9/30/2014

[pol] 欠伸が出るほど馬鹿馬鹿しい香港民主化デモ

学生を中心にした数万人が香港中心部をここ数日占拠してる件、いやほんとアホらしい話です。そんなもんに時間を割いてる自分は何だって話ですけれども、、、まあともかく。

香港特別行政区政府の首長であるところの行政長官、これの選挙が3年後の2017年に迫り、北京が保有する候補者指名権の撤廃とそれによる完全自由選挙の実施を求めて香港中心部で大規模なデモ活動が始まったのが数日前。基本的に平和なデモだったんですけれども、当局が催涙ガス等を使い出して、参加者は余計に反発してエスカレートしてるそうです。ガスへの防御手段として多くの参加者が傘を使ったため、'umbrella revolution'とか呼ぶ向きもあるそうですね。

それでも、実弾や袋叩きによる流血は起こっていないようで、中国にしては至極穏当、平和的なデモと言っていいんでしょう。それは結構な事なんですけれども。で、それが何になるの?と。要求の相手は北京政府ですが、北京政府には、そんな活動をどれだけされたところで、応じる理由は欠片も生じていないように見えるのです。

そもそも、この種のデモというのは、その実効性は最終的に参加者の持つ社会的影響力、その最たるものであるところの選挙権に帰着される、すなわち要求を飲まなければ次の選挙での落選をちらつかせる事で働く強制力を通常その拠り所とするのですが、香港の場合は長官の選任権を北京政府が保有しているために、それを完全に欠いてしまっているのですね。

従って、北京政府に自らの要求を容れさせようとするなら、何か他の手段、強制力の源泉が必要になるのですが・・・これが本当に何もない。参加者の大半は社会的地位が皆無に等しい学生達で、従って参加者個々人にも、その集団たるデモ隊にも、政治的影響力は元より備わっていません。これが参加者の中に、もしくはそのバックに香港経済界の重鎮が多数居るとかならまだしも、金融街を占拠する計画を立てている点からすれば、その種の人達はデモ参加者からすればむしろ敵であるところの政府側と見做しているようです。普通逆だろうと。

さらに、ここ数日の動きを見るに、デモ参加者には、それら基礎的な力の無さを補うための戦略も戦術も何も認められません。集まって、文字通りデモンストレーションを行っているだけです。おそらく指導者も無能なのでしょう。

これで何がどうなるというのか。ひたすら占拠を続け、社会システムにストレスを与えれば、その経済的損失を前にしてそのうち行政が音を上げるだろう、とでも思っているのでしょうか。もしそうなら、救い難い愚かしさと言わざるを得ません。周知の通り、北京政府はおそらく世界中で最も頑迷な組織です。仮に米国はじめ西側諸国が武力を背景に脅しをかけたとしても、この種の話で譲歩する事は考えられない、そう言い切れる位には。武力の行使、またそれによる自国民の殺害にも躊躇すらしません。

対して、参加者の大半は学生達です。一般人としても経済的基盤が脆弱で、政治的立場もあやふや、おそらくは知識経験共に未熟そのものな子供の群れに過ぎません。それで指導者も無能、とくれば、これで実効的な成果を期待する方がどうかしているというものです。この状況があとしばらくでも続けば、あるいは行政側が強制的措置に訴えれば、容易に瓦解するでしょう。その際に死傷者が出なければ御の字といったところでしょうか。

徹頭徹尾、無意味そのものにしか思えない本運動、その馬鹿馬鹿しさは眠気を催す程です。これで'revolution'などと称する様はあまりに空虚で、嘲笑する気にすらなりません。勿論やるもやらないも当人達の自由ではあるのですけれども、これだけ海外メディアで大々的に報道されれば嫌でも目に付くし、一応確認もせざるを得なくなって迷惑なので、ローカルに閉じたところで勝手にやってて欲しいなと、欠伸をかみ殺しつつ思う次第なのです。

金融関係者には相場をいじるのにいいネタという事でそれなりに意味もあるんでしょうけどね。大多数の一般向けには、内陸部の各地に波及してからで十分ですよ。

'umbrella revolution' takes holds in Hong Kong

9/26/2014

[biz] Bill GrossがPIMCO退職、移籍

おおう。先日司直の捜査に晒されているとの報があった債権大手PIMCO代表のBill Grossの退職が決まったんだそうで。移籍先はJanus Capital Group Inc、新規に作られるCaliforniaのオフィスでグローバル債権の運用、またその戦略立案等を担当するんだそうですが。

これはあれですか、逃げた、と解釈すればいいんでしょうか。件の粉飾疑惑のファンドが、粉飾を封じられて従来予定していたパフォーマンスでの運用を続けられなくなり、さらに評価の訂正に伴って巨額の損失が出る見込みにもなったから、ファンドもろとも一旦ご破算にしようって話ですかね。過去の分はミスという事で刑法的には誤魔化せると踏んだんでしょうか。そうだとしても、率直に言って通用するとは考え辛いですし、単に窮余の策か、あるいはBill Grossに責任を被せて切っただけなのか、等、色々と憶測を掻き立てられます。いずれにせよ、そのアクションの速さ、大胆さは衝撃的で、いささかの戦慄を禁じ得ません。

ともあれ、これはもう例の容疑が真っ黒と認めたも同然なわけで、信用も何もあったものではないでしょう。突如トップを失った(あるいは切った)PIMCOにしろ、王座を追われた形のBill Grossにしろ、これから大変そうです。ていうかPIMCOにしてみれば、まだしばらく猶予があると思われていた所に前倒しで訪れた決定的な事態、まさにファンド崩壊の危機に直面したわけで、本当にどうなっちゃうんでしょうか。まさかファンドも転職先に移管とかいうわけにも行かないでしょうし、債権市場がかなり混乱しそうです。

関係者は基本的に大変でしょうけれども、慌てて移行先を探す顧客と、取り込みの好機と見て活気付く競合やらが色々入り乱れて、意外と愉快な事になるかもしれませんね。さてさて。

BILL GROSS LEAVES PIMCO

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[IT] bashに最悪の脆弱性発覚

よりにもよって恐らく一番使用者が多いであろうシェルのbashに最悪の脆弱性が発覚してしまい、世界中が大慌てです。変数処理のオーバーフローからのクラックという事ですから、アプリやデーモンから山ほど発せられるexecから権限周りがすべてすっ飛ばされ放題になるわけで、もうセキュリティも何もあったものではありません。先日発生したOpenSSLのHeartbleedを遥に超えるレベルの、文字通り最悪の危険度と評価すべきものでしょう。やってくれたものです。Heartbleedの影響もまだ多数残っているというのに。

まずは落ち着いてbashのバージョンチェック。4.3のパッチ25以前が該当という事ですが、サーバの環境変数BASH_VERSIONを見ると・・・'4.3.11(1)-release'で、ばっちり該当しています。というわけで大急ぎで変更作業に移ります。

と言っても最近はbashばかり使ってたので変更先に少し困るのですが、多少は慣れてるもの、という事でtcshに。シェル変更コマンドchshでデフォルト設定をbashから変更します。変数設定を.bashrcから.cshrcに移植してから再起動、であっさり完了。厳密には対処としては不完全で、一般にはbashを一時的にアンインストールしておいた方が良いんでしょうけれども、私の場合は外部から直接シェルを起動される心配はない(筈です)から、これでとりあえず良しとします。

一時期、というか以前はむしろCシェル系の方をよく使っていた位ですから、特に違和感も感じず、むしろプロンプトとかsetの変数一覧の表示形式とか、とても懐かしく感じられて、たまには違うシェルを使うのも悪くない、と暢気にも思ったりした次第なのです。操作も意外と覚えてるもんですね。そういえばbashを使い始めた頃は変数設定のexport文を冗長に感じたりしたっけ、とか思い出したり。そもそも最近はもうシェルスクリプトで作業する事自体があまり無く、実際の所特段の問題もありませんし。というわけで、個人的にはこれで一安心。しかし心臓に悪いことこの上ありません。OpenSSLの時より余程。あれがHeartbleedなら、こちらはさしずめHeartattackとでもいう感じですかね?

流石にメンテナ連中も死ぬ気でパッチを作ってる所でしょうから、すぐに修正されて元に戻せるだろうとは思いますけれども。と言っても流石に前代未聞のレベルだし、類似の脆弱性が無いかチェックも必要でしょうから、時間がかかる可能性もあるんでしょう。でもそれは必要な作業ですから、とりあえず不便はありませんし、二次災害を起こす事の無い、確実な対処が行われるよう願いたいものです。やれやれ。対処にあたるSE諸氏におかれましては、誠にご愁傷さまです。死んだりしないよう、くれぐれもお気を付け下さい。

'Bigger than Heartbleed': Bash bug could leave IT systems in shellshock
What is the Shellshock Bash bug and why does it matter?

