2/15/2017

[biz] 時間切れ濃厚な東芝の惨状に改めて戦慄

見るに耐えない惨状を呈している東芝の件ですけれども。色々無茶なスケジュールで事を進めようとしていた上、ここに来ての2016Q3決算の延期は致命傷だと思うのです。しかもリスク要因も増えて下方修正の可能性ありとか。。。これはもう間に合わないんじゃないでしょうか。

今現在の東芝の目標というか再優先事項は、今年度決算すなわち2017年3月末における債務超過回避にある事は明らかなところ、既にQ3において少なくとも2000億程度の債務超過が確定している以上、あと40日強でそれを解消するだけの大規模な資本調達が必要になるわけです。

その手段は、(事実上)半導体事業への外部資本導入しか残されていません。そしてその実現のためには、同事業の分社化すなわち新設分割の手続を踏む必要があります。同社における同事業の規模比率からして、簡易の手続による事は出来ませんし、株主総会の特別決議等を得る必要があります。また、設立会社へ承継させるだろう工場を含む資産等の内容から、債権者の保護に関する手続も必要になるだろうところ、その手続には公告等のため計画策定から最低でも1ヶ月以上の期間が必要になります。

で、その策定すべき分割計画には、資本金や承継する資産・人員等の設立会社自身の構成は無論の事、株式の割当すなわち外部の出資の内容も含まれます。出資を受ける相手を選定し、割り当てる株式の内容、出資比率、一株あたりの出資額、役員を受け入れるならその構成等の条件をも固めなければなりません。従って、3月末までに手続を完了させるには、それらの膨大な内容の決定を2月中に、すなわち残りわずか2週間の間に完了させなければならない、という事になります。承継させる全ての債務を東芝本体が連帯保証するというなら債権者保護は省略可能ですが、それでも株主総会決議の2週間前まで、すなわち3月半ばがデッドラインとなります。なのに、延期された決算の発表日時は3月14日という。

そもそもこんな質的にも規模的にも重大な案件、しかも将来の譲渡も見据えた新しい協業の相手や条件等までもを短期間で選定・決定する事自体が困難極まりない話です。無謀とさえ言えるでしょう。そこに加えて、その検討及び判断の前提となる直近の決算すら確定出来ていないというのでは、出資を検討している相手方候補各社も不確定性が大きすぎて決めようがないだろうし、率直に言って話にならないと言わざるを得ないと思うのです。

そのリスクをカバーするとでも言うつもりでしょうか、将来の過半数の譲渡にも言及されていますが、諸々の規制絡みで今年度末までに出資可能な範囲は20%未満である事に変わりはない以上、相手方にしてみればあまり意味はないでしょう。むしろ、この段階でそんな事を言ったらより一層足下を見られて、あるいは一気に丸ごと乗っ取られかねない話だろうわけで。

それで足下を見られまくった条件で半導体事業を売り飛ばし、債務超過を回避したとして、何の意味があるというのでしょうか。残るのは、未だ底の見えない泥沼と化した原子力事業と、成長余地に乏しいインフラ事業と、他社に明らかに劣る脆弱なITサービス事業位です。もはやその損失を補填する事もままならず、原子力事業を手放すまで債務超過の危機を繰り返す様が目に見えるようですが、東芝経営陣は、それでいいと本気で思っているのでしょうか。貧すれば鈍す、と言うにも程があるでしょう。恐ろしい話です。関わりあいのない第3者の立場で良かったと、心から思わずにはいられません。

およそ全てにおいて場当たり的な対応に終始して来た事がこの破綻した帰結に導いたというか、そもそも破綻を云々出来るだけの計画性自体が無く、通常なら当然にあるべき準備も保険も選択肢も何もないままに目先の取り繕いに汲々とするばかりで一年先の事すら考慮しない、という信じ難い振る舞いを続けた必然の結果と言うべきなのでしょう。ここまで酷いと、教訓にするのも難しい感じで、ただひたすら距離を取って巻き込まれないようにする位しか仕様がないんじゃないでしょうか。最早その影響を逃れる事も困難な位に関わってしまった利害関係者も多数いるだろうわけですが、東芝のその有様を見て、それでも関係を持ち続けた自身の愚かさの報いを受けるだけの事、同情は無用だし、するべきでもないのでしょうね。実際どうしようもないし。くわばらくわばら。

[前記事 [biz] メモリ事業を売って原子力を残す、何処までも場当たり的な東芝]

2/14/2017

[biz] ニコンDLシリーズ発売中止、瀕死の同社コンデジ事業

Nikonがコンデジの新シリーズDLの発売を中止しちゃったんだそうで、大騒ぎです。

それも当然でしょう。同シリーズは同社のコンデジ製品における新たなフラッグシップとして、CoolpixのPやA等、ハイエンドカテゴリを丸ごと承継する、少なくとも今後数年間における同社コンデジ事業の利益の大半を稼ぐべき主力と位置づけられていたものであり、それを中止するというのは殆どコンデジ事業自体からの撤退を宣言したに等しい決定とも理解出来てしまうのですから。

それに、元々の発売予定日は半年以上前で、それが延期されている状態でした。ということは、当然ながら開発・生産・広告等諸々の投資は実行された後であり、そこに遅延による追加の費用までもが積み上がっているわけです。そこまで突っ込んだのにも関わらず、回収を諦めて撤退してしまうというのは、如何なる企業であれそう簡単に出来る筈もない話です。普通に致命傷になりますからね。

にもかかわらず、このような決断をせざるを得なくなった理由は何か。発表されたところでは、プロセッサの不具合とのことですが、センサーの生産上の問題ではなくプロセッサというのは極めて珍しい話です。デジカメのプロセッサなんて殆どの機能は枯れているものだし、技術的な問題が生じたとしても普通なら修正自体はそれほど困難とは考えづらいところですが。。。何が起きたというのでしょう。謎は深まります。

といって、そこは推測するしかないのですが、考えられる理由は幾つもあります。

既に発表済の製品情報によれば問題のプロセッサはExpeedの新型である6Aですが、基本的にその開発・生産は昔から富士通に委託して来た筈なところ、富士通のLSI事業は少し前にリストラされましたから、現在はおそらくそこがパナソニックのLSI事業と合併して出来たソシオネクストが担っている筈です。デジカメ関連ではニコンと競合するパナソニックの資本が入った事が本件プロセッサの開発・生産に影響した可能性はあり得るでしょうし、そうでなくとも独立した事で案件毎の採算に厳しくなり、そこに開発上のトラブルや市場の動向を踏まえた生産数見込みの下方修正等が入れば、不採算案件として手を引く決断がされたとしても不思議ではない、とは言えるでしょう。

他にも、ニコン自身がリストラの真っ最中で、キーマンが抜けたり部門の編成変更等で開発・生産体制に不備が生じた可能性も相当にあるでしょうし、そもそも売り出し価格で10万円前後の高級機につき、余程の"売り"が必要な事は間違いないところ、それに乏しく、単に競合製品や自社の1シリーズ等と比べて商品力に欠ける事から事業として成立しないものと判断されただけなのかもしれません。 勿論それらの事情が重なった可能性もあるでしょう。

何にせよ、ニコンのデジカメ事業が存亡の危機にある事は間違いなさそうです。あわせて発表された2016Q3の決算資料によれば、DSLRとレンズは前年同期比で販売台数で約2割減、コンデジに至っては半減近い壊滅的な状態にあって、しかもその減少率は市場全体の縮小率より大きく、シェアも同時に低下しているというのですから。本来ならこういう時こそ新製品を投入すべきだろうところ、逆に白旗を挙げてしまった本件、このまま同社のコンデジ事業は消滅してしまうのでしょうか。個人的には結構な間Pシリーズを愛用しているので、なんとか回避して頂きたく願う次第なのですが、無理ですかね。

