3/14/2015

[biz law] 東洋ゴム社製免震装置材料の性能評価偽装発覚に

東洋ゴム社製の免震装置用材料について、出荷前の性能評価で偽装がなされ、それに伴い当該材料を使用した多数の建築物が不正に免震性能評価を認定されていた事が発覚したそうですが。同社の発表によれば、期間は少なくとも平成15年から同23年と長期に及び、当該材料を用いた免震装置の出荷台数は判明した分だけで2052基、建物数は55棟にも上るそうです。普通に大惨事ですね。

具体的な偽装の内容は、同材料が当該認定を受けるにあたり、本来許容される変形度の誤差上限値10%に対し、実際は50%を超える酷い不良品が発生していたところ、この分の計測値を一人の評価担当者が許容値内に入るよう改竄していた、とのこと。で、その担当者が異動になった後の計測で本来の計測値が出るようになり、遡って原因等の確認を行ったところ発覚した、といういかにもありがちな経緯なんだそうです。

そういう同社の発表だけを鵜呑みにすれば、主として評価担当者個人の犯行であり、責任も同人にある、という結論が導かれかねないわけですが。。。不自然極まりなく思われるところです。というのも、基本、評価担当者個人にそんな偽装を単独で行うメリットなんて無い、というかむしろ本来は改竄なんて評価担当の職務からして懲戒免職ものだし、本来の評価に加えて作業も心労も増える、やるだけ損な行為なのですから。余程の理由が無ければまず実行されないでしょうし、そんな理由が課長代理すなわち一平社員に過ぎない評価担当個人にあったとはとても考えられません。で、そういう理由がある、すなわち個々の製品の評価の良し悪しや性能認定の可否に著しい利害を持つのは、評価担当ではなく、営業・開発・生産・経営のどれかか全てか、いずれにしろ事業部門の側なのであって。そちら側が評価担当に圧力を掛けて改竄させる分には理由は十分だし、人事権がある以上、実行も容易でしょう。となれば、本件は評価担当の単独犯とは到底考えられず、組織ぐるみの犯行を疑わざるを得ないものと言えるでしょう。異動で発覚した、という点には若干違和感を感じないではありませんが、共犯たる組織の範囲が割と限定的だったと考えるべきでしょうか。

何にせよ、本件の責任は会社に帰せられるのですから、その浅はかな、あるいは甘い組織運営の報いとして、これから同社にはそれ相応の報いがあるわけです。既に当該製品は免震認定を外されました。これに伴い、既存の物件にはその建築確認に瑕疵が存在し、また建築基準法にも違反する事になりますから、行政からは早急な改善が求められ、同時に所有者からは損害賠償並びに他社製品への交換が求められるでしょう。そして、その交換等の工事に際しては、相当期間に渡る居住者等の退去も必要になるでしょうから、その費用等も積み重なります。その総額は幾らか、具体的な金額は不明ですが、件数からして少額とは到底言えないでしょうし、建物全体ならともかく、たかが一部品程度の売上では全く釣り合わない多額に上るだろう事にも疑いの余地はないでしょう。事業、また会社自体への信用も失うし、普通なら事業部門自体が取り潰しになりそうな話ではあるのですが、さて東洋ゴム社はどう対応するんでしょうね。以前同社がやらかした断熱パネルの時と同じ感じで、社長が交代するだけで終わりにするんでしょうか。それともそれすらせず、このまま件の評価担当社員に全てを被せてしらばっくれるんでしょうか。東日本震災からこっち、日本社会はとりわけ地震対策には敏感な事もありますし、よりにもよってそこで致命的な類の偽装を働いた同社にはより厳しい反応がありそうですが、さて。

そういえば、同社は伊プロサッカーチームの胸ロゴスポンサーにもなるんでしたっけ。同社については、思う存分恥を晒せばいい、と思うものの、犯罪者の広告塔になるチームにはいい迷惑でしょう。海外ではあまり関係ないのかもしれませんけれども。

東洋ゴムの建物免震ゴム、性能不足55棟 データ偽装も

その後数日。対象の建築物が未だに公表されません。五月雨式に、建築中のものや公共の、比較的公表しやすく、かつ公表しないデメリットの方が大きいような類のもののみがポツポツと散発的に公表されるのみです。マンションやビルの使用者、は流石に知らされてるんでしょうけど、それ以外の賃借人や第三者的な利用者にはとても不安だろうし、分かっていない筈もありませんから、さっさと公表すべき話な筈なんですが。

商談が壊れたり、保障等で大変な影響が出るだろうし、デベロッパーによっては業績面への打撃が洒落にならない事になりかねないので、それを抑えるべく現段階での公表は避け、できれば実際にはまず問題ないとかそういうお墨付きが出てからにしたいとかいう思惑はありそうですが・・・そんな事が可能なら、東洋ゴム社がとっくにその旨発表していたでしょうから無駄だと思うのですけれども。期末だからというのもあるんでしょうし、免震機構完備というのはおよそ建物の目玉といってもいい重要な要素ですから、まず重大な瑕疵にあたるし、色々商談がご破産になったり契約取り消しになったり、評価額が下がったり、大変な事になるのは分かるのですが、違法建築物には違いないのですから、速やかに認めて後処理に動くべきだろうと。 困ったものです。