Ubuntuではbashのパッチが発行されていますね。不完全だとの情報もありますが、適用しないわけにもいかないでしょう。何を信じていいものやら、困ったものです。しかし今更ですがこの脆弱性、何十年も放置されたままだったんですよね。。。洒落になりませんほんと。

ところで本件の通称はshellshockで決まりなんでしょうか。これだとbash以外のシェルも影響があるような表現でいまいち釈然としません。Shellを使わないような一般人にはどうでもいい事なのかもしれませんが、その違いは利用者にとっては洒落にならないので、ちょっと気を使って欲しいなと思うのです。といって、報道記事の中には"バッシュ"をshellshockと同列の脆弱性を表す呼称と勘違いしているものすらある位だし、如何ともし難いんでしょうけどね。しかしその記事には、そんな知識でよくこの分野のライターをやってられるなと不思議に思ったりもしたわけです。

(その後・翌日)

パッチが不完全と評価されていた原因であるところの、後から発見された脆弱性(CVE-2014-7169)の分の追加パッチが発行されました。というわけで即適用。これで一段落、でしょうか。

(さらに2日後)

その後、さらに脆弱性が発見されたんだそうです。特定の変数名を使うとすり抜けられるんだそうで。対応策自体がまだ検討開始したばかりで、現時点で出ている案もブラックリストを作るかどうかとかいうとても手間がかかりそうで、かつ手抜かりが入り込みそうなものですし、安定するまでは大分時間がかかりそうです。

Re: Re: CVE-2014-6271: remote code execution through bash (3rd vulnerability)

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9/25/2014

[biz] ドイツAmazonとAir France、2つの対照的なストライキ

Air Franceでのパイロットによるストライキが続く中、隣国ドイツのAmazonでもFC従業員によるストライキが起こっていたのですけれども、こちらは何事も無かったかのようにひっそりと終了してしまったそうです。

より詳細な経緯としては、ドイツ国内に7箇所あるAmazonの倉庫(FC)の内5つに所属する従業員を中心とした労組が賃金の改善を求めて月曜からストライキに入ったものの、3日経過しても経営側は交渉に応じる事もなく、またストライキによる出荷遅延等の業務への支障も殆ど発生せず、従ってストライキは無意味になったために中止に追い込まれたんだとか。

Amazonのストライキに参加した従業員数は、労組側の発表では2000人程度、経営側の発表では1300人程度とズレがありますが、全体の従業員数は9000人程度という事ですから、概ね2割前後と考えれば良いのでしょう。2割が多いか少ないか、それは意見の分かれる所でしょうけれども、通常の組織であれば到底無視出来る規模では無く、それだけの規模で行われたストライキが全く意味を成さなかった、というのは相当に珍しいケースと言っていいでしょう。セオリー通りに成功を収めているAir Franceのケースと何が違うのかと、興味が惹かれるわけです。

といっても、理由は概ね容易に推測出来るところではあるのですけれども。元々Amazonのような通販業というのは需要やリソースの変動が激しく、季節や日、時間毎に数倍程度の差が発生する事もざらです。しかるに2割程度の変動は当然に想定したシステムになっているでしょうから、キャパが一杯になる繁忙期でも無ければ、元々用意されているバッファ分のリソースで対応可能だった、というだけの事なのでしょう。そうであれば、ストライキを有効なものとするには起こすべき時期と規模をそのバッファ分を超えるように設定する必要があって、労組側がその見通しを誤った結果と結論づけ得るわけです。

そうだとして、次に疑問になるのは、何故2割しか参加しなかったのか、です。Amazonの労働環境の劣悪さは周知の事実で、残り8割の従業員が賃金等に不満がないというのはあまりに不自然です。ストライキへの参加を思い止まるだけの事情があると考えるべきでしょう。

ストライキは法によって保障された労働者の基本的な権利です。ドイツはとりわけそのあたりの権利意識は厳格な国柄ですから、報復的人事等を恐れた、とかいう理由では説明し難いでしょう。そもそもそれらの報復やストライキ不参加によるインセンティブは禁じられている筈ですから。

この辺の事情は、外部からは推測する他無いのですが、、、マクロ的には、Amazonの事業の立ち位置がその要因になっているのではないかと思うのです。Amazonは大手ではありますが、Air Franceのように寡占・独占とまでは行かず、代替となり得る競合企業が多数存在します。そのような企業が、業務に支障のあるレベルでストライキを起こせば、一時的な損失に加えて消費者の信用をも失い、顧客の流出を招きます。ストライキが終わっても元通りにならない可能性が高いのですね。これを恐れて慎重になる可能性はあるでしょう。

また、具体的な割合は非公表ながら、契約社員等の有期雇用者が多い点も、当然に大きな影響があったものと考えるべきでしょう。 その種の社員がストライキ等すれば、再契約を拒否されて終わりになるだけでしょうから、参加出来る筈もありません。むしろ、仮に正社員への登用をちらつかされれば、団結どころか労働者間での対立にさえ繋がり得るでしょう。労働条件がどうであろうが、その改善どころではないわけです。

ここでふとJeff Bezosがこの前最悪の経営者に選ばれていた事を思い出しました。そのニュースを目にした時は、今ひとつピンと来ずに首を傾げたものでしたが、こういうAmazonの、従業員がその労働における基本的な権利すら剥奪され、奴隷のように酷使され使い捨てられる仕組みを認識した後では、なるほど、最悪と言われるわけだ、と納得させられてしまった次第なのです。

翻って、Air Franceはというと。今更言うまでもないのですけれども、企業は独占、労働者も代えの効かない特別資格職で、参加者の比率はパイロットの約半数、大量の欠航を出して営業損失は毎日数十億。要求は通り、会社の新規事業計画は撤回されました。何から何まで、まるで正反対です。今回のストライキは、格安路線への配置転換に伴う賃金等の低下を嫌って起こされた、という事ですが、恐らくそれが成されたとしても、その悪化した条件はAmazon従業員のそれに比べれば夢のような好待遇なのでしょう。

これは、どちらの条件、環境が妥当かと言えるような話では無いのでしょう。ただ、同じ労働者でも、環境や立場が違えばこれだけ差異が生まれるという事例です。本来は法の規律によって公平が図られるべきところであって、法の不備があるとも言えるんでしょうけれども、さてどうあるべきものなのでしょうか。少なくとも、Amazonを非難し、あるいは排斥すればそれでよい、というような簡単な問題ではない事は間違いないんでしょうけれども。

Strikes at Amazon Warehouses in Germany End for Now

Air France offers to scrap low-cost Transavia expansion plan

(その後追記)

独Lufthanzaも同じくLCC絡みの新路線導入に反対してストですか。本件に参加したAmazon従業員はじめ、一般の労働者はさぞ白い目で見ている事でしょう。

9/24/2014

[biz law] 債権大手PIMCOにファンド運用益粉飾容疑

このところ落ち目な債権大手PIMCOですが、法的にも追い詰められつつあるとか。一体どうなってしまうのでしょうか、と興味津々なのです。

Bill Gross自ら担当する一般投資家向けの旗艦ファンド"the Pimco Total Return ETF"で粉飾の疑いがあり、SECの調査がここ数か月続けてられているとのこと。その具体的な容疑は、価値が毀損した債権をその時価たる低価格で調達し、ETFに組み込んだ後に毀損が無いものとして価格を付け替える事でファンドの運用益を水増しした、というもの。

調査に数か月もかかってる点からして、容疑が事実だとしてもそれなりに隠蔽工作がされていたんでしょうし、複合型債権投資信託商品は元々複雑怪奇な構成になりがちで調査には膨大な時間も手間もかかるから、現時点ではまだ確定とは言えないんでしょうけれども。一応、細切れの債権を纏めてヘッジする事による価値上昇も無いわけではありませんしね。

しかし、PIMCOはここ最近、特に前CEOのEl-Erianが突如辞任した前後から不振が続いていたし、それによる急激な、崩壊とも言うべき20%を軽く超える資産流出の真っ只中にあるわけで。それを受けて一部では破綻の観測すら出ていた位ですから、顧客を繋ぎ止めるため、だとか、パフォーマンスを粉飾する動機は十分過ぎるほどにあったのも事実です。実際の所、やっぱり、と納得こそすれ、意外に思う向きは殆ど居ないんじゃないでしょうか。

ただ、ハイリスク上等の株式や為替と違い、低リスクを基本とする債権周りで、それもPIMCOクラスとなると、ちょっと信用を毀損するだけでも大きな影響があるわけで。これでもしBill Grossが逮捕でもされたら、本気で債権市場がカオスになりかねません。もっとも、その傲慢で独裁的な振る舞いから社内社外問わず嫌われている氏の事ですから、いない方が組織としては逆に安定して、業界的にも望ましい帰結になったりするのかもしれませんが。さて。

Report: SEC Probing Pimco For Artificially Boosting Returns

Pimco ETF Draws Probe by SEC

そしてBill Grossが電撃的退職。やはり黒でしたか。。。

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[biz] スターバックスの日本法人完全子会社化プランが黒すぎる

コーヒーチェーン大手スターバックスの米国本社が、日本法人を完全子会社にする計画が発表されました。計画の内容をざっと確認してみたんですが、、、これ成立するのか、というか、成立はするんでしょうけど、随分と黒い感じで、すんなりとは行かないだろうな、と首を捻らざるを得ないものだったわけです。

株を取得するのはSolar Japan Holdings合同会社。これは中間的な持ち株会社で、事実上その完全親会社エスシーアイ・ベンチャーズ・エス・エルが取得するものと言えます。で、このエスシーアイ社はスターバックス本社の100%子会社で、現時点で日本法人株の39.52%(57,000,000株)を保有する大株主です。と言うわけで、今回の計画での目標は残りの60.48%の全取得、という事になるのですが、日本法人のスターバックスコーヒージャパンは上場企業ですから当然TOBによらなければなりません。

で、このTOB。普通ならスターバックスレベルの規模の企業で60%超のTOBなんて成立させるのは極めて困難、頑張って成立させるにしても相当なプレミアムが必要になるわけですが、この点スターバックスは色々とアクロバティックな手法を使う事で回避を図っています。

その基本として、TOBを条件の異なる2回に分けて行います。その1回目では、サザビーリーグというエスシーアイと同数の株を保有する大株主と応募契約を結び、事実上の単独対象にします。ただTOBは形式的には応募者に制限は付けられませんから、募集価格を965円と時価より相当低く設定します。割安過ぎて他の株主はまず応募しないだろう、という事ですね。