2017年3月期 第3四半期決算 説明資料(PDF)

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2/13/2017

[note] Ebayで在庫なしキャンセルを食らって

どうにもトラブル続きなこの頃。ebayで久しぶりに酷い目に逢ってしまいました。

何かというと、先日、ebayでとあるPCの修理用の部品を発注したんです。古いPCの部品で、国内では入手しづらいものだってので。そしたら、支払も済ませて数日後、突然sellerから一方的にキャンセル&返金されてしまったんです。

sellerの言い分は、出荷準備中に検品したら不良が見つかり、代替品も調達出来ないため、とのことでした。普通に債務不履行です。相手の言い分の真偽もこちらからでは分かりませんし、結局のところ、こちらとしては、数日を無駄にして修理が遅延し、数日分とはいえ代金を提供し、かつ当方の住所や連絡先等の個人情報を無駄に知られただけの結果となったのでした。ポジティブな要素が何一つありません。

というわけで、これは流石にnegative評価をせざるを得ない、と思ったんですが、これが一筋縄ではいかないのです。というのも、ebayのシステム上の仕様で、negative評価は取引成立から1週間経過しなければ付けられないようになっているのですね。これ自体は悪意によるnegative評価の乱発を避けるための措置という事で理解出来なくはありません。ただ、キャンセルされた取引はキャンセル後数日でmy ebayの履歴に表示されなくなり、Feedbackするためのボタンも一緒に消えてしまうため、1週間経過する前に通常の手順でFeedbackする事が出来なくなってしまうのです。

キャンセルされた取引をたかが数日で履歴から消す合理的な理由はありません。むしろ本来はその後始末のため、少なくともしばらくの間は残されるべきものでしょう。従って、この仕様はキャンセル時にnegativeなFeedbackを残す事を妨げる意図で設定されているものと理解せざるを得ないわけです。明らかに不誠実なsellerを保護しようとする、姑息と言う他ないebayの姿勢に憤りと呆れを覚えました。

ただし、この場合にもFeedbackを残す方法はあります。取引が成立した場合、当該商品のページ上部にその取引内容へのリンクが貼られるのですが、これはmy ebayの履歴から消えた後も残ります。これを辿る事で、Feedbackボタンを含む当該取引内容にアクセスする事が出来るのです。

もっとも、キャンセルされるような場合、通常は同時に出品も取り下げられ、検索等の表側からは見えなくなるものでしょうから、このやり方を使うには、あらかじめ商品のページのアドレスを控えておく必要があります。私は元々購入検討時に候補をブックマークしておく習慣があって、そのブックマークを使って辿る事が出来たのですが、まず一般的ではないでしょうし、大半のケースではFeedback出来ずに泣き寝入りさせられているものと考えられます。まあ、キャンセルされるとFeedback自体が完全に不能になるamazonよりはマシ、とは言えるでしょうか?

ともあれ。1週間経過後、上記のやり方でFeedbackにアクセスし、支払い後在庫不良のためsellerにキャンセルされた旨コメントを添えて、無事negative評価を残す事が出来たのでした。

これで終わったものと考えていたのですが。。。数日経って、sellerからメッセージが届いたのです。内容は、要するにnegative評価を取り消せ、という要求でした。取消しの対価として、商品の代金の1割程を追加返金する旨も添えられていて、どう見ても買収の提案です。

評価の売買は当然ながら不正行為につき、応じられるわけがありません。無視しても良かったのですが、勝手に入金等されては面倒とも思い、そんな不適切な提案や要求をしてはいけません、とシンプルに拒否の旨を伝え、以降コンタクトしないよう伝えたわけです。と言ってもこのような要求をしてくるような業者がそれで諦めるとは思えなかったところ、やはりというか、また数日してから何かメッセージが届いていたようでした。元々こちらに付き合う義務はない、というか純然たる被害者なのだし、とメッセージは読まずに廃棄し、本業者絡みのメッセージはメールで転送されないように設定して、以降は無視することとし、一応(こちらとしては)この案件は終了、としたわけです。

後から調べてみると、こういうnegative評価の撤回を求めるsellerって多いそうですね。色んなケースがあるようで、脅迫も普通にあるようです。それらと比べると、今回はseller側の一方的な不履行で、評価の妥当性自体は争う余地が無かったためにこの程度で済んだ、と言えそうな感じです。ebayではどのsellerもnegative評価が3%未満で、全世界の不特定多数を相手にオープンな取引をしている割には異様に高いと疑問を感じていたところだったのですが、システムの仕様上の妨害と、sellerの買収や脅迫等の賜物だったとは。。。いやはや、ホント信用なりませんね。

ちなみに、逆にbuyer側からnegativeなFeedbackを盾に金銭等を要求するケースもあるそうで。そういう行為を防ぐためには、ある程度の防止措置は必要だという事も分からないではないですけれども、しかしそれは同時に正当な評価をも妨げるものには違いないわけです。とりわけ、今回のようにFeedback自体を妨害する措置は、結局のところ、評価システム自体を無意味に帰するものと言わざるを得ません。ebayも苦労してるんでしょうし、解決の方法自体存在しない類の話なのかもしれませんが、それならそうと表示すべきです。現状のようにその評価を偏らせる仕組みを隠し、さもオープンで正当な評価のように表示するというのでは、詐欺を幇助しているものに他ならないわけですから。

ともあれ。ebayを使う時は、より一層気をつけましょう。といって気を付けてもどうしようもない面もあるし、そういう事もあると鷹揚に構えるべきでしょうか。いずれにせよなんとも面倒な事で、困ったものです。

なお、目的の品は、何とか互換品の調達に成功し、遅れたものの無事修理を遂行する事が出来ました。やれやれです。

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[note] Al Jarreau passed.

また一人、Jazzの名手が逝ってしまったそうです。既に76歳にもなっていたのですね。あの軽やかで心地良い歌声が失われてしまった事には残念と言う他ありませんが、時の流れには逆らえません。彼は、病床にあっても折りに触れてその歌声を響かせ、看護師らに大いなる安らぎをもたらしていたそうです。優しき彼の魂もまた安らかなる事を祈って。R.I.P.

Al Jarreau: Seven-time Grammy-winning jazz singer dies at 76

ふと、某ピアニストの方が、ラジオ番組で彼の曲を紹介する時、よく、"なんじゃろう、アルジャロウ"などと駄洒落を飛ばしていた事を思い出しました。程よく脱力した後で流れる心地よい音楽。とても良い時間でした。それらの良き思い出をくれた彼に、今一度感謝を捧げたいと思います。

2/12/2017

[note] 車のバッテリー交換で下手を打ってひどい目に

先日、自動車のバッテリーを交換したんですが、少し横着をしたら面倒な事になってしまい、その修正に結構な手間がかかってしまった、という事がありまして。反省の念を込めて、メモを残しておこうと思うのです。

対象は、2013年型デミオ。Skyactiv対応車です。バッテリーの型格はQ-85のD23L。当然ながらアイドリングストップ対応、という事で、結構大きいタイプです。幾つかある候補の中から、最も性能ランクが高く、それでいて価格は大手メーカー製の中では安い部類のBOSCH製のもの(HTP-Q-85/115D23L)を選択しました。後にして思えば、大手メーカー製なら大丈夫だろう、というこの安直な選択がトラブルの原因の一つになったわけですが、それはともかく。特に問題もなく入手出来たわけです。


合わせて定番の工具類を準備します。アイドリングストップ関連とか諸々の設定がリセットされてしまうと再設定等が面倒なので、メモリ保持用の電源を準備。定番のエーモン製No.1686のメモリバックアップを使います。1.5Vx6で9V。バッテリーの定格である12Vに足りないのは少し不安に感じますが、メモリ云々が問題になる部分はまず9V以下だからこれで十分、という事なのでしょう。


先日修理した充電器で補充電もして、作業開始。


短絡防止のカバーで覆われているプラス端子と、剥き出しのマイナス端子とにそれぞれバックアップ電源のクリップをつなぎます。プラス側はスペースに余裕がありませんが、なんとか手前のボルトの部分に噛ませる事が出来ました。しかしポロッと外れそうで不安です。


しかるのちに、セオリー通り、マイナス側から外します。うっかりプラス端子側にレンチをぶつけて短絡させないように注意しつつ。


プラス側も外して、ケーブル類を脇にどけます。ここでも短絡させないようにプラス側の端子は注意。といって、プラス側にはシャーシの金属部分は殆どないので、どちらかというとクリップが外れないようにする方が気を使う感じでしょうか。バッテリーを出し入れする時にぶつけると簡単に外れちゃいそうですから。


端子と上部のステーを外した後、ケーブル類にぶつけないよう気を使いつつ、バッテリーを引っ張り出します。しかし流石に18kgは重い!


