12/07/2011

[biz] リチウムイオン電池採用EVの地雷性

折しもCOTY受賞に合わせた日産リーフの販売キャンペーンが始まって、雰囲気的にはようやく一般への普及が始まったかのように見えるリチウムイオン電池搭載車ですけれども、違和感というか、はっきり言えば見えている地雷源のようにしか見えないわけで、その要因をちょっと整理、という程ではありませんけども、つらつらと。

まず第一に、先日GMのVoltで問題になった発火・爆発等安全面の問題点ですね。ノートPCや携帯電話ですらしばしば顕在化する本現象が、比較にならない程の大容量かつ過酷な使用環境に晒される自動車で起こらない筈はないわけで、その確率はわかりませんけれども、一定の割合で危険な個体があるだろう事は間違いないんですよね。これは文字通り地雷と言えるでしょう。

第二に、耐用年数とその更新時のコストの問題があります。現状、リチウムイオン電池は、およそ500サイクルから1000サイクル、どんなに良くても2000サイクルの充放電で少なくとも数割以上の容量低下を起こす、従って、毎日一回ないし二回程度充電するとして、平均して2年から3年程度で寿命が来る筈なんですよね。この辺は携帯とかノートPCとかの場合と同じです。只でさえ余裕の無い走行距離がさらに減ってはどうにもなりませんから交換という事になるわけですけれども、その際に必要となる交換用のリチウムイオン電池、これが高い。現行リーフだと容量は24kWhと言われますけれども、それに1kWhあたりおよそ10万から20万と言われる電池の単価を乗算すると、240万~480万になってしまうわけです。しかも昨今はリチウム等の原料が高騰傾向にありますから、値上がりする事はあっても値下がりは期待出来ませんし、ランニングコストが無茶苦茶な事になる事は確実なわけで。今の所、日産は5年は交換不要とのスタンスを取っている様子で、交換の費用は検討中として公表もしていませんが、要するにそういう事実は消費者には到底受け入れられないし、メーカーの方で保証するにも負担に耐えられない事は明白だから、売るためにまとめて隠蔽している、という事なんでしょう。であればそれは明白な消費者への説明義務違反であり詐欺なわけで、地雷に思えるのも当然ですね。

第三に、ってもう蛇足な感じですけれども、充電環境及び充電時間の問題です。駐車場に電源が必要になるし、充電中に風雨に晒すわけにもいきませんから、賃貸や屋根の無い駐車場では事実上保有出来ないわけです。それをクリアして保有したとしても、EVで走行中にバッテリーが消耗して充電が必要になった場合には、急速充電が出来る場所は一部ディーラーの営業所位にしかありませんし、充電には急速充電器でも最低15分から30分、比較的安価な機種だと1時間程度が必要になってしまうんですよね。PHVならこの点に関しては致命的な問題にまではなりませんが、そもそもプラグインが無意味って話になってしまいますし。

もう十分ですかね。改めて見ても、やはり話になっていません。百害あって一利あるかどうか、な、お金持ち専用の高い玩具ってところでしょうか。無理してこんなの売ろうとする感覚がどうにも理解し難いところです。客の事、というか売った後にどうなるかとか全然考えていないんでしょうねえ。現実的に色々と整合しておらず、結局受け入れられずにコケるのは少し考えれば明らかなのに、何故か独り善がりな建前に固執して突撃した結果玉砕、というのは、特にここ10年位の日本メーカーでは残念ながらごくありふれた話ですけれども、いつまで経っても全く成長しない。失敗は成功の母、というのはもう嘘になってしまったんですかね。困ったものです。

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