6/20/2015

[law] 殺人犯手記出版、公然たる不法行為の異常

神戸児童連続殺人事件の犯人による自伝出版の件、てっきり速攻回収されるものだと思っていたんですが、物議は醸しつつも何となくそのまま販売継続中なようで。どういう事なんだろう、と少し首をひねっている次第なのです。

というのも、殺人等被害者遺族の精神面については過去の判例等からして法的な救済・保護が与えられるべきものと認められているのでありまして。しかるに、この種の書籍の出版は往々にして遺族に多大な精神的苦痛を与えるものであるし、実際に本件被害者遺族は出版前後を通じて明確に被害を訴え、併せて回収も求めているのですから、既に不法行為である事は疑いようのないところなわけです。出版社は公益性を主張して正当化を図っているようですが、遺族に苦痛を受忍させるに足るものとは到底認められないでしょう。実際に遺族側が裁判に訴えれば、出版の差し止めと賠償は無論として、回収等の遡及的な被害回復措置の強制までも認められる可能性は非常に高い、というか殆ど確実なように思われるところです。

なんですが、出版元の太田出版は遺族の意向を完全に無視して出版を強行し、非難を受けても逆に逆撫でするかのような反論コメントを出して当然のように継続、あまつさえ重版しようとしているんだとか。 話題性が高いのは事実だし、炎上商法として見れば今のところは成功している、と言えばそうなんでしょうけれども、それにしてもここままで明確に違法性を帯びているものを公然と強行するのはどうなんだろうと。その異常性には正直引きますし、恐怖を感じさえします。

法的には無論、社会的にも大多数からは到底容認され得ないだろうし、このまま行けば普通に起こされるだろう訴訟の結果、莫大な賠償や回収を強いられて、差し引きすればむしろマイナスになる可能性とか考えないんでしょうか。それも込みで博打を打ったか、もしくは目先の売上が目的か、はたまた単なる愉快犯か。いずれにしても論外と言わざるを得ません。それ以前に法規範を軽視する、というよりはむしろ積極的に犯し、今なお苦しむ遺族を害して恥じない殺人犯及びその共謀たる出版社の振る舞いと、それを容認する声も聞こえてくる社会の現状には、深い失望を覚えずにはいられないのです。このような不法状態が一刻も早く是正され、被害者遺族に早急かつ十分な保護・救済がなされるよう願う次第です。

本件は成年の犯行であれば当然に死刑に処せられていただろう犯人が、少年法の規定によって免ぜられた帰結でもあるところ、被害者遺族に対して被害を一方的に受忍させた挙句のこの始末。その到底正当化し得ない不均衡・不正義を前にして、近年特に高まる一方の少年法への非難がより一層勢いを増す事も殆ど必然の結果と言えるでしょう。いっそ、死刑相当の凶悪犯については保護規定を撤廃する等の改正が提起されればとも思うわけなのですが、さて。

神戸連続児童殺傷事件、元少年の手記に広がる波紋