5/09/2014

[biz law] IBM徴税訴訟、地裁にて国側全面敗訴

そういえばそんなのあったっけ、と思って記憶を辿ってみれば、2010年、それも2009年度で4年以上前の事。正直もう忘れてましたよ。IBM持ち株会社IBMAPHと子会社間の日本IBM株の自社株取引による損失を連結相殺した事が税逃れとして国税庁がIBMAPHに約4000億もの申告漏れを指摘し、IBM側が反発して訴訟になっていた件、ようやく東京地裁の判決が出たそうで。結果は、IBM側の全面勝訴。処分取り消しです。

外野の印象としては、国税の主張は当初から合理性を欠いていたように見えていましたから、この結果はむしろ当然のようにしか思えません。自社株取引は完全に合法な行為ですし、連結相殺はむしろ会計上の義務ですから、問題は損失額の根拠となる自社株の値付けの妥当性だったわけですけれども、それもIBMは非上場につき原則として当事者の自由でした。そして、当時は企業の価値は軒並み暴落していて、従って多額の評価損は出て当然であり、むしろそれがない方が粉飾を疑われるような時期でした。後に自社株取引には制限が設けられましたが、それは逆にそれ以前の行為は禁じられておらず、合法であった事実の証左に他なりません。結局、IBMの意図はどうあれ、客観的に見て、本件の主要な要素のうちに違法性を問う根拠は元より殆どなかったわけです。今改めて見直してみてもその認識に変わりはありません。

額が額ですし、当時はリーマンショック直後で法人税収入が激減していた時期なので、国が血迷って暴挙に及んだ事も理解出来なくはないですが、馬鹿な事をしたものです。無論本件を通じてIBMが被った損害は相当なものになりますし、仮にこれがこの種の争訟に長けたIBMでなく、官庁の処分に弱腰な国内企業であれば、その無理を通っていた可能性は低くなく、その結果、事業が破綻し多数の失業者が生まれていたかもしれないわけです。到底看過すべからざる犯罪と言ってよいでしょう。本件に関わった国税関係者は、法的に責任を問うことは困難でしょうけれども、全員職務不適格につき罷免される程度の報いは受けなければ不釣り合いというものだと思うのです。

課税処分 IBM側が勝訴、納め過ぎ1197億円取り消し
国税指摘の4000億円申告漏れ訴訟、IBM側が勝訴 東京地裁

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