2/12/2014

[biz] プリウスに回路破壊の不具合でリコール190万台

フィットHVが悲惨な事になっている中、張り合うように現行プリウスが国内100万台、海外90万台計190万台のリコール。原因はトヨタによれば制御回路の過電流による破損で、それが起こると極端な低速や走行不能等に陥る、と。フィットに負けず酷い不具合です。

まだ詳細は報じられておらず不明ですが、ソフトが原因の過電流で破損する回路と言えばアナログ部分、具体的にはアンプとかレギュレータ、インバータの内部あたりでしょうか。本事象発生時には警告ランプが付くらしいですし、それなりに対策はしてあるんでしょうけれども、それでも電力量が大きいだけに、中途半端にブレークダウンしたりしたら火を吹きそうで怖いですね。

発生件数は3年で300件超だから年あたり約100件。いくら超の付く人気車種で台数が多いから自然と数も多くなる、とは言っても尋常な数ではなく、ホンダのそれよりは若干マシですが、それがなければ確実に前代未聞というべき深刻な不具合なわけで、ホンダとトヨタ、国内メーカーのトップ2社、それもそれぞれの看板車種が揃ってこの様という事態を目の当たりにしては戦慄も禁じ得ません。

もっとも、ホンダの凶報の直後たるこの時期にリコールに踏み切ったというのは、必ずしも偶然とは考え辛いところです。本件のようなリコールが事業に与えるネガティブな影響は非常に大きく、トヨタとしても出来る限りその緩和を図りたいところだったでしょうし、ホンダの件は隠れ蓑としてうってつけだったと考えるのが自然でしょう。おそらくはフィットHVのDCTの設計不良もトヨタの方では早くから承知していて、それが決定的に顕在化するタイミングを図ってもいたのではないでしょうか。そうであれば、元よりホンダの自爆ですけれども、それを逃さず利用してくるあたりはさすがトヨタ、黒いです。

ところで、対象の発売・製造時期が2009年からな一方で障害発生の報告が2011年以降なのは、やはり回路の劣化が要因で、その耐用年数が2年位と解釈すべきところなんでしょうか。だとしたらいけません。一般的な車の耐用年数から考えて、最低でも10年は保たなければならないわけで、これでは設計自体に欠陥があるものと認識せざるを得ないところです。しかるに、今回はソフトの変更で対応するようですが、一般論としてアナログ回路の劣化をソフト側の調整で防ぐ事は困難な上に、ソフトの変更は往々にして新たな不具合に連鎖するものなわけですから、これから先もユーザー側には不安が付き纏い、しかもそれは容易に拭えないだろう事になってしまいます。そうであれば、本問題はプリウスに限らず、モーター駆動車一般も同様に懸念せざるを得なくなってしまうわけで、無論発覚しないよりは良いんですけれども、暗鬱たる先行きが想像されて、色々とよろしくありませんね。仕方ない話なんでしょうけれども。

要するに、電子制御への傾斜を強める一方だった自動車産業が、ソフトを中核に据える方式一般に内在する構造的問題すなわち、その障害発生率の高さ、完全性確保の困難さが、ついに顕在化したものと捉えるのが妥当なのでしょう。新規技術は往々にして複雑性の上昇を伴いやすく、そして複雑性を高めるほど、不具合の発生可能性、また予防困難性も必然的に高まるし、犠牲になる要素も多く伴うものです。それが許容可能か否かが問題なのですけれども、本件のような自動車の走行制御においては走行不能等の深刻な、到底許容出来ない不具合に直結してしまうのですね。殆ど必然のように。

新型車の宣伝には、いつも華々しい売り文句が並びます。しかし、果たしてそれは事実進歩と言えるのか。単なる目くらましや化粧的な変更に過ぎないものも少なくないようにも見えます。事業的には嘘でも詭弁でも改良を装う必要がある事は理解出来ますが、少なくとも本件のような帰結になってしまうのでは本末転倒と言う他ありません。各社には、事業的には今更引き返せない、誤魔化さなければ、等と脊髄反射する前に今一度、自らの行っている事業の持つ意味、あるべき姿、起こしてはいけない結果等をよく踏まえられる事を願いたいところです。特に、ユーザーの生命が懸かっている事を思い出して冷静になるべきでしょうね。本件のような現在の話もそうですが、将来の話も。自動運転とか無謀そのものな話が平然としかも直近のロードマップに乗っているのを見ると寒気がするのですよ。

プリウス100万台リコール 現行モデルの全車対象

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