5/17/2014

[biz] LCC運行不能、破綻した事業設計の必然

ピーチ・アビエーションとバニラエア(旧エアアジア)の国内LCC両社が時を同じくしてパイロット不足を理由に、それぞれ数千、数百件にも上る前代未聞の大規模な運行休止に追い込まれた件ですけれども。元々、管理や運行保証等、既存の通常キャリアでは絶対に削れない所を削る、禁じ手的な運営形態を取る事で成立させていたものなのだから、全面的にリスク耐性のマージンがゼロ同然である事も当然の事と理解していましたが、それでも、これだけは起こしてはいけなかっただろうと、強く遺憾に思うのです。

両社とも、本件の釈明としては、病欠者、退職者の増加、また補充採用の不調を挙げているそうですけれども、今更何を言っているのかと。元より、人員を自前で育成せず、他社を退職したパイロットの再雇用者等を中心に据える事で人件費を抑制するシステムを取った時点で、その結果として高齢に伴い健康その他の事由によって休職や退職が通常キャリアに比して多く発生する事は殆ど必然の結果であり、容易に予想されたところです。

そして、その補充となるべき他社の退職者自体も、JAL、ANA等大手キャリアでリストラが行われなければ得られないわけで。発足時は偶々JALをはじめ各社で大規模なリストラが行われていた時期だったために確保が可能でしたが、それは一時的な、特殊な状況であり、とても継続的な発生を期待し得るものではない事もまた明らかでした。しかるに大手キャリアの事業が危機を脱し、職を求めるパイロットも減れば、LCC各社が人員を自前で育成出来ない以上、追加補充の手段は他社からの引き抜き以外にありません。そして、それには当然ながら他社より高い待遇、報酬の提供が必要になります。加えて、その事業の不安定性等様々なリスク要因が、被雇用者たるパイロットからすれば忌避の要因となるだろう点も考慮すれば、むしろ報酬に相当の上乗せも必要になるだろうし、予備の人員も多く必要になる結果、低コストどころか割高になって当たり前、そこに低賃金で募集をかけたところで応募者が来るわけもありません。

要するに、他社より低賃金でパイロットを雇用する構造は、初めから破綻が明白なところでした。その程度の分析予測すら出来なかったのか、予測しながら漫然として放置したのか。どちらにせよ、容易に予想出来、対処の余地も十分にあったにも関わらずのこの有様、結果として航空事業者としての最低限の義務たる運行すら不能な事態にまで至った以上、航空事業運営の資格を致命的に欠く不適格事業者と断ぜざるを得ません。

粗末なサービスも、融通の効かないシステムも、手間のかかる搭乗手続きも、運賃の安さと引換であれば許容されるところでしょう。しかし、運行不能だけは許されません。今更になって大手キャリアからパイロットの融通を受けて修正を取り繕ったとしても、問題が事業そのものの基本構造の破綻に起因する以上、一時しのぎに過ぎないでしょう。従って今後も同様のトラブルが慢性的に続くだろう事も殆ど確実、とあっては、もはやこれから先、利用者からの信頼を獲得する事も期待し得ないものと言うべきでしょう。もっとも、元々の信用からして皆無に等しかったのだし、実質的には変わらないと見る事も出来るかもしれませんけれども。しかしそれは、今後、事業として成長はおろか安定すらも得られない事を意味します。その結果、各社とも未だ多額の赤字に沈むその不採算性がさらに悪化し、早晩破綻する可能性も大きく高まる事でしょう。その種の先行きを懸念したところで、もはやどうしようもないのでしょうけれども、やはり極めて遺憾な事には違いないのです。

LCC実態…弱かった「採用競争力」 パイロット不足で欠航相次ぐ