3/26/2012

[note] 壊れた古いキーボードを修理

数少ないbuckling spring方式の日本語キーボードという事でもう十年以上も前に購入して一時期好んで使用していたものの、突然複数のキーが反応せず入力不可能な状態になって、しかし捨てるには忍びなく長きに渡って保管していたIBM製キーボード5576-C01ですけれども、倉庫のキーボードの総メンテ実施のついでに時間を確保してその修理に挑戦してみました。結果としては概ね成功し、めでたく数年ぶりに5576-C01にて本記事を執筆しているのであります。buckling spring機としては評判も良いとは言えず、チャタリングも起きやすい本機ですけれども、その懐かしいタッチに何とも言い難い喜びを禁じ得ません。

その修理の内容と手順の概要は下記の通り。

1. 分解・故障原因の調査
何はなくともまずは調査。というわけで分解です。裏面上部のネジ4箇所を外した後、割れないように注意しつつ手前側をパキッと言わせて外します。んでケーブル類を外して鍵盤部を取り出し、キートップを全て外してから裏の鉄板面に点々と並ぶプラスチックのリベットをカッターで切り落とし、鉄板を分離。するとメンブレンシートが現れます。所々変色しているけれども概ね綺麗。綺麗に見えるけれども断線しているんだろう、と言う事で、テスターでちまちまと断線箇所を探索し、とりあえず2箇所発見。確かに入力出来ないキーに繋がる線だ、という事で、とりあえずこれを原因と確定。

2. 修理・再組み立て
特定した断線箇所に導電塗料を塗って修理。抵抗値の低い銀ペーストのコンダクティブペンを使うのがベストなのだろうけれど、エレキギター用のカーボン塗料の方が入手が容易かつ安価、抵抗値は若干あるけれど本件にはおそらく十分なのでこれで代用する事にする。溶剤が揮発性なので、缶を振ってから開けてすぐ必要量を筆に漬け、素早く蓋を閉じた後断線部に塗る。さほど厚く塗った訳でもないので、数分間程待っていると乾く。しかるのちに導通チェック、するとめでたく回復を確認。

さて問題はここから。当然組み上げ直すわけですが、リベットを削ってしまったので、鉄板を戻すためのネジ穴を開ける必要があるんですね。先達の情報を参考にしつつ、メンブレンシート等の位置合わせのためにリベットの山は半分程残しておく事にして、あと中央の丸い山はシートの位置合わせに重要っぽいのでこれも残しつつ、適当に半分程のリベットの所にドリルで2mmの穴を開ける。もちろんこの時は事前にメンブレンシートやゴムシート、スプリング等の部品は外しておく。穴を空け終わったらスプリングをちまちまと並べ、スプリングが浮いてズレないよう注意しつつゴムシートとメンブレンシートも順に戻し、鉄板も被せる。しかるのちに2mmx8mmのネジでネジ止め。ネジ止めの時はスプリングがズレないよう、あらかじめ四方をクリップでとめて作業。気の抜けない時間が続くけれども、汗を滲ませながらなんとか完了。

んで、基盤とケーブル類を接続して導通チェック。まずは反応しなかったキーだけ戻して押してみる。するとめでたくOK。と言う事で他のキーも戻し、ケースも戻す。

3. 動作チェック・追加修理
これで完了、と思いきや、OSのubuntuがエラーを吐く。色々と調べてみるとトラックポイントのケーブルを外すとエラーが出ない。トラックポイントは使わないので外したままにして、さらにチェック。すると今度は両側のCtrlキーが応答しない。果てしない空しさを覚えつつ、苦労して組み上げたネジ等を全て分解し、メンブレンシート上のCtrlキーの繋がる配線をチェック、すると上部に断線発見。再び導電塗料を塗り、乾くのを待って再び組み上げ。今度はCtrlも問題無し。トラックポイントは相変わらずアウトな様子だけれども、キーは全てOKなのでこれで完了。

というような次第で、丸一日かかっちゃいましたよ。ええ。あー疲れた。後戻りがあったのは痛恨でしたけど、仕方ないところでしょうかね。ともあれ成功して良かったです。カシャカシャと鳴り響くキーの音も感触も昔と同じで、叩いていると色んな思い出が蘇って来ます。もう戻らないあの頃をしのびつつ。

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後日、続けて2本ほど富士通のキーボードも修理しました。5576-C01に比べると格段に容易。
[note] 古いキーボードを修理・その2