で、交換用バッテリーを入れて、逆に作業すればOK、の筈だったんですが。。。何かバッテリーの下部がハウジングにひっかかって、ちゃんと収まってくれません。それでも何とか強引に押し込み、ステーを少し曲げて固定する事は出来たものの、ハウジングは歪んでますし、ステーのボルトも下まで締まり切っていません。これ以上閉め込むと、樹脂部分が割れかねない感じだったので、ある程度抵抗を感じるようになったところで止めたのですが、とても不格好ですし、ぐらついたりはしないとは言っても重量物なだけに不安も残ります。


なので、一旦外して調整する事にしました。が、ここで追加のトラブル。持ち上がりません。入りにくいところを無理に押し込んだために、今度は引っ張り出す際に強い引っ掛かりが発生するようになってしまっていたのです。

よくよく見ると、片側のステー(上図画面右側)のハウジングの内側部分には縦長のゴムの緩衝材が貼られていて、これがバッテリー本体下部の出っ張りに噛み込んでしまっており、それが強い摩擦抵抗を生じさせていたのでした。これを緩めないとどうにもならない、という事で、バッテリーとハウジングの間に金棒を差し込み、ステーとバッテリーの間に隙間を作ってその噛み込みを緩めつつ引っ張り出す事にしたのですが、元々のバッテリーの重量が大きいのに加え、バッテリーが車体の奥側にある事もあって、これは相当な重労働でした。多少緩めてもまだ摩擦は大きく、一気に持ち上げる事は殆ど不可能な状態ですから、噛み込みが発生しない高さに到達するまで、数mmから数cmずつ位、少し持ち上げては指で保持して休憩、を繰り返す必要があったのです。

ひいひい言いながらも慎重かつ根気よく進め、最終的には何とか苦労して取り出す事に成功したわけですが、、、正直言って、個人的にはもう二度とやりたくありません。そこそこ以上の体格(上背)と、腕力、握力、背筋力等の筋力が必須で、それでも下手をすれば腰や腕を痛めかねませんし、持ち上げている途中で落下させたりすると車体にダメージが発生するリスクもあります。なので、そもそもこのような事態にはならないよう、あらかじめ後述のような措置を取っておくべきところでしょう。途中で気づいた時も、迂闊に押しこんだりすべきではなかったのです。

で、そもそもこの噛み込みの発生原因なんですけれども、これはバッテリーの外側の形状、具体的には下部の出っ張りによるものでした。下図だとわかりにくいかもしれませんが、山状の出っ張りがあるんですね。実はこれ、基本的に海外メーカー製品にのみ存在するもので、国内メーカー製だとないらしいのです。何でも国内だと上からステーで囲んで固定するのに対し、海外だとこの出っ張りをステー等に引っ掛けて固定する方法が主流だからなんだとか。国内車にはやはり国内メーカー品の方が相性がいい、という事で、言われてみれば自然に思えるわけですが、この種の部品類は標準化されているものが大半な昨今、型番に現れない仕様の違いがあるとは思いませんでした。油断なりませんね。

 

そういう事情はともかく、修正の方法は2つです。バッテリーの出っ張りを削るか、ステー側の緩衝材を削るか。少し考えて、ステー側を削ると、今後国内メーカー製品に交換する事になった場合によくないだろう、というわけで、バッテリー側を削る事にしました。干渉する側(端子と反対側)の出っ張りを、側面と同じ位の高さになるまで、適当にカッターで削り落とします(下図)。反対側にはステーに緩衝材が取り付けられておらず、特に問題なさそうではありましたけれども、念の為同様に削り落としました。


しかるのちに再設置します。今度は引っ掛かる事もなく、すんなり底まで収まりました。ステーを固定する際にハウジングが歪む事も、ボルトが浮く事もありません。先程までの苦労が嘘のようです。やはり事前の寸法確認(と調整)は必須と再認識しつつ、固定した後、端子を接続(プラスが先)して、腐食防止のためにグリスアップして取り付け完了。一通り動作確認等をしたところ、メモリーバックアップは正常に動作していたらしく、諸々の設定は全て保持されていました。というわけで、修正完了です。


しかし疲れました。まさかバッテリーの形状面でこんなひどい相性があるとは。。。互換性については、大手メーカー製だからと高を括らず、個別によくよく注意して調べておかないといけないという事ですね。迷ったら国内メーカー製、というのがやはり無難でもあるんでしょう。ただ、マツダ車は欧米でもよく販売されていて、mazda2ことデミオもそれは同様の筈なのに、何故にこんな国内特化的な仕様になっているのでしょう。緊急でバッテリーを交換しなければならなくなった時に海外品しかなかったら困った事になりそう、と言っても、全く取り付けられないわけではないから、そこまで致命的な話でもないという事なんでしょうか。謎です。というわけで、ひっかかるものを感じながらも色々と反省しつつ、今回はこれでおしまい。

(追記)

バッテリー交換後はi-stopのリセット等をした方がいい、という話を聞きまして。公開されているシークエンスに従って作業をしてみたんですが、何故か上手く行きません。アイドリングストップは普通に動作している様子なので、さしあたり問題があるわけではないのですけれども、アイドリングストップの動作回数等に応じて警告が出る仕様になっているというし、少し落ち着かない気分です。どうしたものか、と思案中。素直にディーラーに行けばいいって話なのかもしれませんが、ここまでやったのだから自分で何とかしたい気持ちも。うーん。

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2/11/2017

[note] 2台"同時"操作可能な変態キーボードTK-DUX51BK

久々にキーボードを購入しました。店頭で触ってみて、タッチが気に入ったので。

型番はTK-DUX51BK、ELECOMが販売しているDUXという安価ながらプログラマブルなゲーム用入力機器シリーズのうち、USB接続とは別に無線接続機能も備えていて2台同時に操作出来るという、ちょっと聞いたことのない変わった仕様を持つキーボードです。

箱はこんな感じ。素っ気ない段ボール箱です。


 本体。赤い編み込みで被覆されたケーブルが高級感を感じさせます。と言っても見た目だけな感じではありますけれども。


 無線接続用のドングルは、裏面にひっそりと嵌め込まれていました。


本機は、厳密に言えば店頭販売されているのとは型番の数字の一桁目が異なる(店頭販売だと"0")別機種なのですが、キーの形状や構造は同じ、ということで。何でも、一桁目が"0"のは同時押しの対応範囲がエリア限定なのに対し、本機種等"1"のものは全キー同時押し対応なんだとか。その差は、ゲームに使うなら強い意味を持つんでしょうけれども、ゲームをやらない私には関係のない話なのです。

なので、私としてはどちらでも良かったんですが、何故か上位版の筈の"51"の方が実売価格が安いのですね。同時押しの仕様以外の差異は化粧箱入りか否か位なのですが、その箱代という事なんでしょうか。店頭販売されているのは専ら"0"系な辺り、パッケージングはそれなりに大事という事なんでしょう。無地の段ボール箱だと、アウトレット的な感じが漂いますし。

