直接の担当たる羽田空港の関係者、またおそらくは関与しただろう国交省の面々にはいい恥さらしですね。

といって、彼らもおそらくはNECの誇大広告的セールストークに乗せられてしまったところはあるでしょうから、多少は同情する余地も無いではないのかもしれませんが。しかしそれ以前にも顔認証等で散々に引っ張りまわされ、税金を搾取された挙句に白を切られておきながら、の話でもあるわけで。学習能力が絶望的に欠けているのか、逆に救えない程にNECと癒着していると言う事なのか、それともその両方か。いずれにしても関係者は須く救い難いまでの愚か者揃いだと言う他無く思われるところです。実用に耐えるか位、導入する前に検証しておけば回避も出来たでしょうにね。やれやれです。

先日お手盛りの実証実験で無理やりお墨付きを出し、さらに巨額の税金を注ぎ込んで導入される見込みとなった所の顔認証システムについても、実用に耐える能力が無いだろうハリボテ技術な点では同じですし、その結果もおそらくは本件と類似した帰結に至る可能性は非常に高いものと予想されます。問題は、その影響の及ぶ範囲、程度が共に本件とは桁違いに広くまた深刻になるだろう点でしょうけれども、それでもNECは無責任を貫くのだろうでしょうか。きっとそうなるのでしょう。想像するだに暗鬱たる気持ちにならざるを得ないのです。

しかしねえ。この手の話って、どれも紛う事なき詐欺なのに、何故繰り返し起こっては何事も無かったかのように見過ごされるんでしょう。いい加減予防なり事後罰なり、司法による歯止めが掛けられて然るべきだと思うのです。さしあたっては、国交省は本件に関してNECに損害の賠償を請求する位はして頂きたいところなのですが、さて。

ちなみに、本件システム導入時のプレスリリースはこちら。アレもコレも出来ると言いつつ、具体的な検出率とか性能に一切触れてない辺り、確信犯的でとてもテンプレな感じです。
NEC、鳥位置検出ソリューションを国内外で販売開始

10億円かけた羽田の鳥衝突防止装置、機能せず

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1/06/2015

[biz] トヨタの特許無償化に透ける水素車事業の行き詰まり

これは吃驚。トヨタ本体が保有する水素燃料車関連の特許5680件について、相手を問わず無償で公開、提供される事になったんだそうです。

部品メーカー等、子会社の保有する特許は対象外だし、一部を除いて2020年までの期限付きではありますけれども、利用者の資格を問わず全て使い放題。特許は保有にも相応のコストがかかる事からしても、競合他社に寄付をするに等しい、極めて異例な話ですね。といっても、競合する大手自動車メーカーとの関係で言えば、元々クロスライセンスで相殺するなり、開発時点で住み分けが図られていて、それ程大きいメリットがあるとも限りませんから、これは実質的に、主にベンチャーや他業種等の新規参入組向けの話、という事でしょうか。トヨタのリリース中の記載を読むに概ねそういう解釈で正しそうです。

とはいえ、水素燃料車は延々と開発を引っ張った挙句にようやくトヨタがmiraiをリリースしたところで、商業的にはそれ以外の実績は事実上無いも同然だし、これから普及を図るにあたっては周知の通りの課題すなわち、触媒に白金を必須とする事による高コスト性と、また燃料としての水素供給のための諸々のインフラが全く整備されておらず、またその設置コストも一件あたり数億円と、競合する電気自動車の充電設備と比較しても桁違いに高く、整備困難な点が致命的な障壁として聳え立っているのでありまして。それらを悉く乗り越えない事には特許を保有する益はないわけです。しかしながら現時点では解決の目処すら立っていないそれらの課題の難度と、仮にクリアするにしてもそれに必要となるだろうリソース、殊に時間を考慮すると、モノになる前に特許切れになってしまう可能性が高いのですね。

そういう事情を考慮すると、このまま特許を後生大事に抱えていても意味はない、ならばいっそ課題解決のためのツールとして役立てるべく放出してしまおう、というような考え方は確かに成立し得るでしょう。それで広く新規の協力を募りつつ、併せて競合他社にも同様のアクションを促し、基盤の整備を推進しよう、と。そういう事なら、理屈としては分からなくもありません。

ただまあ、そうだとしても、その辺は建前なんだろうなと。というのはそもそもの話、この辺の知財とかはあくまで補助的というか、少なくとも諸々の根本的な問題を解決するものではないのであって。触媒等の技術的な課題については当然それを解決する技術が必要になりますが、その開発についてトヨタは白旗を挙げたものと解釈する他ないし、インフラ整備にしても、その膨大な設備投資には民間に担い手が必要になるわけで、仮に成功すれば巨大な利益が見込めるにも関わらず、自ら担おうとはせずに他所に丸投げした、と言う事はすなわち、採算が採れるとは考えていないものと読む他ない話なわけで。

結局のところ、水素車自体、事業として成立する見込みが薄く、ぶっちゃけ出来ません、と宣言したようなものだと思うのです。ハイブリッドを投入した時のやり方と比較すれば明らかですけれども、実際、本当に事業として成立させる成算があるのなら、トヨタ単独進める事も厭わなかったでしょう。それを可能にする規模もリソースもあるし、後発というわけでもないのですし。しかるに、そのトヨタをして匙を投げるような問題を、他社、いわんや新規参入組に解決出来るだろうか、というと。。。その可能性は極めて小さいものと考えざるを得ません。

そんな本件。一見前向きに見える施策ではあるものの、一方で同時に水素車全体の先行きの暗さをも浮かび上がらせるものなのでありました。自治体や政府はミライ発表からこっち、補助金をえらい勢いで注ぎ込んでるようですが、高確率でトヨタに無駄金をバラ撒いただけで終わりそうです。といってこの種の建前ドリブンな案件の常として一旦動き出してしまうとしばらくは引き返せないんでしょう。残念な話ですが。

Toyota shares its fuel cell patents to help its hydrogen dreams come truets