そして、2回目では募集価格を1465円にして再びTOBをかけます。こちらは時価(計画公表前日の終値)より5%ほど高く設定されていますから、事実上一般の株主はこちらに応募するかどうかを検討する事になるでしょう。

この2段階TOBですが。一見すると、通常であればどちらも成立が危ぶまれる条件です。1回目はサザビーリーグがみすみす大損をする事になるし、2回目はプレミアムの5%というのが相場より小さすぎます。普通は30%位は付くものですから。ほぼ全ての株主が不満に感じるだろうと思われるところです。

これらの問題点に対してはスターバックスも当然承知していて、それぞれ対策的な措置が採られています。サザビーリーグの第1回TOB応募については、同社が子会社にならない限り、スターバックスと現在結んでおり、平成33年3月31日に切れる日本での合弁に関するライセンス契約を更新しない旨を通告し、それによって強制力を働かせています。普通に脅迫ですね。こちらはサザビーリーグの株主、すなわちその親会社たる株式会社AHAの同意が必須となりますが、その説得は済んでいるという事なのでしょう。恐ろしや。

一般向けの第2回TOBについては、今年度末の配当や優待の廃止を打ち出しています。要するにあえて短期的な株式の価値をなくす事で、売却を促すというわけです。ただ、普通は手切れ金的に上乗せする筈のプレミアムが殆どありません。ぶっちゃけ脅迫同然の追い出しと言って良く、納得しない、というか激怒する株主が多数出る事は避けられず、普通に揉めるでしょうね。今後の流れを想像するに、1回目のTOBが成功した時点で約80%のシェアを握れますから、その議決権を用いて取得条項を設定し即発動、で買取価格で揉めて裁判所の価格決定のち強制買取、とか。最悪訴訟もあるかもしれません。

とまあ、内在する分だけでも随分と不安要素に満ち満ちているわけです。よくこんなややこしくも危うい手法を考えつき、かつ実行に踏み切ったものだと。しかもそれだけではありません。外部要因、すなわち対抗的買収者が出ないとも限らないのです。1回目の買付価格の安さはいくら契約があるとは言ってもちょっかいを出す向きが居ないとは言えないでしょうし、2回目もプレミアムが低すぎですから、手を出したくなるファンドも普通に出るんじゃないかと。もっとも、スターバックスの意見書にはその辺の強制手続きや対抗買い付け等についても記述がありますから、スタバにしてみればそこまでもが既に織り込み済み、規定路線と言うべきなのかなとも思いますけれども。その黒さ加減には正直引きます。

というわけで、それこそ有象無象も含め多数のプレイヤーが色々と慌しく動くだろう本件、さてどう展開するのやら。スタバの目論見通りすんなり行くのか、それとも混沌とした泥沼案件になるのか。価格決定等のアドバイザーにゴールドマンサックスの名前がある時点で色々とお察しな感じでもありますから、あまり深入りせず、適当に見守るのが吉ですかね。突然のカオスに巻き込まれた株主各位におかれましては、誠にお疲れ様かつご愁傷様です。

Solar Japan Holdings 合同会社による当社株券等に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ

米スタバ、日本法人を完全子会社化 対コンビニに備え
スターバックスコーヒージャパン、配当見送り

9/22/2014

[IT gov] 法務局の内部ネットに不正アクセス

冷や汗が出ました。民事局と法務局の内部ネットワークに不正アクセスがあったんだそうです。登記周りがクラックされたとしたら大惨事なわけですが、戦慄しながら確認してみれば今回の対象は事務用の部分、職員用の掲示板やファイルサーバだけで、国家システム的に漏れたり改竄されたりしたらヤバい所は範囲外なんだそうで。

それが本当なら一安心、です。今回の侵入の発覚は5日の事で、それから公表までの2週間以上の間に色々と検証も対策もされたんでしょうから、とりあえずは信頼してよいのでしょう。侵入の原因によっては失職の危機に晒される職員が居るのかもしれませんが、それは社会的には大した問題でもありません。なのですが、改めて考えてみると、そういう事務システムも登記申請システムも閉じてはおらず、その殆どが既にオープンネットに繋がってるわけで。今後については、大丈夫なのか、と少し不安も感じるわわけです。

勿論、そういうクリティカルな部分はその他からはある程度隔離されてるのだろうし、登記官が行うような編集作業は流石に通常の端末から行っているとは考えにくいところですから、今回のようにオープンネットと接する部分が侵入を受けたとしても、即クリティカルな所がクラックされるというわけでもないんでしょう。

しかし、一般向けの登記情報提供サービス等が運用され、そこには現在の情報が概ねリアルタイムで反映される点からして、その隔離はおそらく物理的な、すなわち完全なものではなく、従って外部からサーバへのアクセスは可能なんじゃないかと推測されるところです。もしそうであれば、こういう事務システム等の一般にアクセス可能なところを踏み台にしてクラックされる可能性もゼロではないものと懸念されるのですね。今回はそこまで行く前に発覚しましたけれども、それが多分に偶然の幸いであり、リスクは依然として残っている、というのであれば、それはちょっと洒落にならないわけです。心配のしすぎ、というのであればいいのですが。

もっとも、仮にそこまでして秘密情報の入手や改竄に成功したとしても、そこから金銭等の現実的な利益を得るのはそう容易な話でもないんでしょうけれども。詐欺に使うにしても、不動産取引は一般に対面で色々手間も時間もかかるものだし、法人を登記上乗っ取ったりしてもそれ自体を換金するのは困難でしょうし。それに、万が一そこまで成功したとしても、その後改竄等が発覚すれば直ぐに足が付きますしね。現実性もさほど高いとは言えないのかもしれません。

それでも。単に公共セクターの内部情報というだけで価値があり、それを収集する事を生業にする向きが多数存在するのも事実です。電子申請関連は少し前までは共通でしたし、もしその名残りでシステム間が相互に繋がったままだったりしたら、と、一抹の不安が過る事は否定出来ません。心配したところでどうしようもないんでしょうし、個人も組織も外部のクラウドサービスも使いまくりな政府にセキュリティを云々する意味もないんでしょうけれども。今更、という事でしょうか。色々と。

不正アクセス:各地の法務局結ぶネットに外部から侵入

9/19/2014

[biz] Larry Ellison退任

主にハイテク業界周りのあっちこっちで不振企業の敗戦処理が行われているようです。Microsoftの2100人レイオフをはじめ、いずれも盛者必衰を感じずにはいられませんけれども、これはその中でもとりわけ感慨深く思われるところですね。

Larry Ellisonは言わずと知れたDB系最大手Oracleの創業者であり、激動の業界にあって30年以上に渡ってトップであり続けた奇跡的な経営者です。法人特化の業態故に一般への知名度はMicrosoft等の花形には及びませんでしたが、その100億に届こうかという報酬の高さも相俟って、ITバブルの名残りを未だ体現するものとして、あるいは故Jobsに迫る程に特別視されていたわけです。Sun Microsystemsを買収したあたりからは日本企業との提携もあって国内メディアへの露出も増えましたかね?

しかしさしもの氏も齢既に70を超え、流石に世代交代を進めざるを得なくなった、ということなのでしょう。前期に続いて今ひとつに終わった直近四半期の業績発表と共に、CEOから退任し、権限をMark HurdとSafra Catzの2人に移譲する、との事。完全に引退するのではなく、今しばらくはCTO兼取締役として、事業運営を主導し続けるそうです。この辺は不振と言っても十分に利益を出し続けている優良企業の余裕といったところでしょうか。

Sunの買収で得たサーバ等のハード事業では結局Sun時代とあまり変わらずジリ貧のままだったのは残念でしたが、競合が競合だけに致し方なかったと言うべきでしょう。パートナーも頼りになりませんでしたし。それに、既に主戦場はクラウド系に移りました。そのコア中のコア技術を有するOracleをしても、新たな、以前のIBMとのそれをも超える苛烈な新興各社との競合を前にして旧態のままでいられる筈もありません。世代交代が起こる事はむしろ必然の成り行きのように思われるわけです。

ただ、それが上手くいくか、それは誰にも分かりません。おそらく、成功する可能性の方が低いのでしょう。 それは先んじて事業構造の変遷に晒され、十分に適応出来ずに混乱しつつ急速に力を失っていくMicrosoftやHP、Nokia等の旧最大手他社を見れば明らかです。それが元より競合も多数あるOracleであれば尚更でしょう。元HPのMark Hurdがしれっと後任に収まっている点からしても。

Oracleは、このままLarryと共に、傑出した経営者の伝説として完結するのか、それとも新世代が引き継ぐのか。個人的には後者となる事を期待したいところですが、さて。

Oracle's Larry Ellison steps down as two successors named

Microsoft cuts 2,100 jobs in its latest round of layoffs

9/18/2014

[biz] 東芝がPC事業リストラ。900人削減

東芝がPC事業のリストラに着手するんだそうですね。

同社の説明するところによれば法人向けに集中するという事で、それが本当であれば事業全体が消滅するわけではありませんが、少なくともコンシューマ向けからは撤退する流れに入ったものと見ていいのでしょう。そして同社のコンシューマ向けブランドは言わずと知れたDynabook。かつてノートPCのカテゴリでは長く世界一のシェアを誇り、ノートPCの代名詞とも言われた同ブランドが整理の対象となった事には、多少なりと時代の流れ、その無常を感じずにはいられません。

その経緯、事情については今更疑問を入れる必要もないでしょう。既に同分野自体、進歩を完全に止め、加えての急激な需要減退に晒され、もはやそのシェアの大小によらず損失を免れない程に先がない事は明らかです。東芝が積極的に投入しているタブレット機も、最近リリースした100ドル未満の超低価格機種にしても、利益なんて期待する方が無茶というものです。既にNECもソニーも撤退し、残るは富士通だけ、それも赤字を出しながら無理やり続けているのが現状なのですから。