なお、型番の数字の2桁目が"3"のモデルもあるんですが、こちらは無線接続がないモデルで、当然ながら一台だけしか操作出来ません。別にこれでも良かったんですが、これがまた不思議なことに"51"と実売価格が殆ど変わらないのです。なら、2台同時操作機能がある方がいいかな、と。

で、一通り使ってみた感想ですけれども。いいですねこれ。まず何よりも重要なタッチについては、ストロークは深めで加重はかなり軽い部類です。押し始めに軽い抵抗があり、その後スコッと抜ける感触というか。ラバードームのクリック感はあるけれども、抵抗が小さいため、パコパコというよりはシャカシャカに近い感じのタッチです。キーを押す際、ひっかかりや軋みは感じられません。押す角度がズレても大丈夫。その加重の軽さと相俟ってストレスは非常に小さく、疲労しにくい、従って文章作成やプログラミング等、長時間の入力作業に適したタッチのキーボードと言えるでしょう。とても良いです。

ただ、メンブレンスイッチである以上、キーを押し込み切る必要があるところ、ストロークが深い点は速度面で多少なりとマイナスに働く事は間違いないし、キートップは若干狭めのデザインなので、その辺が合わないという人もいるかもしれません。あと本体に鉄板等は入っておらずとても軽いので、ストロークの深さも関係してかガタガタと揺れ易い点も、剛性や安定感を求める向きは不満を感じる事もあるでしょう。

キーボードとしてはそんな感じです。疲れにくさを重視するというか、とにかく軽くてストレスの少ない、昔の富士通製に似たようなキーボードを求める向きには、一つの選択肢となり得るかもしれません。

次に、2台同時操作機能についてですけれども。こちらも悪くないですね。ただ、2台同時操作と聞いて、KVMのようにボタンで操作先を切り替えるような使い方を想定していたところ、デフォルトではそのような使い方が出来るようにはなっておらず、設定にちょっと手間取りました。

というのも、"2台同時操作" というのは文字通りの機能だったのです。接続先の2台のPCをそれぞれPC1、PC2とすると、各キーを押した時に、PC1とPC2とに同時に入力がされるのです。で、設定ツールから、各キー押下時にPC1に入力される文字(もしくは実行されるマクロ)と、PC2に入力される文字(マクロ)をそれぞれ自由に変更出来るようになっている、というものでした。その設定は、本体右上部の5つのボタン(P1からP5)に対応して5セット(プリセット)設定出来るようになっていて、プリセット間の切替をそのP1からP5のボタンを押す事で行う、という仕様なのです。

デフォルトでは、PC1について各キーに通常のキーボードレイアウト通りの入力が割り当てられ、PC2については何も割り当てられていない(したがって、キーを押してもPC2には入力されない)状態になっています。私が当初考えたように、操作先を切替えて使う、という場合には、あるプリセットではPC1側にのみ入力されるように各キーを設定し、別のプリセットではPC2にのみ入力されるように各キーを設定する、というように、手作業で各キーの挙動を設定してやる必要があったのです。これは結構面倒でした。何せ、全キーについて、PC1側には無効を、PC2側にはレイアウト通りのキーを、といったように一つずつ割り当てて行く必要があるのですから。

そして、公式の提供しているマニュアルはとても不親切です。KVMのような使い方をするには、上記のようにプリセットを設定するのだ、という事を理解するまで、結構な試行錯誤を必要としました。もっとも、各キーを押すと2台同時に入力が飛び、かつその入力内容を対象別に任意に入れ替え可能、などという仕様自体が例のない、おそらくは誰も想定していないだろうものなので、たとえ親切かつ丁寧な記述がなされていたとしても、理解出来るまではそれなりの時間を必要としただろうとは思うのですけれども。本当、どうしてこんな仕様に、というか、どういう意図で作ろうと思ったのか謎です。

ともあれ。設定出来てしまえば、これは中々に便利です。普通に一台のキーボードで2台を操作する事が出来るのだから当然ですけれども。設定は面倒ですが、その手間をかける価値は十分にあると言えるでしょう。ただ、あまりに変態的な仕様である事も間違いありません。世の中で、このようなキーボードを求める需要がそれほどあるとは考えづらく、果たして何時まで販売を継続出来るのか、と懸念を抱かざるを得ないのです。タッチは秀逸と言えるレベルにあるだけに、出来れば末永く販売され続けて欲しいとは思うのですけれども。さて。

[note] バッテリー充電器の故障したスイッチを修理

ちょっとした修理をしたのでメモ。

何かというと、車のバッテリーを交換をする事になりまして、その交換用のバッテリーを調達したんですが、電圧を測ってみたところ、12.5Vと問題ないレベルではあるものの、ちょっと低めというかギリギリな感じでして。目的の車がアイドリングストップ車という事もあって、念のため補充電をしておこうと思ったんです。

で、以前から持っていたBAL(大橋産業)社製のNo.1734というバッテリーの充電器を久々に引っ張り出して、充電しようとしてみたんですが、これがうんともすんとも言わないんですね。電源が入ると[待機]になって、本来ならボタンを押すとモードが切り替わると同時に充電も開始する筈なんですが、[待機]のまま。で、ちょっと調べてみると、この充電器はボタンが壊れやすいんだとか。というわけで、ひとつ直すかとなったわけです。

まずは分解します。ここで背面のネジを外すんですが、6つあるネジの半数が三角ネジです。もう半分は普通のプラスネジ。何故そんな中途半端な。。。と疑問を感じるものの、問題は三角ネジ用のドライバーが手元に無かった事でした。このためだけにドライバーを買いに行くのはいささか面倒だし無駄でもあるだろう、と思い調べてみると、そこかしこでラジオペンチで代用出来ると言っています。ものは試し、とやってみると、見事にナメてしまい回りません。あてにならないなあ、とがっかりしつつ、やはり面倒になったので、三角ネジは潰しても半分は残るしいいか、とドリル+エキストラクターで強引に外してしまったのでした。

で、開けてみると、当然ながらボタンは表側なので、まだアクセス出来ません。さらに悪い事に、左右の電源ケーブル(片側はAC、もう片側はバッテリー端子)がケースに固定されていて、基盤自体もケースと一体化しているという、修理屋泣かせな構造になっていたのです。


どうしたものか、としばし悩み、一旦ケーブルを切る事も考えましたが、左右のケーブルのケースと基盤の間に若干遊びがある事から、基盤をひっくり返すだけなら切断せずとも出来そうだと気付き、ケースと基盤が破損しないか冷や冷やしながら強引に引きずり出してひっくり返したのでした。


ようやく問題のスイッチにアクセス。タクトスイッチですが、ボタンが高いタイプです。手持ちの部品はボタンが低いものしかなかったので、交換は諦め、このまま分解してスイッチ自体を修理する事に。


スイッチ上面の四隅のリベットの頭を削り、金具を外します。


スイッチの金具にアクセス。


ひっくり返してみると、金具の裏側が腐食し、青サビが浮いていました。おそらくはこれにより接触不良を起こしていたのでしょう。


というわけで、錆を削ります。


後、本体側の接点も磨いてから、元に戻します。


スイッチと金具を戻し、接着剤で固定。接着剤には、瞬間ではないもの(クリヤーボンド)を使用しましたが、特に問題なし。


基盤とケースを元に戻して、出来上がりです。スイッチが復活し、充電出来るようになりました。


めでたしめでたし。しかし、電子機器が故障した時に、実はスイッチが原因なケースって非常に多いですよね。修理が容易なのはいいんですが、その前に故障しないようにする事は出来ないのでしょうか。可動部はどうしても経年劣化の影響を受けやすい事はある程度仕方ない面はあるのでしょうけれども、主要部分の機能は問題ないのに、ただスイッチが効かないというだけで全く使えなくなり、多くが廃棄されてしまう、というのは、やはり馬鹿馬鹿しい話だと思うのです。ともあれ、今回はこれでおしまい。

