12/29/2015

[biz] 迷走の果てに消滅必至のシャープ、残滓の行方

東芝が派手に炎上し、その延焼防止等の対処に追われる一方で、既に全焼確実で諦められた感のあるシャープですけれども。揉めに揉めた甲斐があったというか、かろうじて2015年中の消滅は免れました。もっともそれを喜ぶ人は殆どいないでしょうけれども、それなりの規模でもって存在している以上は、まだしばらくは引き続きやきもきし、或いは迷惑を被る向きが多々あるわけで、誠にご愁傷さまと言う他ないのです。第三者的には関わらないのが良いだろうと思うんですけれども、当事者の立場では縁を切りたくともままならないものなのでしょう。

既に資本は底を突き、背水で望んだ筈の今期にも当然のように大赤字を出し、実質的に債務超過に陥ったも同然のシャープに復活や再生を云々する声は既に無く、もはやどのように消滅させるか、すなわち残余資産・事業を何処がどのような形で引き受け、債務を債権者間でどう分担して損失処理するかといった論点のみが取り沙汰されているのが現状なのです。

具体的な焦点になっているのは、液晶事業と太陽光パネル事業、次いでCMOSセンサ等の電子部品事業に、あとコピー機等のMFP事業。液晶事業が売却対象に入っている時点で、もうシャープの存続自体を諦めたも同然なわけで。家電は殆ど話題には上りませんが、死に体のテレビ事業に加え、その他家電も未だにプラズマクラスターを掲げるオカルト商法を展開中なあたりでお察しというか、技術面で特筆すべきものはなく、むしろ詐欺に手を出すデメリットもあるとなれば、そうそう手を出す既存大手もいなかろう、という面もあるだろうし、仕方ない事なのでしょう。

しかし見事に成長見込みのある事業が存在しません。また、他社に無い、もしくは他社より優れた強みのある事業も殆どありません。強いて言えば高精細液晶パネルの一部高級品位でしょうか。ただ、そちらは需要面が微妙で、現在の所廉価品に競争力で劣ってしまっています。その結果が売上見込みの大幅な未達、過剰になった設備投資の減損、それらによる液晶事業の大赤字なわけで、今となっては強みと言って良いのかは微妙な始末。ですが、今更それを言っても仕方有りません。液晶は現在でもシャープの主力事業であり、殆ど唯一の、一定以上の継続的に維持されうる価値を見込んで売れる大規模事業なのですから。他の事業はおよそ全ての面で他社に明らかに劣っているのだし。

液晶事業の売却先の候補は大きく2通り。JDIか海外大手か。多分に政策的な意図が絡んでJDIに押し付ける形になるだろうと見込まれていますし、私もそうだろうなと思います。知財群は今でもそれなりですし、海外への流出は避けたいと考える当局関係者も多いでしょうし。金額や吸収後のリストラ等の条件面でのハードルは相当に高そうですが、シャープ側が折れるまでどれ位揉めるかが問題でしょう。と言っても既に最高に追い込まれている状況ですから、時間の問題でしょうけれども。

その他の事業はぶっちゃけ液晶に比べると。。。相手を選べるかすら微妙だと言わざるを得ません。MFPとCMOSに新規進出したい海外大手グループが手を出すかも、という位でしょうか。それにした所で、当然海外への技術流出という事になりますから、これまた政策的にとても揉めるでしょうね。でも、CANONやSONYが今更買う理由があるかというと怪しいですし、やはり相手は二の次で、売れれば御の字という所ではないでしょうか。そもそも赤字で回復の見込みも無いために解体されるのだから当然と言えば当然なのですが、無残なものです。

そんな感じで。いくら政策配慮が、と言っても所詮シャープは代替の効く一民間企業に過ぎず、JAL等のように絶対に存続させる公の必要はないし、何にせよ解体は進むでしょう。ただ、この種の整理に関してよく言われる話ですが、組織の先行きに見込みが無い、と思われた時点で有力な技術者、とりわけ若手・中堅は見切りを付け、既に去ってしまっているものなわけで。従って液晶を含め、各事業とも開発力・生産力等に従来の実力は既に無く、丸ごと不良債権になりかねない、と懸念する向きも多いでしょう。残っているのは会社にしがみつくしか選択肢が無いような能力の高くない人員が中心のため、労働コストが高く、かつ整理や配置転換にも抵抗が強くなる事が予想されます。そうなる前に価値を下げる事無く譲渡出来れば、と思うところでしょうけれども、しかし先行き見込みがあればそもそも整理の対象にならないのだから、結局の所この種の事業価値の毀損は避け得ないものと言うべきなのでしょう。残念ながら。

ともあれ。個々の事業の価値が十分とは言えず、にも関わらず政策的には過剰なまでに重視され、さらに追い込まれている筈なのに何故か強気で傲慢な姿勢を見せるシャープが、それら内外の条件を観たす売却先、また売却条件を得られるとはとても考えられませんし、銀行をはじめ債権者の妥協が得られるかも現時点では不明とあって、いつまでにどのような形で成されるのか、全く以って不透明です。にもかかわらず、資本と業績の状況からして来年中には大部分が消え去る事だけは確実、というのは中々に奇妙な状態に思われてなりません。

こういう不透明な状況が続き、しかし非情な資本面のタイムリミットによって否応なく処理を迫られれるとなると、大抵は碌な結果にならない事は間違いないし、ある程度の考慮や手当が可能な内に処理されるのが望ましいだろうと思うのですが、そうなりそうな気は全くしませんね。このままシャープは空中分解的に破綻してしまうのでしょうか。第三者としてはケーススタディというか、怖いもの見たさ的な興味も無いわけではありませんが、関係者には洒落にならないでしょうし、困ったものです。

(追記)
そしてまさかの交渉段階で機構切り捨てての鴻海一本化、からの足元見られまくり。どこまで阿呆なのでしょうか。

[続き記事 [biz] シャープ経営陣は最後まで救い難く愚かでした]

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