ともあれ、去年のTVに続いて今年はPCをリストラした東芝。それ以前に撤退売却済みの携帯事業と合わせ、これで同社のパーソナル向けプロダクト事業のうち、かつての主力からは軒並み撤退の流れとなりました。と言ってもソニーと違い、元よりBtoBで稼いでいた企業が本業に回帰しただけだし、その継続性には特段の疑義が付くわけではありません。淡々と重電や半導体部品等の法人向けビジネスを続けていくのでしょう。それは必然の成り行きというものです。

ただ、それに伴って、各社が、各社の製品が、我々個人の前から消えていくのもまた事実です。次々と胸を踊らせるような魅力的な新製品が季節毎にリリースされたあの頃、その活況を、その製品を通して見た夢を、一ユーザとして思い出し、それらの愛すべき時代が完全に終わり、今またその名残りすらも消えていこうとしている事、その事を理解して、寂しさを感じる、ただそれだけの事なのです。

東芝、パソコン事業の再編計画発表 人員減・拠点統合

Toshiba's 7-inch Encore Mini could be the first $99 Windows tablet

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9/17/2014

[biz] ソニー・スマホ事業見通し下方修正、損失1800億、1000人削減

ソニーのスマホ事業がギブアップを宣言したんだそうで。販売回復の見通しが立たず、エリクソン買収時ののれん代を減損処理せざるを得なくなったという事で、それはまあ事実なので仕方ないんでしょうけれども、無配とはまた思い切ったものです。これはもう白旗を揚げたものと理解する他ありません。

元々スマホ事業は、テレビはじめエレキ事業が壊滅し、ゲーム事業も衰退の一途、金融等のサービスを除くプロダクト系事業の中では殆ど唯一と言ってもいい成長分野と位置づけられていた筈です。初代iPhoneの登場から数年でコンシューマエレクトロニクスの花形として圧倒的な規模を持つに至り、なお成長を続ける同分野で一定以上の支配的シェアを握り、衰退する旧主力事業に代えようとした目論みも、2011年の完全子会社化からわずか3年、アップルや新興勢力の圧倒的な生産・販売力の前にその後は成長の気配を見せる事すらないまま、こうしてあっさり潰えてしまったわけです。市場というのは容赦無いですね本当に。

まあでも、本件はもう終わった話だし、元々先が無い事は端から見ても明らかでしたからどうこう言っても無意味でしょう。それはそれとして、で、この先どうすんの、と。この疑問を持つのももう何度目かもはやわからない位ですが、それでも一応思わずには居られません。しかしまさか不動産を本気で主力事業にするつもりじゃないでしょうけれども、実際問題もう次のネタが無いわけです。本当に何も。

今更サービス系の事業にソニーが割って入る余地なんて何処にもないし、かと言ってBtoB主体にするのは企業の性質とか能力的にも無理があるでしょう。と言って目先で好調と言えるのはそのBtoBたる画像センサー事業位なんですけれども、しかし何とか事業を上手く継続出来たとして、規模的にも構造からしてもソニーを支える事は出来ない筈で、それに何時まで好調が保つかも疑わしいですしね。さてさてどうするのやら。

まあ、あれだけ色々やらかしながら配当を続けてきた会社が無配にしたって事は、それだけ先行きが暗いって事なわけで、これまでのアクションからしても、単にリストラして縮小均衡に持っていく以外のポジティブな方策が採られる可能性は極めて低いものと思われるところですが。

ソニーの今後はさておき。国内スマホメーカーの中では最もマシな部類な筈のソニーですらこれというのでは、販売ランキングからは姿を消し、市場シェアのグラフ表示では「その他」に埋もれて名前すら出なくなった某社含め競合各社なんかどうなっちゃってるのでしょうね?前期には販売目標大幅未達の挙句に在庫の廃棄まであったし、今季はそこからさらに2桁マイナスとかで、流石に生産を絞ってる筈だから赤字はさほどでもないのかもしれませんが、それはもう事実上の撤退と変わらないのではないかと。

その辺の逝っちゃってる各社を差し置いて、残るとしたらここ位と言われているソニーが真っ先に音を上げたのは、子会社が元々買収事業で、のれん代の会計処理という外に見える要素があったから、という事情を考慮しても少々意外でした。当然本件はそれら各社にも色々と影響がある筈、さてどう出る、というかどうしようもないでしょうから、何時ギブアップするのか。こちらもそろそろという事で、関係各位は保身を図ったり覚悟を決めたり引導を渡したり渡されたり、色々と準備に忙しいといったところでしょうか。大変ですね。他人事ですが。

ソニー、上場来初の無配に スマホ減損で今期最終赤字2300億円

ソニーはスマホ事業のリストラもするそうです。1000人程度で、当該事業の15%。当然というか、少ない気がする位ですけど。しかし今後は数より利益を追う方針に転換するだとか、そもそも数を出さないと利益が出ない事業分野で何を寝言を言っているのかと。過去その種の宣言をしたケースのその後からしても、むしろ終了宣言にしか聞こえないわけです。

ソニー、モバイル事業1000人規模の削減へ

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9/16/2014

[pol] Scotland独立運動への部外者の反応が一様に酷すぎる

Scotland独立を判断する住民投票の期日が迫り、外野が色々と騒がしいこの頃。その外野の声が、どれもこれも脅しとか宥めすかしとか懇願とか、その活動を否定し、独立を押し止めようとするろくでもないものばかりで呆れました。

これほど多数のScotland人が独立を志向しているのは、現状に不満があり、その改善を求めているからだ、という極めて単純な事情を何故理解出来ないのでしょう。Scotland人は、積極的な改革を求めているのです。そこに、やれ独立すれば経済が悪化するだとか、EUやNATOで内紛が広がるだとか、当人に関係のない、しかもネガティブな理由を投げかけたところで何の意味があるのでしょう。それも部外者、あるいは不満の原因たる相手から。

これらの意見を見るに、彼らの頭には、要するに自分たちの都合、不利益を被るだろう事に対する心配しかないのでしょう。全く以て愚かしい事です。何事につけ、相手が求めてもいない話を持ち出して説得出来るわけがありません。実際の所、彼らはScotlandを対等に見ておらず、自分たちに奉仕すべき奴隷同然に見下しているのでしょう。それは現在の利益がロンドンはじめイングランドに偏重しつつ、負担がその他に押し付けられている英国の経済・政治構造からしても明らかです。だからこそ、独立への支持がこれほど高くなったものと理解すべきところでしょうに。

説得しようというのなら、その体制を具体的に是正し得る政策等を提示しなければ無意味なことくらい、誰でも知っている筈でしょうに。一応、Cameronは否決された場合のScotland自治体の裁量権拡大を約してはいるそうですが、肝心の議会与党の支持が無い以上空手形な事も明らか、詭弁と言う他ないわけです。

他国からすれば、実際のところ大した影響もありません。実質的に見て元々独立性の高かった地域が自律性を高めるだけの事です。その手段が妥当なものである限り、自国を定義し、その運営を自ら行う事はその国民固有の権利であって、それ以外の何者にも脅かされてはなりません。愚かな他人の脅迫や詭弁に惑わされず、その意志を毅然たる行動として示される事を願う次第です。

9/15/2014

[note] 朝日新聞の捏造で再確認する、報道への適切な接し方。

朝日新聞による捏造の件。同業各社の中には同社による過去の類似ケースの掘り出しに熱心な向きもあるようですが、そろそろ一通り出尽くした感じでしょうか。

本件はそれこそ至る所で数え切れない程報じられ、論じられている話ですから、今更私個人が何か考える意味も無いでしょう。とはいえ、既存大手メディア業界の時代を画する可能性もありますから、それらのメディアに対する接し方、情報の受取方について整理する機会かとも思うわけで。

事件の内容、その評価自体には取り立てて何も思うところはありません。多分にその偏った政治的主義主張の実現を目的として虚偽の報道を繰り返し、長年に渡ってその過ちを認めるどころか主張を重ねて拡大し続け、その不正を認めてなお責任回避を図る、そのあまりに姑息な振る舞いは報道機関としては勿論、企業経営の観点からも論外の愚行と言う他ないものであって。犯罪ではないために事業の存続に疑義が付くほどではないにせよ、信頼回復は絶望的、あるいは膨大な時間が必要になるでしょう。関係者の言からいまだに自らを被害者と捉えている節が見受けられる点からしても、そもそも回復が可能なのかすらも現時点では定かではありませんが。

そういった本事件の個別具体的な話はさておき。前置き的に個人的な話をすると、一般に報道機関には事実の伝達以外の何も求めていませんし、書き手の分析や表現方法等、それ以外の情報は原則全て無視しています。一個人や営利組織の意見として参考にする事はありますけれども、元よりそれ以上の意味があるとは思っていません。

その事実にしたところで、情報毎にその正確性を多少なりと評価し、事実と判ずるに足る根拠を見出して初めて事実として受け取る事にしています。従って、本件のような、その重大性にも関わらず殆ど単一の機関のみからの報道によるもので、その他からの独立な裏付けが取れないような話については、単なる噂、風説の類と捉えていたわけです。ですので、捏造だった事が判明したところで、ああやっぱりね、とむしろ納得するだけでした。初めから信頼していないのですから、真実虚偽だった事が判明したところで、何ら損害が生じる筈もなかったのです。