[過去記事 [note] 壊れたマウスのスイッチを交換修理]
[過去記事 [note] IH調理器の壊れたスイッチを修理]

2/07/2017

[PC] Ubuntu上でaptをリセットする方法について

今回は、Linux(ubuntu)上でのちょっとしたworkaroundです。

先日、16.04LTS(64bit)上にAndroid Studioをインストールする機会がありまして。そのインストール自体には問題なかったんですけれども、その後使い始めた後に問題が発生してしまったんです。何かというと、OSが64bit版の場合は、エミュレータ作成・管理の際、AVDのsdカード領域作成モジュール(mksdcard)を実行する際に32bit版のライブラリが必要になるんですが、当該PCは、何故かこのライブラリのインストールに失敗するようになってしまっていまして。その対処をしたのでメモ。

具体的には、下記のようにライブラリをインストールしようとすると、

$ sudo apt-get install lib64stdc++6:i386 zlib1g:i386 libncurses5:i386

こんな感じのメッセージがズラズラと出るのです。(一部抜粋)

 libstdc++6:i386 : 依存: gcc-5-base:i386 (= 5.3.1-14ubuntu2) しかし、インストールされようとしていません
 zlib1g : 依存: libc6 (>= 2.14) しかし、インストールされようとしていません

普通ならこの辺の依存関係はaptの側で自動的に解釈して、必要なものはまとめてインストールするなりアップデートするなりしてくれるんですが、何故かそれをしてくれません。"しかし、インストールされようとしていません"って、何他人事みたいな言い方してるの?どうしろっていうの?と途方に暮れざるを得ない状況になってしまったわけです。

なお、apt-get(もしくはapt)ではなくaptitudeだともう少し親切で、一時的にバージョンを固定すれば大丈夫云々、等と解決策らしきものを呈示してくれるんですが、それを実行(yesを選択)しても何も起こらず解決しません。馬鹿にしてんのかと。

他にも色々と試行錯誤して理解したところは、結局、aptのキャッシュやらが壊れてしまっていて、aptの側では対処不能になってしまっている、という事でした。このままだと、必要なライブラリをインストールする事が出来ませんから、エミュレータを作成・起動する事が出来ず、従ってセットアップを完了する事が出来ません。困りました。しかし諦めるわけにもいきません。

というわけで、色々と対処方法を探す羽目になったのです。で、結論から言えば、キャッシュをリセットする事で、一旦依存関係等を初期化すれば良いのです。その手順は以下の通りです。

[aptのリセット手順]

・ソースリストの削除(バックアップ作成)

 $ sudo mv /etc/apt/sources.list /etc/apt/sources.list_backup

・再設定

 $ sudo -i software-properties-gtk

 で起動されるaptのソース設定画面から、取得対象範囲等を再設定します。
 
 [Ubuntuのソフトウェア]
  main,universe,restricted,multiverseから選択
  ダウンロード元を[日本のサーバー]等に設定

 [アップデート]
  重要なセキュリティアップデート、推奨アップデート等を選択

・アップデート等実行

 $ sudo apt-get update
 $ sudo apt-get upgrade
 $ sudo apt-get dist-upgrade
 $ sudo apt-get autoremove

これで完了。しかるのちに、上記のi386関連ライブラリのインストールコマンドを実行すると、今度は問題なくインストールすることが出来たのでした。その後は特に問題なし。やれやれです。

しかしこの手の管理情報が壊れた場合の対処法って、往々にしてシステムの再インストールとかそういう乱暴というか無茶な話になりがちなのは、どうにかならないものでしょうか。本件で対処法を探している時にも、とあるフォーラムに寄せられていた同様の事例を見かけたんですが、色々と試行錯誤をした挙句、結局相談者からOSを再インストールしたら直った、との報告があり、それで終わっていました。そんな手段を取り得るのは、殆どシステムを使っていないような特殊なケースに限られるし、大半の場合は解決方法になり得ず、要するに対処を諦めるに等しいものだと思うんですが、普通に多いんですよね。困ったものです。ともあれ、そんな事にならずに済んで一安心です。やれやれ。というわけで、今回はこれでおしまい。

1/28/2017

[biz] メモリ事業を売って原子力を残す、何処までも場当たり的な東芝

悪い方に半端ない感じの東芝さん、あっさりメモリ事業の売却に踏み切ってしまいました。

いやこれどうなの。どう理解すればいいの?と困惑させられてしまいました。というのも、東芝がその主力としている事業は周知の通りこのメモリを含む半導体事業と電力関連事業です。無論後者は今回の窮地に至った主要因であり、その中核たる原子力関連事業について、少なくとも収益性の面では最早事業としての体を成していないとも言える惨状にあるところ、メモリ事業は東芝に残された唯一の主力事業であり、東芝そのものと言っても過言ではない程の、換えの効かない事業である筈です。

そのような事業を、本体から分離し、1/5程度とは言っても売り払ってしまう、というのは、それは身売りをするに等しい、あるいは東芝という企業体にとって致命的とも言える措置であるわけですが、それを今期の決算における債務超過を回避するという、目先の資金目的のためだけに、あっさり決定してしまったわけです。

そして、問題の原子力を中心とする電力関連事業は本体に留まったままです。従って今回の決定は、事業戦略の観点から見れば、原子力事業と半導体事業を天秤にかけ、原子力事業を取ったという事に他ならないわけで。周知の通り、原子力事業の状況は今後の見通しも含め壊滅的であり、本件によって今年度の損失を穴埋めしたところで、来年度以降も業績を回復させる見込みはなく、再び巨額の損失を生じる可能性はむしろ高いものと見られており、事業としての収益性、安定性、継続可能性、どれをとっても論外というしかない状況にあります。誰が見ても半導体事業とは比較にもならない、その事に疑問の余地はないのにも関わらず、真逆の選択に安易に踏み切ってしまったというのは、事業の継続を放棄するに等しい、まさに驚愕すべき愚かな決定と言えるでしょう。裏切られた株主はどんな気持ちなのでしょう。

他に柱があるというのなら、まだ正当化の余地はあったでしょう。しかし、家電も医療機器も、昨年までにその都度生じた損失の穴埋めのための金銭に替えられてしまっており、既にありません。目先の資金調達が重要でない筈はありません。しかし、一時的に債務超過になったとしても、破綻しなければ企業は存続出来るし、仮に破綻したとしても、継続可能な事業がある限り、再生も可能な一方、逆に事業を売り払う事でその実体を失ってしまえば、継続も再生も不可能になってしまうのです。今の東芝にとって、メモリ事業は、企業の継続に不可欠な筈のものでした。たとえ債務超過に陥り、一旦上場廃止になってでも、その後再起を果たすためには絶対に必要な同社に残された唯一の、それだけは手放してはならない、そういう類の事業である筈だったのですけれども。。。いやはや。こんな場当たり的に売り飛ばしてしまうとは。

思えば、本件に絡むここ数年の東芝の事業売却は、全て目先の資金調達のためだけに行われたものばかりでした。東芝にとって、既に事業というのは、単なる商品と何ら変わりない、金銭と同視すべき交換価値的なものとしか映っていないのでしょうか。本当は、それらの事業こそが、東芝という事業体すなわち自分自身そのものである(あった)筈なのですが。

