4/11/2015

[sci] ロシアで計画中の頭部全体の移植手術に戦慄

ロシア人は本当にクレイジーだと痛感させる話が聞こえてきました。難病につき体の生命維持機能が早晩失われる見込みの患者について、体を取り替えると言えばいいでしょうか、頭部を体から切り離し、丸ごと他人の体に移植しようというのです。

被験者はValery Spiridonov、Moscow近郊Vladimir在住の30歳IT会社勤務のコンピュータ技術者で、Werdnig Hoffman disorderと呼ばれる、主に脊髄周辺等のニューロンが異常を来し減少する事によって筋肉が弱り、多くの発病者が若くして死に至る重病を患っているとの事。当該疾患の罹患者は一般に幼少時に発症し、長くとも20年以内に死亡するというのですから、30歳の彼はむしろここまで生き延びた事が奇跡的とも言えるのでしょう。逆に言えば、現状で彼に残された時間が極めて少ない可能性は非常に高いものと推測されるわけです。

彼がこの程受ける施術は、体温を10度程度まで低下させ仮死状態にした上で頭部を一旦切り離し、脳死状態の他人について頭部を分離した体に接合する、というもの。接合後は低温を維持したまま、拒絶反応を抑制しつつ数週間程定着を待ち、問題がなければ蘇生を行う予定だそうです。いつから、とは具体的な施術時期は公表されていないようですが、2017年に完了させる予定とのこと。

恐るべきというか。少し前に顔面丸ごとの移植に成功した例がありましたが、そんなものは比較になりません。もはやリスクが高いという表現するより、成功の可能性、その有無すら疑わざるを得ないだろう程の難手術です。当然現代においては成功の確率以前に挑戦した例すらないわけで、何を以って成功とするべきなのかも判然としませんが、仮に被験者が意識を回復する事を成功と定義するとして、その実現は文字通りの奇跡とさえ言えるでしょう。

もっとも、意識を回復したところで、元通りの身体・生命機能を獲得する可能性はさらに低いわけで、多分に"死より過酷な"状態になる可能性すら懸念されるそうです。

そういった、もはやリスクとすら言えない程の危険性も、Spiridonov氏は全て承知の上で同意したとの事。氏にそれを成さしめた境遇の残酷さ、またそれに併せて今回の、もはや医療行為の名を借りた人体実験と言うべき措置を案出し、氏へ持ち掛け、およそ倫理の概念自体無きが如くして実行に踏み切ろうとする関係者はじめロシアの環境には、戦慄とともに畏れを抱かずにはいられません。

ただ、非難を加えようとは思えません。 氏の状況、またインタビューの発言等を鑑みれば、当人は元より死を覚悟し、ただこのまま病で衰えるに任せて死ぬよりもと、自身の意志に基づいて施術を選んだ事は事実なのでしょうから。これから多くの物議を呼ぶだろう事は必至で、すんなり実行されるかは不明と思われるところですが、その是非、また実行されたとしてその結果がどうあれ、せめて氏の魂が救われる事を祈りたく思う次第なのです。

Revolutionary: Russian man to undergo first head-to-body transplant