そもそもの話、新聞を含め、報道機関は本来的に情報源そのものではなく、情報の仲介者に過ぎません。何をどのように報じるか、その選択における判断、決定において恣意が介在する事は避けられませんが、報道される情報自体は事実である事、それは欠くべからざる前提と言えます。消費者は、その事実を知る為に対価を支払っているのであって、本件のような、故意による虚偽や作り話など論外であり、それが個人や組織の行動や心理に影響して現実の被害に至れば、相応の賠償を求める権利も当然に発生します。従って、それ自体は必ずしも不法行為ではなくとも、不法性を帯びやすい行為であって、報道機関としては自殺行為に等しいものとも言えるでしょう。合理的な判断に従えば、およそ行い得ないものと思われるところです。

とはいえ、報道機関はそれぞれ独立した民間の営利団体ですから、元より一様に律せられているわけではなく、組織毎に異なる論理に従ってその利益を追求して活動する以上、今回のような組織的な捏造も、単に成果を焦った部門や社員によるでっち上げも起こりうるわけです。法による厳格な規制も無く、逆に表現の自由として憲法によって保護されているとあっては尚更でしょう。

むしろ、大手の中でも雑誌やスポーツ紙等では、ミスリードもデマも、もはやその欠くべからざる主要素と位置づけられている感もある程で、概ねにせよ事実の報道をするものとして信頼され得る機関の方が特殊と言うべきなのでしょう。そして、その代表たる大手新聞社ですら、本件のような捏造を公然と行ってしまう、それが現実だという事です。その意味で、信頼のおける報道機関は日本には存在しない、とも言えてしまうのでしょう。残念ながら。建前では公共、公正を謳い掲げながら、その実は各々の組織や個々人の利益のために活動し、時には嘘も平然と流す、欺瞞に満ちた事業者達がその営みを続けている、ただそれだけの事です。

しかるに、この種のおよそ不可避的に発生する虚偽、捏造、ミスリード等について、受け手側としてはどう捉え、対処すべきなのか、それが問題なわけです。私個人のスタンスは既に述べました。自己の責任において検証し、疑わしきは全て虚偽の可能性ありとして無視する、というものです。

社会的にはどうでしょうか。元より、そういった虚偽の報道は全て容認するわけにもいかず、かと言って一々批難してもキリがありません。「朝日も終わりだ」等としてその終焉と見做す向きも多数ありますが、それは報道機関、ひいては事実の伝達それ自体が全て終わりと言っているに等しく、無意味に思われるわけです。そうではなく、現実の問題として具体的な対応方法、方針を持たなければなりません。そこでただ切り捨てるのではなく、積極的に対処しようとするなら、その対象を区別するための線引きが必要です。それは可能でしょうか。

本件の朝日の行為は論外です。では、読売、産経、毎日、日経、地方紙、雑誌、テレビ各局は?虚偽の報道自体は至る所であまりにありふれた話です。従って、その有無で区別する事は出来ません。では、質による区別は可能か?しかし、この種の情報自体の質を定量的に測る客観的な基準、方法は存在しませんから、それも困難でしょう。影響の大きさでは?それは多分に受け手の多さによるでしょうから、結局のところ単に大手の機関を罰するだけになるでしょう。

要するに、妥当な方法は今のところ存在しないのです。積極的な対処が困難なのであれば、いっそ機械的に判断し一律に無視する、というのはそれなりに現実的な対応だと言えないでしょうか。社会経済的にも合理性があると思うのです。

現実問題、捏造や虚偽が行われたからと言って、その事から直ちに刑罰的な報いを受けさせる、そのようなシステムを実現する事は、およそ不可能にも思われます。それより、その帰結としての影響が、詐欺なり名誉毀損なり、個別具体的な損害を生じせしめた時に、それぞれが法に従って罰せられればそれでよいし、またそうすべきであって、その評価、判断が各個人の主観のみによらざるを得ず、従って客観的評価が不可能なために適法な措置が困難な、報道の内容それ自体に対する罰則等は課されるべきではないでしょう。実際、現在の日本の法はそのように作られている事からも、その妥当性は支持され得るでしょう。

そして、個別具体的な被害を受けない大多数においては、単に無視すればそれでいいのではないでしょうか。一々批難追求をしていてはキリがないし、無駄な労力になるリスクも多分にあるわけです。対して、何処からどのように情報を受け取り、それをどう捉えるか、それは元より各個人の自由です。疑わしいもの、信頼のおけないもの、虚偽を流した事のあるもの、それらを選別にかけ、除外していけば、虚偽の報道を受け取る割合も縮小し、いずれ均衡するものと期待されるでしょう。

とりあえず、朝日は系列含めまるごと除外し、関連する他社の報道もまとめて無視する、そのあたりが適切な対応ではないでしょうか。それで何ら問題もないのです。報道各社以外には。

9/13/2014

[note] Joe Sample死去

亡くなってしまいましたか。Melodies of Love、大好きでしたよ。レコードでもCDでも、何度も何度も、数え切れない位聴かせて貰いました。これからも聴くでしょう。

Rest in peace.

Joe Sample, Iconic Jazz Pianist & Composer, Is Dead at 75

9/12/2014

[note] ぼろぼろになったヘッドホンパッド用にカバーを自作

してみました。対象機種はSONYのMDR-F1、かつての人気機種ですね。もう十年以上前に買った代物ですが、とにかく軽くて楽なので、オープン型のファーストチョイスとして未だに愛用しているのです。が、さすがに老朽化が著しく、特にイヤーパッドがビロード質なんですがこれがもうボロボロで崩壊寸前なんですね。弾力も何もあったものじゃないので、スピーカー部が耳に当たる位。さすがにこれはいい加減何とかしないと、と前々から修理したかったんですが、交換用のパッドは片方2000円以上と、物の質からすればボッタクリかと言うくらいに高いのです。で、これ位なら自前でなんとかするか、と。

どういう処置をしようかと思案。まだパッド部は完全に崩れ落ちたわけではなく、一応原型は止めています。なので、分厚い生地でカバーをすればとりあえず大丈夫かな、というわけで、カバーを作る事に決定。

まずは採寸して、大まかな型を作ります。ほぼ真円で直径は外側がおよそ100mm、内側が80mm。外側と内側それぞれに縁を付けるためにマージンを取った型をコンパス等を使って作ります。


で、この型を生地に当てて切り出します。生地には元のパッドの感触に近いものという事でフェルトを採用。ジョキジョキっとな。


縁の部分を作るため、切り込みを入れます。間隔は適当。


折り曲げて少しずつ重ね合わせつつ、ちくちくと縫い合わせます。


1列だけだと流石に耐久性に不安があるので、往復で2列分縫います。こんな感じに。


外側縁のうちフレームと干渉する上側を切り落とし、内側の縁に切り込みを入れます。


これでほぼ完成。今回は一回目、お試しという事で、糸で括り付けるだけの簡易な方法で装着。とりあえず問題ない感じ。でもう片方も同様に作って装着。


クッション材を間に追加するか迷いましたが、入れなくてもまあまあいい感じです。というわけでミッションコンプリート。しかしこうして写真を見ると、スピーカー部とか汚れが酷いですね。そのうちこっちもクリーニングしないと。ヘッドバンド部も耳当て程じゃないですけどくたびれてますし、こちらも補修しないといけません。やれやれです。

ちなみにかかった費用は、100均で調達したフェルト材5枚入108円。あと糸と針だけ。とても安上がりです。手間はそこそこかかりますけど、これぐらいならなんということもないですかね。というわけで今回はこれでおしまい。

9/10/2014

[IT] iWatch発表。無難な仕様、しかし使い勝手が良くない懸念あり

この程、大方の予想通りに発表されましたAppleの腕時計型デバイスiWatch。ていうか正式名称はApple Watchなんだそうですけど。後発過ぎて商標的に無理だったって事でしょうか。

結局、曲面や円形といった変形ディスプレイは採用されず、標準的な四角形でフラットな画面に落ち着いた事もあり、デザイン的には賛否両論というか、基本的にこれまで発表されたsmartwatchと比べて特に異なる点は無く、よく言えば手堅い、悪く言えば野暮ったい、いずれにせよAppleの新製品としてはいささか平凡な代物でした。どこかビスケットを連想させるような形状、ずんぐりとした厚みもあって、スマートさは欠片も感じられません。

機能的にも、単体での通話等モバイル通信が不可なのはバッテリーの容量的に仕方ないとして、健康管理とショートメッセージ、後はナビに各種コントローラという事で、特に目新しい点はなく、単に腕時計型デバイスで現状出来うる機能をAppleがまとめました、というだけですね。ネーミングに端的に表れている通りの後追いそのものなわけですが、この辺の革新性の無さは、Jobs亡き後のAppleの立ち位置を象徴するように見えなくもありません。

とはいえ、腕時計型デバイス自体がこれまで幾度となく提案されては受け入れられず消え去ってきた事は周知の事実なところ、Apple Watchがそれなりに受け入れられ、定着すれば、それはそれで社会経済的には一つの革新と言えるでしょうから、意味が無いと切り捨てるのは性急でしょう。

しかしそれには幾つか条件があるわけで。大まかには使い勝手の良さと価格の妥当さの2点ですね。後者の価格については$349という事で、デザインを犠牲にして製造コストを抑制した筈な割にはまだかなり高い感じですが、高い評価がつけば受け入れられない事も無いでしょう。問題は前者の使い勝手の方、特にバッテリーの持ち時間ですね。

で、このバッテリー持続時間、これが非公表なのです。これ、一番問題な所が非公表というのは、言いたくないような、都合が悪いスペックだと自白しているようなものなわけで。公表されない以上は推測するしかないのですが、そのsmartwatchとしては高度かつ豊富なハードの機能からして、おそらくこれまでの例を大きく上回る事は無いだろう事が示唆されています。すなわち、1日1回ないし2日に1回の充電が必要になるものと推測されるわけです。