いずれにせよ、既に決定はなされてしまいました。撤回される可能性はまずもって皆無、である以上はもはやその決定の是非を云々しても意味はないのでしょう。KKRらファンドの商材となるのか、WDやSAMSUNGら同業や関連業種の他社に吸収されるのか。それともCANONら新規参入組に引き継がれるのか。いずれにせよ、来年度以降の東芝は、不良事業たる原子力を本業とし、その他にはインフラ事業と、あと他社に劣るITサービス事業を持つに過ぎず、もはや成長の見込みはおろか持続すら危うい斜陽企業に落する事は必至です。既に数年後の整理・清算を想定する向きも少なくありません。果たしてその通りに消滅の道を辿るのか。誰も想像出来ない何かが起きて、電力事業が復活するような事があり得るのか。そんな都合のいい話なんて期待するだけ愚かな事だろうと、冷めた目で見るより仕方ない話だろうと思いつつ。

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1/26/2017

[pol biz] 中国の歴史捏造疑惑をビジネス上の戦略に取り入れたアパグループ

中国人によるインバウンド消費の終了とか、ナショナリズムによる国家間の分離主義の台頭やら、色々と象徴的な感じがするところの、アパホテルの南京事件否定書籍設置の件についてです。

既に周知の通り、本件は同ホテルを含むアパグループ経営者の元谷外志雄氏が藤誠志名義で執筆した著作「理論近現代史学II」を客室に設置した事によるものです。同著作は、南京大虐殺に対し否定的な見解を取っており、これが中国政府の見解と真っ向から対立するものであることから、その反発・非難を招き、当然に撤去の要求も受けたところ、これを拒否したことで、その対立が決定的なものになったというものです。なお、今以ってその対立は継続中で、概ね膠着状態に入ったように見えます。一旦まとめるにはいいタイミングなのかな、と。

当然の帰結として、中国ではその撤去を強制すべく、殆ど同ホテルの利用を禁止する類の措置が採られ、また同ホテルの予約サイトへのDOS攻撃も実行されて一時予約不能になったりしていたようですが、これらの中国側からの活動は功を奏することなく、アパグループの姿勢を硬化させ、また報道を通じてその主張を広く鮮明に知らしめただけの結果に終わっています。

さて。本件は色々と際どいラインを通っているものですから、端から見ているだけでもハラハラさせられます。そもそもそれなりの規模を持つ法人事業者が、その事業を通じてこの種の政治的主張に関わる措置を採る事自体が稀な事から、前例に倣って理解する事も困難だという事情もそこに一役買っているのでしょう。そのような話ですから、本件を理解するにあたっては、原則として個々の事情を具体的に把握した上で、理論的な分析を積み重ねる他ないわけです。しかしその際どさから、その理解における少しの違いが、結論における是とする側と否とする側への分かれ目になってしまう怖さがあるように思うのです。国家間の話だし主義主張の話だしで、もとより是非両論あって当然なのですけれどもね。

ともあれ、順に検証してみましょう。まず、問題の書籍自体についてはどうか。結論から言えば、準拠すべき国内法に照らして違法なところはない、と言うべきでしょう。元谷氏が上記著作を執筆したこと、またその中で南京大虐殺の存在を否定する見解を述べた事、そしてそれを書籍として発行した事は、全て合法です。というよりむしろ、それらの行為は表現の自由として日本国憲法の保障するところであって、内容の修正・撤回や発行の禁止等を強制する権利は誰にもないし、元谷氏側にそれらの要求に従う義務はないのです。なお、当然ながらアパグループは書籍自体については法的には何の関係もなく、法人として責任を負うことはありません。

では、著作をホテルの部屋に設置した点についてはどうか。書籍それ自体が合法である限り、その客室への設置を禁ずるものと解される規制は存在せず、事業者の自由に委ねられているところであり、従ってこれも原則として合法です。ただ、その目的が違法なものである等の特段の事情がある場合は違法となる余地はあるでしょう。実はこの点に関連して、少々際どい話が出ていました。それは、アパホテル側が出した声明として流布され、後に同社によって否定された"中国人の予約は受け付けない"という旨の発言です。

本発言は明らかに宿泊の拒否を表明するものですが、営業者が宿泊を拒否し得る要件は旅館業法で定められており、国籍・人種等は当然ながら該当しません。そのため、中国人である事を理由とする宿泊拒否は、違法となります。このことから、本件書籍の設置が、本発言と同様の意図、すなわち中国人の宿泊拒否を目的としてなされたものである場合には、やはり旅館業法違反として違法性を帯びるものと言えるでしょう。流石にその辺はアパ側も理解していて、本音はどうあれ否定する外なかったのでしょう。

この点は本当に際どい感じです。このような書籍の設置が、中国人に対する事実上の拒否とも解しうる事は周知の通りであるわけですから。しかし、それはあくまで事実上の話であって、宿泊やその予約自体を拒否しているわけではない事、また本書籍は経営者が公に発行した書籍であり、専ら宿泊拒否目的のために作成されたものではない事、大多数の中国人は日本語で書かれた本書籍を読む事が出来ないため、拒否の意図があったとしても伝わらず、実際の宿泊に際して本書籍による中国人への拒否自体が不能と言えるだろう事、また客室への同様の書籍の設置は今回に始まったものではなく、同ホテルで以前から常態的に行われている措置である事、等からすれば、宿泊拒否の意図が窺われる事は否定されないにせよ、今回の書籍の設置をもって、ただちに中国人の宿泊を拒否するものとは解せられない、と言う外ないように思われるところです。

結論はやはり合法というべきでしょう。しかし実際には中国人を排除する効果があるわけで、おそらくは意図的だっただろうところ、本来違法である筈の特定国籍人のみの排除を合法的に成功させた事には、脱法的な側面はあるにせよ、上手くやったものだと、ある種の感嘆を抱かざるを得ないのです。それ以上に、よくこんな怖い事するなとも思うのですけれども。既に発生しているソフト的な攻撃は無論、物理的な攻撃の標的になる可能性は非常に高いだろうし、そこまで行かずとも、機会損失は無論としてそれ以上の事業面の著しい困難に直面する可能性もあって、一歩間違えば、というより何も間違わなくても問答無用で破滅しかねないレベルのリスクを負っているわけですから、普通なら、大手と言えども一私企業グループに負えるようなものではないように思われるのですけれども。。。元谷氏はよく平気ですね。氏の事は何も知りませんが、きっと経営者じゃなかったら靖国通りで街宣車乗り回してただろう、的な人物なんでしょう。そうでもなければ、どうしてこんな無茶を為し得るというのでしょうか。

問題は、このあまりにも有効な排外措置が、他の事業者等へも広がるのか否かです。実際のところ宣伝にもなるでしょうし、そこそこ広まる可能性は低くなく思われる一方で、右翼的な言説・活動自体への忌避感も相当なものがありますから、どうなるとも予測する事は困難です。が、そもそもこの種の、歴史問題周りの行為を中韓との距離を取る為の手段として利用する、というのは日本政府が近年よく行なっているところでもありますし、これから時間をかけて忌避感が薄れていく可能性もないではないのかもしれません。

いずれにせよ、本件で一種のタブーが破られた、と言っていいのでしょう。それも二重に。一つは、政治的な問題、それもナショナリズムに関する対立を公共的な性質の強い、民間の大手事業者の事業に持ち込んだ、という点。もう一つは、インバウンド消費の主たる顧客として半ば特別視されてきた中国人を、その受け手の業界であるにも関わらず、敢えて排除する姿勢を公にした、というものです。

それは、経済的な合理性というだけでは説明し得ない、というよりそれを犠牲にしてでもナショナリズムを優先する、国家を主体とした分離主義の現れと解釈すべきなのでしょう。分離主義は既に欧米での政権においてその隆盛が明らかになっているところですが、それが政治のレベルに止まらず、民間にも波及している事を示すもののようにも思われるのです。これが、一過性のものに過ぎないのか、それとも引き返す事が困難な、決定的な社会の転換の始まりであるのか、それは現時点では知りようのないところです。ただ、その違いは、あまりにも重大なものなのであって、それがどちらとも判じ得ないというのには、やはり不安を覚えずにはいられないのです。

