8/14/2014

[law] 米ミズーリの警官による黒人少年射殺事件、人権蹂躙国家としての米国

米Missouri州St.Louis近郊のFergusonで起きた警官による黒人少年射殺事件、米国の最も醜悪な面が如実に曝け出されているようで。

当地の警察は当該警官の氏名等も含めて事件の詳細を一切公表しておらず、それが事態の際限ない悪化を招いている事は明らかなわけですが、被害者の友人はじめ目撃者の証言等を中心にまとめれば、事の次第は以下のようなものだそうです。

被害者は18歳の黒人少年Michael Brown、時刻は8月9日土曜の午後2:15頃。場所は友人宅前の車道上。被害者がコンビニエンスストアから友人宅へ戻る途中、少し手前で出迎えた友人のDorian Johnson(22)と合流し、友人宅へ向かって車道を横断していたところ、パトカーに乗った警官がそれを見咎めて歩道を歩けと命令したのが発端。

その際、二人は警官に対して目的地はすぐそこだ、と言い、理解されたものと判断して横断を続けたところ、パトカーが二人に急接近し、ドアを開けた警官がBrownの首等を掴み、パトカー内に引きずり込もうとしたところ、Brownは抵抗し、Johnsonと共に逃げようとします。すると警官は銃を取り出し、撃つぞと叫んだ後、逃げるBrownを背中から撃ったと。撃たれた後に両手を挙げて振り向き、銃は持っていないと叫んだBrownに対し、警官はなおも数発に渡り銃撃を加え、Brownはその場で殺されたと。Johnson曰く、"Brownはまるで獣を狩るように撃たれた"との事です。

これらは友人らの証言によるものですから、記憶違い等による誤りもあるのかもしれません。しかし、両手を挙げたあたり等の後半部分については複数の証言が得られているそうですし、前半部分も特に詐称を疑われるべき点は認められませんから、おそらくは概ね間違ってはいないのでしょう。あるとすれば、警官が発砲に至るまでのBrownとのやりとりの部分位でしょうか。なお、警察はパトカー内で争い、Brownが銃を奪おうとした等としているそうですが、それを裏付ける第三者の証言は無く、今の所誰にも真実とは受け止められていないようです。

いずれにせよ、後半部分、特に両手を挙げて非武装かつ無抵抗の意志を示しているBrownに数発に渡って銃撃を加え、従って明らかな殺意を以って射殺した点に疑問の余地はなく、2人による警官に対する何らかの暴言や暴力行為の有無等の相違によらず、到底正当化する事の出来ない殺人である事は間違いないでしょう。

従って、当該警官は殺人罪の刑法犯として、当然かつ速やかに司法の裁きを受けるべきところです。にも関わらず、逮捕・起訴はおろか氏名の公表すらされないとあっては、それで事態が収まると思う方がどうかしているというもの、デモ等の抗議活動が拡大の一途を辿る続ける現在の事態は、むしろ当然の成り行きと言わざるを得ません。

まして、Missouri州は元々全米で最も人種差別の酷い地域と言われているわけで。そして、当該警官の人種は不明ですが、地区の警官53人中の50人までが白人という、如何にも当地の人種差別構造を象徴するかのような人員構成の点から、白人である事が確実視されています。これでは、権力を持った白人による黒人に対する理不尽な殺人、またその権力による不当極まりない隠蔽として、かつて起こった同様の事件と比較するまでもなく、黒人社会中心に広く激しい怒りが広がるのもまた当然の帰結というものです。

実際、現地では軍隊と見紛うばかりの重装備に身を包み、装甲車まで持ち出した武装警官がデモ参加者に対しゴム弾や実弾による射撃、催涙ガス噴射等を盛んに行い、数十人以上を超える逮捕者やそれを遥に超える負傷者を出しているそうです。何処の紛争地帯だというのでしょう。とても民主主義を掲げる法治国家の所業とは思えません。あまつさえ、その逮捕者の中にWashington PostとHuffington Postの記者各一名ら報道機関の人間までもが含まれていたとあっては、もはや中国やロシア等の権力・警察主義による人権侵害国家のそれと何ら違いのない、無法地帯と呼んで差し支えないものと言えるでしょう。

一応、事態を重く見た連邦政府もFBIを介して当地警察機関に介入し、また市民権利団体も当該警官の照会を裁判所に請求したそうですから、早晩当該警官も公表され、本来の司法手続きに委ねられるのでしょう。しかし当然ながら起こってしまった事は戻せません。ここまでに曝け出された、その人種差別に基づく、醜悪極まりない警察・社会ぐるみの人権蹂躙、差別を容認し、それによって人命をも容易に奪って恥じもしない社会構造の有様には、色々と建前は立派な米国だけれども、中身はやはり何も変わっていないのだなと、改めて冷めた思いを抱かざるを得ないのです。

本件と直接には関係ないですけど、Hillary ClintonとAndrew Cuomoの米民主党次期大統領候補筆頭の2人が相次いでIsraelへの支援を表明し、或いはNetanyahuと称賛を交わしさえした件にしろ、弱い者の人命を軽視というか、弱者は殺されて当然だし殺しても構わない、というアメリカ人の傲慢な価値観を立て続けに見せ付けられた気がして、その意味でもとても気分が悪いですね。Yazidisへの支援なんて、どの口が言うのかと。

This Is The Version Of The Ferguson, Missouri Shooting That Police Don't Want You To Hear
Ferguson's Police Chief Freaked Out After Finding Out His Cops Arrested Two Reporters

その一週間後、ようやく警官の氏名が公表されした。Darren Wilson、白人との事です。しかし警察のやり口はますます酷くなるばかりで、目を覆いたくなります。

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