そうであれば、これはとても使い勝手が悪い事になってしまいます。腕時計を毎日充電する習慣なんてありませんからね。考えるだけで気が滅入る人も多いでしょう。その充電にしても専用のクレードルで非接触充電とかになるんでしょうけれども、旅行や出先では充電用のクレードルの準備とかでとても気を使う事を強いられて、極めて不便なのは間違いありません。

従来のデバイスでよく行われているようにモバイルバッテリー等で補完するにも、デバイスを手首に常時装着するが故に、接続に使うケーブルの取り回しにとても苦労させられる筈です。というかそもそも外部電源を接続可能なコネクタが無いので、そのためには非接触充電アダプタが必要になったりしますし、およそ現実的ではないと言うべきなのかもしれません。この辺の電源に関する融通の効かなさはスマートフォンよりも悪いと言えるでしょう。

逆に言えば、そこさえクリアして、例えば1週間程度は充電不要、とかに出来れば、一定の成功は間違いないと思われるわけなんですけれども。Appleがその点を認識していない筈はないし、発売は来年の初め頃を予定との事で、まだ3箇月程は仕様の変更が可能ではありますから、その間に上手く修正されるかどうか。出来ればジョブス後の新生アップルを象徴する成功ともなりうるだろうし、出来なければやはりカリスマ亡き後の大企業病的な凋落を認定されかねないわけで、割と今後のアップルにとって決定的なポイントともなりそうに思われますが、さてさて。

ただ、基本常時使用するものだから、スリープモードとかで節約する手が殆ど使えないわけで、その点だけでも相当に困難があるものと予想されるんですよね。果たしてそんな上手い話があるのかどうか。電源オフにした状態のデバイスなんて邪魔なだけですし。うーん。

We got our hands on the Apple Watch

[note] SEAGATE製HDDをRMA

先日故障し、データをサルベージした上でお役ご免となったHDDをRMAに出しました。これまで数回経験したRMAは全てWDで、SEAGATEは初めてにつき少し手間取りつつ完了し、今は代替品の返送を待っているところです。という事で備忘録的に。

ドライブのデータをddで消去しつつ、まずは保証期間の確認から。SEAGATEのHP中、保証のところでモデル名とシリアル、あと国を入れ、Captchaを入力。これはOK。今回のドライブは代理店(CFD)経由で販売されたものという事で、そちらへの連絡先を示してコンタクトを勧めつつ、このままシーゲートで直接交換処理する事も可能、との表示が出ます。具体的には、「お問い合わせ CFD SALES INC  または、[返品する をクリックして Seagate に直接 RMA をご要求ください。」とか。

指示に従い一応CFDの方で確認してみると、CFDの保証は1年だけで、今回のは既に過ぎてしまっており不可でした。というわけでシーゲートでの交換処理に戻り、[返品する]ボタンを押して処理を進めます。交換品を受け取るための住所等を入力。この時、日本語は入力出来ず、国際表記にする必要があります。これは恐らく代替品が海外(シンガポール)から送付されるためでしょう。で、確認を経てオーダー発行の最終実行ボタンが出ます。

ここで少し疑問を抱きました。WDの場合にはあった筈の、RMAの原因を入力する所が無かったんですね。申告は不要という事です。これだと、具体的にどういう理由でRMAをしたのかは申請処理上記録に残りませんので、先方のチェックで問題が発生しないだとか、後から何か問題が発生した時に困ります。なので、その点は何かしら証拠なり記録を自前で残しておく必要があるだろうわけです。

その辺はどうなってたんだっけ、と今更ながらに保証規定のドキュメントを今一度確認すると、シーゲートが発行している障害チェック・修復用ソフトSeatoolsでチェックしておく事が推奨されています。勿論起動しない場合には適用不要というか不可能なんでしょうけれども、今回の個体の場合には起動はするので、適用しておくべきケースという事になります。というわけで、一旦RMA申請は取りやめてそちらの処理に移行。

Seatoolsを入れたWindows機にHDDマウンタ経由でHDDを繋ぎ、Seatoolsを起動。HDDリスト中、チェック対象ドライブを選択し、[ベーシックテスト]から実行。簡易なものから破壊ありのものまで色々あるテストを軽いものから実行して行きます。

まず[S.M.A.R.Tチェック]。成功となります。C6セクタエラーとか多数あるのに成功と言われても釈然としませんが、動作不能ではない、という意味なのだろうと飲み込みます。次に、[ショートセルフテスト]。これも成功。どうもこれは先頭付近のごく一部の読み書き等をチェックしているだけのようです。今回のセクタエラーは1.3TB近辺とかなり後ろに集中していた筈ですから、その種のテストでは引っかからないのだろうと理解されます。だとすると、[ショートリードテスト]もおそらくやるだけ時間の無駄だろうと推測されますから、これは飛ばして[ロングリードテスト]を実行します。

すると表示された残り時間がまさかの6時間超。ここに来てまたそんな、とうんざりしつつ、どうせ後半にならないと動きもなかろう、と諦めて放置します。で待つこと数時間。残り2時間を切ったあたりでようやく[ロングタイプ-失敗]の赤文字が表示され、処理が中断されました。表示された結果の詳細は下図の通り。[失敗の詳細]に表示された結果は、「診断ソフトの診断結果では、お使いのドライブのセクターに異常が発生されており、読み込みが困難になって・・・」云々。何か日本語がおかしいですが気にしない。保証規定で記録しておくよう指示のあった[Seatoolsテストコード]もここに表示されています。これをメモ。


ログファイルを確認してみると、4時間程もかかっていました。


ともあれ、これで障害の記録は完了です。公式ツールでこの結果が出るなら、RMA送付後に向こうのチェックをパスする事もないでしょう。万が一問題無しと判定されるだとかのトラブルになっても、この結果を伝えればいいわけです。

と言う事で、ずいぶんと遠回りさせられましたけれども、RMA申請のHPに戻り、今度はオーダー発行ボタンを押します。送付先はシンガポールと国内(千葉)の二つがあり、後者を選択。そして発行完了画面にリンクの張られたpdfのラベルを印刷して梱包済みの箱に張ります。送付方法は任意ながら、基本的にトラッキング可能な方法を使う旨明記されています。これはおそらく事故・紛失時の問題回避のためでしょう。定形外だと少し安いんだけど、と思いつつも従って、今回はその中で一番安価なゆうパックにします。60サイズの持ち込み割引100円付で。その際には伝票を日本語で書かなければなりませんから、送付先の日本語表記と電話番号を調べてメモ。そして窓口持参で送付手続き。ちなみに送付先の住所及び宛名は下記。

<宛先住所>
〒270-1407
千葉県白井市名内字内山322 白井ディストリビューションセンター

<宛名>
UPSサプライチェーンソリューションジャパン(株

後は待つだけです。トラブルが起こらないよう祈りつつ。

(その後)

無事先方に到着し、待つ事3日で無事代替品がShippingされました。やはりSingaporeから。折角国内に窓口があるんだから、そこに多少の在庫位は持ってても良さそうなものですけど、集中管理で節約出来る人件費とか保管費とかが国際輸送費を上回ってるんでしょうか。UPSは単なるパートナーに過ぎないから、あまり複雑なオペレーションを任せると委託料が高くつくのかもしれませんね。ともあれ何事も無ければ一週間もすれば着くでしょうから、引き続き待つだけです。

しかし、進捗があるとメールで連絡をくれるんですけど、これがどうも不親切です。届いた時には単に"Receipt Acknowledgement"だけで、これからの手続きについては全く説明もないし、発送まで何の音沙汰もありません。その発送時には"Ship Advice for shipper Number ***"で発送された旨だけ連絡して来ます。もうちょっと何とかならないものでしょうか。まあこの辺の不親切加減はWDも似たようなものでしたけど。下手に色々書くと面倒があるから、て事なんでしょうか。

(さらに数日後)

代替品が届きました。UPSのWWD Express Saver便でSingaporeからChangi空港-深圳空港(中国)を経由して日本へ、所要日数は2日。流石に速いです。

ドライブには"Certified Repaired HDD"と記載されたラベルが貼られており、再生品扱いとなっていますが、おそらく実際には新品なんでしょう。何にせよ、これで全て完了。今度は長く壊れませんように。



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9/08/2014

[note] ADTの動作不具合修正

久しぶりに開発環境周りでの不具合対処。結果から言えば解決出来たんですが、もう大変でした。その事の次第は次の通り。

Android用の開発環境であるところのAndroid Developer Tools(ADT)について、その最新版(20140702)が落ちまくりで使い物にならず、やむなく旧版を使い続けていたんですが、こちらもライブラリ類のアップデートに伴ってExportとかでエラーを吐くようになってしまい、修正も上手くいかなかったので仕方なく最新版に移行する事にしたのです。なお環境はUbuntu 14.04LTSの64bit版、IDEは勿論同梱のEclipseです。ADTのパッケージ名はadt-bundle-linux-x86_64-20140702。

しかしこの20140702版、とにかく落ちる。何をしても落ちるし、何もしてなくても内部で自動処理の類が動くと勝手に即落ち。話になりません。で、終了時にコンソールに吐くメッセージを眺めてみると、

Gtk-Message: Failed to load module "canberra-gtk-module"

とか言ってるんですね。gtkのモジュールが無いと。しかしチェックしてみると導入済みです。どういう事なんだろう、と訝しみながら調べてみると、どうもこのADT、基本的に32bitモジュールで動いてるんだとか。そういえばSDKの導入時に色々やったな、と思い出しつつ、i386版を入れます。