さしあたっては、改正と称する憲法の形骸化・無効化が実現されるか否定されるかが一つの焦点になるでしょうか。自民党の草案は、尽く人権を国家及び公権力に劣後させ、さらに公権力の拡大を図る、あまりにも酷いものです。それが全ての国民の意思でなされるならそれはそれで仕方のない事なのでしょうけれども、そんなわけはないだろうところ、それでも、国家を第一に据え、国家を守るための軍隊を作り、個々人の人権は国家の利益の前に全て犠牲とされる、戦前・戦中の悪夢のような社会が再び訪れる事になるのか、その可能性が小さくないという、陰鬱たる現実を、今回の件は改めて感じさせるものでもあるように思われてならないのです。

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1/17/2017

[law] 過去の検査結果改竄疑惑の高まる豊洲汚染

無理なものを無理と認めて諦める。それだけの、誰もが日常的に行っている至極当然の事が、公の事業であるというだけでこれほどまでに面倒な事になってしまうのですね。

中央卸売市場の豊洲移転の件、地下水検査で従来の検査結果と比較して桁違いの汚染度を示す結果が出たそうで大騒ぎです。シアンまでも検出されたとか。検査が全くの誤りであったというのでもない限り、移転は中止とせざるを得ないものであることは間違いありません。いやまあ、それがなくても絶望的だったんですけれども、これで息の根も止まったかなと。

移転の是非に関する結論に議論の余地はほぼないだろう一方で、これまでの検査結果、特に新知事就任前までは全く環境基準に抵触するものすら無かったところから今回の結果へと転じた理由については現在のところそれを判ずるに足る証拠はなく、様々な憶測が飛び交っています。

あり得る原因としては、およそ次の3つのいずれかとなるでしょう。

1.知事選前後に地下水が汚染された(検査結果は全て正確)
2.以前の検査結果が誤っていた
3.今回(及び前回)の検査結果が誤っている

さてどれだ。

まず3.は一番無さそうに思われるところです。以前とは比較にならない注目が集まっている中、故意にしろ過失にしろ、ここまで極端な誤検出が起こりうる可能性は極めて低いでしょうから。特に検出に困難があるような特殊な物質でも何でもないですしね。

となれば、1.か2.という事になるわけです。まあ本来なら検査を事実として1.と考えるべきところなのでしょう。が、何せこれまでの経緯が経緯です。都を筆頭に当事者がほぼ全員移転の実行に利害を有していて、その致命的な障害となる汚染の検出を忌避しており、一方で検査機関への圧力による結果の改竄も可能というか極めて容易であった、という事情を考慮すれば、2.の、それも悪意に基づいたものとの疑いを排除する事は出来ないように思われるところです。

しかし、もし実際に改竄等があったというのなら、一気に本件が刑事事件になってしまうのですよね。これまでの疑惑とは質が違う話で、歴代担当者は無論、都そのものも刑事的な追求を免れないでしょう。もっとも、余程の確固たる証拠が出ない限り、当人達は認めないでしょうし、司法も動けないだろうところ、当事者は当然に隠蔽に走(ってい)るでしょうから、実際に逮捕・起訴までがなされる可能性はさほど高くないだろうとも思われるわけですけれども。

とはいえ、都は3.の可能性が高いと言い張って再検査をするとしているわけで、現状はそれ以前の段階なのですけれども。まあ、検証する事自体は別段悪い事ではないでしょう。ただ、これまでの検査には何ら疑義を付けなかったのに、都合の悪い結果が出た時に限って否定に走る、というのはやはりあまりにも愚かしい事だと言わざるを得ないし、そもそも検査自体を疑うというのなら、過去の検査結果も同様に再検証が必要という事になるわけです。それに必要な過去の検体は保管されているのでしょうか?まさか廃棄してたりしないでしょうね?ともあれ、多分にいわれのない追求を受けるだろう検査機関の担当者にはご苦労様です。ありもしない不手際が無かった事を証明しろと言われる事ほど理不尽な事はないのですけれども、主観的な、自分達にとっての都合の良し悪しで客観的な結果を左右しようとする都の阿呆な面々は、その阿呆さ故に自分達がどれだけ阿呆なのか理解する事も出来ないのでしょうし、関わってしまった自分の運のなさを嘆くしかないのでしょう。無論、もし共犯だったというのなら、自業自得という事になるわけなのですけれども、さて。

[関連記事 [law] 東京中央卸売市場の豊洲移転頓挫に]

1/10/2017

[biz law] VW米法人の規制対応部門責任者逮捕

年末年始を挟んで、Volkswagenの試験チートプログラムを用いた環境性能詐欺、通称dieselgateの周辺が俄に騒がしくなっているようです。

リコールの部分的な承認があったり、米当局への罰金額等が決着に近づいていると報じられたりする一方、仏等EU域内でも集団訴訟が提起され、本件を巡る責任の具体化が一気に進みつつあった中、米国でVWにおける本件の窓口役を務めていた、同社の規制対応部門のトップであるOliver Schmidtが米FBIに逮捕されたんだそうで。

流石にこれは当然の結果というべきでしょうか。何せSchmidtは、2014年頃に本疑惑が浮上して以来、繰り返し開かれた当局の調査や尋問等においてその回答役を務め、そこで繰り返し技術的な問題であり虚偽ではないとして言い逃れを続け、最終的に追い込まれてその答弁が全て虚偽であり、故意の不正であった事を認める醜態を晒した当人であり、従って虚偽答弁・報告という直接的な証拠が存在し、個人として最も罪に問うことが容易な人物だったのですから。

これから同容疑者への尋問等を通じてより内部的な部分への捜査が進められる事になる事は間違いなく、それによって少なくとも経営層の容疑は相当な所まで具体的に把握されるだろうところとなりました。この手の事件において捜査が極めて早い米国にしてはやはり非常に時間がかかった印象が強いところですが、同氏クラスの人物の逮捕というのは間違いなく本件捜査における最重要局面の一つであって、そこで得られるだろう証拠ないし情報は決定的な意味を持つものが期待されるであろうし、またそうそう何度も繰り返し得るものでもない事から、おそらくはそこで期待し得る成果から想定される展開、経営陣や実働部門への追求、あるいは芋づる式の摘発等、その準備に相応の時間がかかったのであろうかと推測されるところです。そうであれば、刑事的な処理の事前準備はほぼ完了しているのでしょうから、これを契機として一気に摘発が進められる事になるのでしょう。

そして、刑事的な処理が進めば、それに伴って未だ不明確な責任の所在も明らかになって行く筈ですから、民事的にも、ユーザからの損害賠償請求、告発、また株主からの代表訴訟等が提起されていく事になるのでしょう。ようやく、本件の実情が具体的かつ公に追求されるようになる、という事です。司法的にはまさにこれからが本番、というわけですが、そこでどんな惨状が曝け出され、どんな教訓が見出され得るのか、やはり興味を抱かずにはいられないのです。

ところで、Volkswagen社は業績的には回復しているんだそうで。極めて意外に感じられるところはありますが、無論これは賠償等が表面化していない、すなわち会計的に損失を先送りしているから、というだけの事なわけですけれども、その辺の責任が具体化する前に潰れて有耶無耶になるという事態を避けられるという意味で、一応は歓迎すべき事と言えなくもないのかもしれません。

