9/25/2013

[biz] JR北海道の不備放置発覚を巡る今更感

JR北海道の設備保全不備の件、なかなか落ち着きませんね。

そもそもの話、JR北海道がその他地域と比較して事業者に責任があるだろう事故の頻度が突出して高い事は周知の事実だったのであって、果たして結果にはそれ相応の原因が当然にあった、というだけの事なわけですけれども。

そして、本件事故件数の多さ、その原因が、その低採算性、すなわち超長距離の過疎路線を多数抱え、従って保全を十全に行うだけのリソース、特に資金の支弁がままならない地方路線の構造にある事も殆ど自明なわけで。都市路線と同様のメンテなんて元より出来るはずもないし、今回不備を洗い出したとして、当然に求められるだろう当面の修繕処置を実施出来るのかすら疑問に思われるところです。

と言っても、行政にしろマスコミにしろ、大々的に表沙汰になってしまった以上は見て見ぬふりも出来ませんから、この種の瑕疵に対する昨今の処理の例に倣い、概ね問題が払拭されるまで「毅然とした」対処をせざるを得ない結果として、現状があるという事なんでしょう。地獄の釜の蓋が開いた、と言うと大げさ過ぎるかもしれませんが、それなりの泥沼にはなりそうで、また規模は違えど同様の過疎路線を抱える他業者への波及もあり得るでしょうから、行政や事業者は概ね危機感を抱いているのかもしれませんね。そうであれば、それは如何にも本末転倒な話ですけれども。

ただ、そもそも制度設計がまずいと言えばその通りですが、だからと言ってどうすれば良かったか、どうすれば良いか、と言うとこれまた難しい話なわけで。不採算が自明でも路線は維持しなければならない、その背反を前にした現実的な対応の結果が現状なのですから、単に非難すれば改善されるという性質の話ではない事もまた明らかです。要するに金、採算性の問題なわけです。当たり前ですが世知辛いですね。

採算を改善する方法には、原則として収入増、支出削減、撤退の3択しかありません。その性質上、路線を廃止するのは困難、というか問題になる路線の範囲が広すぎてその選択はあり得ませんし、コストの削減はそもそもそれが問題の原因なのだからこれもあり得ません。従って、必然的に収入を増やすより他ない事になりますが、売上増は到底望めない、となれば、やはり資金を外部から供給するより他ないのでしょう。そしてその手段はと言うと、JR北は一応民間の営利企業で、より酷い経営状態にある事業者は他にも多々あるのだから、公的な援助を主体とするのは困難でしょう。結局の所、利益率の高いJR東あたりから支援を回す位しかないのかなとも思われるわけです。それはそれで、どういう名目で回すか悩ましいかもしれませんが。

ともあれ、おそらくは「思ったより遥に多い」不備が明るみに出るだろうこれからが本番です。他人事のような非難を加えている国交相はじめ政府関係者の方々には、当事者としての責任ある対処が求められるところですが、果たしてそうなるかどうか。元よりJR北の自業自得な面も強く、かつそれが前面に出る形の発覚の仕方をした以上、多分にこのまま全責任を被せて他人事、な態度に終始するかもしれませんが、それだと収束が覚束ないわけで、当該政府関係者以外の誰にとってもよろしくないんですよね。さて。

-----追記

幾つかJR北の財務面の現状を詳しく解説する記事を読ませて頂きました。例えば下記リンク先の記事によれば、元々収入の数割、数百億の超赤字を抱えており、それを国とJR各社が債権の利息として実質的に補填してる形とのこと。思ったよりさらに数段やばい感じですが、どうすんでしょう。この補助をさらに増やすとなると、相当に無理がありそうですけれども。

JR北海道、赤字300億でも倒産しないカラクリとは 

そして当然のように他路線でも同様の不備放置発覚。まずはJR四国にて。

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