> sudo apt-get install libcanberra-gtk-module:i386

これは一応正解だったようで、とりあえず即落ちはしなくなりました。AVDマネージャがエラーを出したりはするものの落ちはせず、概ね編集作業はそこそこ出来る感じなので、とりあえずそのまま作業していると、今度はAndroid SDK Content Loaderが下記エラー。

parseSdkContent failed
Could not initialize class android.graphics.Typeface

一難去ってまた一難。まあそんなもんですよね、とため息を付きつつまた調べると、アップデートに絡んで設定に不整合が起こっているらしく、テンポラリを削除して初期化すればいいらしい、との事で、下記。一時フォルダを丸ごと消去します。

> rm -rf ~/.android

これまた正解のようで、当該エラーは出なくなります。が、続いて下記のような別のエラーで落ちる。

Gtk-WARNING **: Unable to loction theme engine in module_path:"murrine"

これも最初のと同様で32bit版ライブラリが無い事によるもの、と言う訳で同じくi386オプションを付けてインストール。

> sudo apt-get install gtk2-engines-murrine:i386

もうそろそろ打ち止めにならないかな、と祈りつつ恐る恐る作業をしてみると、大半の操作では落ちなくなりました。少し気分が上向きます。しかし安心するのはまだ早い。特定のコードを入力しようとすると落ちる。再現性がありそうな感じだったのでよくよく見てみると、メソッドの入力候補のドロップタウンリストが表示された所で落ちていました。メッセージは下記。

 Gtk-Message: Failed to load module "overlay-scrollbar"

 はいはい32bit版、というわけで下記実行。

 > sudo apt-get install libgtkmm-2.4-1c2:i386

が、今度はこれでも治りません。色々調べてみると、overlay-scrollbarコンポーネントには割と前から知られているライブラリ内部の不具合があるそうで、この場合は上手くリンク出来ないんだそうです。なので入れても無意味なのだと。これは困りました。色々と代わりのモジュールセットを入れてみましたがやはり改善せず。

これはギブアップか、と諦めかけたわけですが、我慢強く調査を続けていると、これに関連するworkaroundに、ADT同梱のEclipseには描画エンジンに使うブラウザの設定に不整合があり、これを修正するとoverlay-scrollbarのエラーも回避出来るよ、という話が目に留まります。文脈的にはUbuntuのバージョンアップに伴って発生したエラーの話で、本件とはあまり関係なさそうにも見えたし、まさかそんな事で、と眉唾ながら、駄目元で試してみました。ADT内、eclipseフォルダ中の設定ファイルeclipse.iniに下記を追記します。

-Dorg.eclipse.swt.browser.DefaultType=mozilla

するとこれがまさかの正解。同様のコーディングを行っても、正常に候補が表示されるだけで落ちなくなりました。いや、やってみるもんですね。

さらに嬉しい事に、問題はこれで打ち止め。その後は普段行う操作・処理については全て問題なし。落ちません。以前のバージョンの環境と同じレベルまで辿り着けたわけです。途中ではもうこれ泥沼のギブアップコースかと思いましたから、殆ど晴天の霹靂です。いや逆か。何にせよめでたしめでたし。というわけで、開発途中のプロジェクトも程なく無事作成完了する事が出来たのでした。

しかし疲れました。Androidの開発環境はコロコロとしかもドラスティックに変わるし、その割にドキュメント類は全然無いから、不具合に遭ったが最後、抜け出すのが大変です。元々OS自体からしてバンバン仕様が変わるのだから、それに伴って開発環境も大きく変わるのも仕方ないと言えばそうなんでしょう。加えてLinuxの環境もやはり激しく変化するし、その組み合わせを網羅して対応するのが困難なのも分かります。けれども、だからと言ってこう、Ubuntuの最新64bit、それもLTS版なんてポピュラーなディストリですらこう頻繁に動作しなくなるというのは、いくら何でも適当すぎじゃないでしょうか。管理しきれないのなら、利用する外部コンポーネントも安定したものに極力絞ればいいだけの話でしょう。なのにむしろ不安定度は上がる一方ってどういうことなの、と。

Googleがそういう勝手な会社である事は最初から分かり切った話なのだし言っても無駄な事も分かっていますが、それでも文句の一つ二つも言いたくなって当然だと思うのです。ほんと勘弁して欲しいわけですが、かと言ってAppleはAppleでもっと酷かったりするし、どうにかならないのでしょうかこの業界。Microsoftレベルとは言いませんが、プラットフォームのシェアを保有する事業者の責務として、最低限の所は弁えて欲しい、と心から願います。そうであればそもそも今回のようなworkaroundはする必要も無かった筈なのですから。
 
と一頻り愚痴ったところで、今回はこれでおしまい。

9/05/2014

[IT biz] Twitpic、Twitterに商標申請放棄を迫られ閉鎖

あら勿体ない。Twitterと連携する画像アップロードサービスの先駆けとして広く利用されて来たTwitpicが、9/25に閉鎖しちゃうんだそうです。最近は使ってませんでしたけど、ちょこちょこ使わせて頂いた1ユーザとしては残念。

その理由は、商標にTwitterが付けてきたクレームによるとの事です。具体的には、数年前から商標申請していたそのサービス名について、Twitterから申請を取り下げるよう請求があり、それに従わない場合はTwitterAPIを使用禁止にする、すなわちTwitterと連携出来なくする旨警告されたのだとか。取り下げに応じれば、当然商標を登録出来なくなる結果、恐らくTwitterに対し商標権を侵害する状態になるし、かと言って申請を保持すればサービスが事実上運用出来なくなってしまう、という事で詰んでしまったんですね。

これ、一般には独占禁止法とか不正競争防止法あたりに引っかかりそうな話で、訴訟すれば普通にTwitpic側が勝てそうに思えるわけです。しかし、創業者のNoah Everett自身も言っているように、時価10億程度に過ぎない同サービスには、その数百倍以上の規模を持つTwitterのような大企業を相手取っての訴訟に耐えるだけの体力は無いだろうし、仮に勝てたとしても、これまでサードには色々と嫌がらせや締め出しを半ば公然と行ってきたTwitterの事、そのような決定的対立に及べば、何だかんだと難癖を付けて来るでしょうから、事実上サービスが運用出来なくなってしまうだろう事もまた容易に予想出来るわけです。筋論はともかくとして、実際として致し方の無いところなのでしょう。

Twitpicが立ち上がった当初は文字のみだったTwitterも、Instagramはじめ代替や自前の画像投稿機能も完備され、今となっては不要というか競合する状況になったから、という事情はあるのでしょう。その意味では既に使命は終えたサービスであり、その退場は必然と言えるのかもしれません。しかし、Twitterの画像関連機能を長らく補完し、大いにその事業の発展に貢献してもきたパートナーに対し、不要になったからと言ってこのようなやり方で追い詰め、締め出す形で閉鎖に追い込むというのは、あまりに理不尽な仕打ちと言うべきところでしょう。その意味でも残念ですね。Twitterのような信義に悖る企業が相手の場合、元よりTwitpicのように依存的な形では無理があって、Instagramのように連携はするけれども基本対等な事業形態、というのでなければ持続し得ない、という事なのかもしれません。

もっとも、Everett氏は既にGmail類似のスタートアップに軸足を移しているとの事ですから、潮時だと判断しただとか、ある程度は自主的な側面もあるのかもしれませんけれども。ともあれ、お世話になりました。氏の先行きに幸いあれ。Twitterには相応の災いあれ。

Twitter trademark turmoil forces Twitpic to shut down

(追記・その後)

Twitterの公式アカウントで、Twitpicが存続する旨の書き込みがなされたそうです。経緯も理由も何も説明が無いので何とも評価のしようもありませんが、事実なら歓迎したいところですし、あまり問題の無いものであるよう願いたいものです。

(追記・さらにその一月余り後)

結局前回の存続宣言ツイートは誤報で、身売り話は全て可能性が消え、改めて終了する旨宣言されました。新しい終了予定日は10/25だそうです。何という傍迷惑な。

[関連記事 [IT biz] Twitpicとlivedoor reader、相次ぐ軽率な終了宣言とその撤回・再撤回]

9/03/2014

[note] データ用HDDの障害復旧、その顛末

ありふれた話ですが、割と大変だったのでメモ。数日前、私用サーバーで久々にトラブルが発生しました。複数繋いでいるデータ用HDDのうち一台で書き込みの異常な遅延が発生したのです。

即座に当該HDDを外し、チェック。下左図はCrystalDiskInfoの画面ですが、回復不可能セクタ等のセクタ異常が多数。寿命と判断し、移行することにしました。なお、HDDの型番はST2000DM001、Seagate製の2TBのもので、運用期間はおよそ1.8年です。保証期間内での故障という事で、予定通りに行かず残念。もっとも、ほぼ24時間の連続運用、S.M.A.R.T.に記録された使用時間は16346時間ですから、一般向けモデルとしてはそれなりに頑張ってくれたと言えなくもないでしょうけれども。しかし読み書きの総量はさほどでもなかった筈だから、やはり期待は下回ったと言わざるを得ず残念です。


ともあれ。面倒ですが、移行・復旧をしなくてはなりません。予備のHDDは同型のもの(ステータスは上図右)を用意してありましたから、これに正常な部分のデータをコピーすればいいわけです。まずはコピー機(これDo台Master)でトライ。今となっては古い型のコピー機なので、35MB/s位のスピードしか出ませんが、問題のHDDは異常に発熱しており、遅い方が発熱を抑える事が出来て良いかもしれない、と思ったわけです。基盤部の発熱であればあまり意味は無いのかもしれませんけれども、気休め的に。しかし触って火傷するレベルの発熱というのは。。。

2台を繋ぎ、コピー設定にして実行し放置。数時間後、数百G進んだあたりでエラーセクタにあたったらしく、ビープ音が鳴り響きます。このコピー機には、手動ながらエラーセクタのスキップ機能が付いています。ダイヤルとボタンを操作し、リトライとスキップを適当に繰り返すと、十数程度セクタを飛ばした所でコピー再開。やれやれ、とため息を付きつつ、また放置。

そして数時間後、再びのビープ音。1300G弱、およそ2/3弱の辺りでエラーセクタ。また手動で一つずつセクタをスキップします。が、今度はなかなか、というか全然終わらない。数十回やっても終わりません。ここは大きすぎて手動では無理か、とそこで一旦諦め、現在のセクタ位置をメモした上でストップしました。

しかし、2/3程度まで殆どコピー出来た事から、ドライブの基盤やヘッダ周りの機構、各機能自体は正常で、単に途中でエラーセクタが多めに発生しているだけだろうと判断出来るわけで、かつて遭遇し、トラウマともなったWD20EARSのそれとは異なるものと理解して少し安心。なので、ここからは単にエラーセクタを回避して残りの正常部を回収する、ソフト的な対応に切り替える事に。

残り部分のコピーには、linuxのサルベージツールの定番、GNU ddrescueを使用しました。ddrescueを選択した理由は、エラーブロックをスキップしつつ、ファイル(デバイスファイル含む)をバイナリコピーするツールです。途中での中断・再開が可能な事と、任意の領域だけを対象にコピーする機能がサポートされている(当たり前と言えば当たり前ですが)もの、という条件に合致する中で最も標準的に使われるものだったからですね。

サブの各種テスト等作業用デスクトップPCにコピー途中の当該HDD2台を繋ぎ、Ubuntuを立ち上げます。当該HDDのデバイス名は、オリジナルがsda、コピー先がsdc。これについて、既にコピーが完了している1300G弱を除く700G強の領域を対象にコピーをかけたのです。コマンドは下記。

# sudo ddrescue --force -r 3 -i 0x12B04BE0000 -o 0x12B04BE0000 /dev/sda /dev/sdc rescue_sda_sdc.log

なお、各オプションの意味は次の通り。--forceがデバイス全体を対象にする場合の実行オプションで、誤ってデバイスを破壊しないためのものですね。-rはリトライ回数。デフォルトでは0ですが、これは不要だったかもしれません。-iはコピー元側の開始地点、-oはコピー先側の開始地点。コピー機でエラーセクタが発生した箇所の直前の同じ場所を指定しています。後ろ3つはコピー元、コピー先、ログファイル名。

何せコピー先は完全に上書きされてしまいますから、万が一にも間違いのないよう、ファイルへの一部書き出し・比較等の動作テスト等も繰り返し行い、コマンドも入念に確認した上で実行。

すると、当然ながら即エラーセクタにぶち当たり、リトライと諦めてスキップ、を繰り返しながらえっちらおっちら進みます。100K強程スキップした後、コピー再開。大体45MB/s位で快調に。

それからおよそ一時間。もう大丈夫かな、と思いきや、さにあらずで再びエラーセクタ。今度はなかなか終わりません。スキップして再開した、と思ったらまたすぐエラーセクタ、を断続的に繰り返します。それでも延々と待っていると、総計6MB程スキップした後にコピーが再開されました。そこからは最後まで問題無し。被害の範囲が確定され、その程度か、と一安心です。

なお、ddrescueの処理はまだ続きます。1度目のトライでは大雑把な処理、すなわちやや大きめのブロックでリトライ無しで行うらしく、抽出されたエラー箇所でのリトライと細分化しての個別処理をそれぞれのステップに分けて再度行うのですね。それぞれ、"Trimming failed blocks..."と"Splitting failed blocks..."というメッセージが出ます。で、Splittingの方は何時間も変化しない状態が続いたのでその途中でCTRL-Cを入れて打ち切りました。最終的には下記のような状態です。

<ddrescue打ち切り時のステータス>

rescued:   716122 MB,  errsize:   1778 kB,  current rate:        0 B/s
   ipos:     1411 GB,   errors:      93,    average rate:   29147 kB/s
   opos:     1411 GB,    time since last successful read:    27.9 m
Splitting failed blocks...

結局、エラー領域のサイズは1778KB、1段階目の1/3以下にまで縮小しました。エラー回数は93回。対象領域サイズ700GB超と比較すればよくここまで抑えられたと言うべきでしょう。

これで、エラーでコピー出来なかった領域がファイルシステムの上位管理領域にかかっていなければ、いくらかの末端ファイルの破損で済む、というわけです。

で、若干どきどきしながらサーバに再接続します。当然ながら入るディスクチェックを見つめることしばし、無事起動してくれました。いや、データドライブなのだから元々起動には関係ないのですが、その後急いでファイル類を調べて見ても、ディレクトリに欠損は見られず、普段アクセスするファイル類にも特段の欠落は見られません。

というわけで、これでようやく作業完了です。最初の不具合認識からここまで、およそ丸2日。精神的に疲労しましたが、概ね復旧出来てめでたし。

もちろん、最初からRAIDを組んでおけばこんな苦労する必要もなかった筈なのですが、ドライブは複数あるわけで、その全てにRAID1とか5とか6となると、常時十数台のHDDを運用する羽目になるし、個人のサーバとしてはコスト的に厳しいところです。ということで止むなくこういう、障害、その兆候を認識したら直ぐに復旧に移る運用にしているわけなのですが、やはり綱渡りですね。システム系はバックアップも割とマメに取っているのですけれども、その範囲や方法を少し見直した方がいいのかも、と反省しきり。しかしこれだけストレージのサイズが大きくなると、バックアップを取るのも時間がかかりすぎるし、どうするのが適切なのか、悩ましいところです。さしあたり、優先度の設定が必要ですかね。

ともあれ疲れました。 やれやれです。

<その後>

移行後のドライブの動作自体は特に支障も無いものの、結構ファイルが消えている事が判明しまして。エラー領域が途中のリンクに引っかかってたようで、幾つかのフォルダ中に入れてあったファイルのうち、1/10位の消失が確認されました。当該フォルダのファイル数は10000位でしたから結構な数で、消失データは再度作成可能なものだった事は不幸中の幸いではありますが、とても面倒で困りました。どうするべきか、悩ましいところであります。ちなみにファイルシステムの形式はext4で、FAT系やNTFS等に比べればこういう大量消失は起きにくい筈だったんですけど。何にせよこの種の消失は検知し辛いものですから、ここ以外にも消失がある可能性も否定出来ません。困ったものです。

なお、外したドライブは後日RMAしました。
[note] SEAGATE製HDDをRMA

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[note] デジカメにバッテリー等の不具合連発

暑い最中、冷や汗をかかされてしまいました。このところ使っていなかったカメラをメンテしようとしたら、そのうちの一台、NikonのP6000で2つほどトラブルにあったのです。

トラブルのうち1つ目は、レンズカバー(レンズ前で電源ONOFFに合わせて開閉する保護用のシャッター部分)の上側の羽根が、何処かで衝撃が当たったのか外れかけていました。当然そのままでは使えません。これは分解コースかと青ざめました。が、症状の確認がてら指で少し押してやると運良く羽根が元のところにハマり、復旧。胸を撫で下ろしたのです。

がしかし、これで終わりではありませんでした。電源スイッチを押しても電源が入らないので、バッテリー切れか、いやでも満充電にして置いた筈だけど、と訝しみながら予備に入れ替えようとすると、本来ならラッチを外せば飛び出す筈のバッテリーがスロットに張り付いたかのようになって取り出せません。

これがトラブルその2です。中は見えずとも原因は幾つか想定出来るわけで、再び青ざめます。膨張か、染み出し固着か、はたまた加熱から溶けて固まったか。いずれにせよ放置は出来ません。悪い事は重なるものだ、とまた冷や汗をかきながら、二次事故を起こさないよう、工具を使って慎重に引きずり出すと、やはりというか、下図のようにバッテリーが膨張していました。
下図は正常なバッテリー(右側、互換品)と並べてみたものです。分かりづらいですけれども、中央少し上側の文字が湾曲しているのが見えるでしょうか。
バッテリーの膨張、というのは想定された中では一番軽い症状で、正直胸を撫で下ろしました。漏洩や溶融まで行くと本体が道連れになるのは無論の事、火事の危険等もありましたから。

今回膨張したバッテリーはニコンの純正品なんですけれども、さすがに経年劣化には勝てなかったという事でしょうか。製造からは5年以上経ち、当然ながら保証期間はとうの昔に過ぎてます。しかし、この手の障害は発火や爆発の危険もありますから、言えばメーカーで対応してもらえるのかも知れません。ただ、それはそれで面倒ですし、さてどうしましょうか。

ところでこのP6000、元々中古で入手したものですが、それなりに強い愛着があって、出来ればこれからも長く使い続けて行きたいと思っているのです。だからこそあまり使わなくなった今でもこうして不定期的にメンテも続けているのですが、しかし長く使い続ける程、今回のような問題が発生する可能性は高くなるんですよね。当たり前の話と言えばそうですが、やはり化学物質たるバッテリーの経年劣化に対する不安定性はどうにもネックだと痛感する次第です。あと基盤のコンデンサーとかも。しかし対策の立てようもなく、どうにもなりません。中国製は潜在的にエラー率が高い事は分かってはいますが、それ以外なんて殆ど無いも同然ですし。困ったものです。

とりあえず、予備のバッテリーを調達しないと。eBayはロストが続いたから不安ですが仕方有りません。諦めて祈るとしましょう。あと、これ以上悪い事、具体的には予備バッテリーが爆発したりしませんように、とも。

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