しかし、Diesel亡き後の技術的柱のない同社の話ですから、そもそも安定して事業を継続する力があるのか否かは別問題なわけで。いくらDieselの代わりの柱が必要だと言っても、そこに今更EV推しとか。。。あくまで環境をメインコンセプトとする、という事なのでしょうけれども、本件によって、VWが言うcleanはもはやdirtyとしか思えなくなってしまっているというのに、それでもその路線というのは、ちょっと正気を疑わざるを得ないのですよ。そもそも需要も桁が幾つも違うし、Dieselの代わりには成り得ないと思うのですが。自動運転にしても、Teslaよりヤバそうな予感しかしませんし。ともあれ、かように意味不明な状況のメーカーが販売台数世界一というのは、世の中の不条理を具現化しているようにも感じられるところですが、さてこれからどうなることやら。

F.B.I. Arrests Volkswagen Executive on Conspiracy Charges in Emissions Scandal

[過去記事 [biz law] VWディーゼル車に排気ガス適合試験での不正プログラム使用発覚]

1/01/2017

[biz] 相変わらず暴走事故等の相次ぐTesla、果てなき無謀

Teslaの自動車が暴走事故を起こしたとして、またしても訴訟が提起されたそうです。今回の被害者たる原告はJi Chang Son氏、同社製SUVのModel Xをガレージから徐行発進させたところ、突然加速して自宅に突っ込み、壁等を破壊しつつリビングまで到達してしまった、とのことで、損害賠償等を請求しているそうです。なお、同訴訟の提起に際し、NHTSAに報告されている7件のModel Xの暴走報告を指摘し、それらを併合した集団訴訟としての取り扱いを請求している、とのこと。

これに対し、Teslaは100%ユーザの操作ミスによるものである、といつもの通りに自社の責任は一切認めない旨の主張をしているそうです。

無論、第三者からすれば、原告とTeslaの主張のいずれが正しいのか、あるいはいずれも正しくないのか、その正誤は判然としません。通常の発進時にアクセルをベタ踏みするミス、というのはいささか不自然に思われるし、仮にそうだとして、Tesla車にもれなく備わっている筈の衝突防止機能は何故動作しなかったのか、というあたりには一般に疑問を感じるであろうとは思われるところですが、それを判断する事実を知り得ない以上、考えても意味のない事なのでしょう。

そういう事実の検証は司法の手続を待つ他ないとして。もとより、Tesla車はAutopilotはじめ各種の自動的に動作する類の機能を登載していて、しかしそのほぼ全てが技術的に実績もなく未熟な事も周知の通りであり、殊にその安全性について極めて強く懸念を持たざるを得ない状況にあるわけです。

そして、実際にこれまでも自動運転絡みで誤動作による暴走ないし事故を度々起こし、死者すら発生させて来た、という悪い意味での実績は十分にある一方、その度にTeslaは今回のそれと同様の対応、すなわち問題なしだとか、事故率は高くない等として責任逃れの強弁を弄し、殆ど修正もしないまま、危険の放置ないし拡大を続けて来た事も周知の通りなわけで、そのあえてリスクを侵す悪意に満ちた事業展開上の振る舞いからすれば、必然的にTesla側の瑕疵を強く疑わざるを得ないところです。

特に、今回の対象であるModel Xは、2015年にリリースされてから、上記の通り暴走等の不具合の報告が頻繁にされているモデルでもあります。既に訴訟も発生しており、上開きのドアが誤動作で開閉してユーザの妻と他の車を殴り飛ばした事故の損害賠償訴訟では、実質的にTeslaが敗訴する形での和解が成立しています。販売台数比で言えば事故率は低いとは決して言えず、世界で一番安全なSUV、という同モデルの売り文句は殆ど詐欺のようにしか感じられないわけですが、それはさておき。

無論それら以前の事例は間接的な証拠に過ぎないわけですけれども、全く無視する事もまた出来ず、従って一般にTesla側の主張を直ちに受け入れる事は到底出来ないものと考えざるを得ないだろうところ、本件訴訟についても多かれ少なかれそのような作用が働くでしょう。通常の自動車メーカーであれば元々そのようなリスクは負わないようにするものですから、これは殆どTesla特有の問題と言うことができるでしょう。

これは偶然そうなった類のものではなく、同社が事業展開を優先し、それと引き換えにあえてユーザを危険に晒すリスクを許容した必然の結果と言えるでしょう。その判断は妥当か否か、それは解釈の仕方、基準によるとしか言えないのでしょうけれど、危険に晒される側としては一般に本来許容出来ないレベルに達しているように思われるところです。従来通りの開発方法に倣えば事前に防止される性質のものである事もそう感じさせる要因の一つなのでしょう。

要するに無謀の結果という他ないわけです。その無謀が、犠牲者が増える前に改められるよう願いたいところですが、これまでの経緯に照らして、同社がその傲慢で危険な事業運営のやり方を改める事は、残念ながら強制力によって禁止されない限り、おそらくないのでしょう。せめて、他社が追従することのないよう願う次第なのです。しかし、それも難しいでしょうか。実際、メーカーではありませんが、Uber(+Volvo)のように、世界で最もリスクを許容する米当局の規制すら無視して自動運転車の運用を強行した例も既にあるわけですし。全く以って恐ろしい話です。

Tesla Model X owner claims car accelerated on its own and crashed through a wall
UPDATE 1-Tesla owner files lawsuit in California claiming sudden acceleration
Tesla Settles Model X Case Over Alleged Design Flaws
Uber's self-driving cars quit California and leave for Arizona on the back of a self-driving truck

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12/27/2016

[biz] 東芝の原発事業減損再び

東芝が原発事業に関連してまたしても数千億円規模の減損の見込みだそうです。それ自体はある程度予想する向きもあって驚きはそれほどないものの、2期連続というのは流石に問題なしとは到底言えないでしょう。大体、今期は回復するって散々言ってたところにこの有様ですから、正しく嘘つきと言う他ないところです。この種の業績についての虚言は、常習犯として富士通が広く認知されているところですが、そこに東芝も並ぶ事になりそうです。直近で見ればむしろ東芝の方が酷いと言えるでしょうか。

ともあれ。その対象は、昨年末(2015年12月)に同社の原発子会社であるところの米ウェスチングハウス(WEC,WH)が買収した、原発の建設や運用等を総合的に請け負うサービス会社CB&I Stone & Webster。具体的な条件等は非公表につき不明ですが、元々債務超過にあった同社の買収に際し、その価格やのれん代等は何故か買収成立後に協議により定める事とされていたところ、今年一杯CB&I側とその価格決定の方法を巡って紛争(売主のCB&I側から提訴)に陥り、先日ようやく第三者たる会計士の決定に委ねる旨の司法判断が下されたところだそうです。なお、暫定的に東芝が計上していたのれん代は100億円規模(8700万$)とのこと。

なんとなくそれっぽい雰囲気は漂うものの、これだけでは数千億の減損が何処から出てきたのか、第三者からは判然としません。従って推測するしかないわけですが、現在知りうる情報から解釈すれば、要するに、買収に伴うのれん代について、本来は買収額+債務超過額であるのに東芝の計上したのれん代が著しく低かったところ、今回の決定に伴ってその数千億円規模の差額が表面化する見込みとなり、同事業は業績不振にある事から、表面化すれば即減損が必要になる、という事かと思われるわけです。

そうだとしても、わけがわかりませんね。というのも、同事業が債務超過にある事、それに伴って減損の可能性がある事は、買収当時の公式文書にも記載されており、従ってその超過額分の損失リスクがある事を東芝が知らなかったという事はあり得ないわけです。その額についても、計上されていたような100億程度ののれん代で済むような規模・性質の事業ではない事も明らかだった筈です。また周知の通り、東芝は当時既に大規模な不正会計が発覚して巨額の赤字計上が避けられない状況にあり、原発事業の巨額の減損はその焦点の一つでした。事業継続の資金調達にも苦慮するそのような状況で、なにゆえにその減損リスクを加重し、その額も倍加させるような本件買収を強行したのか、合理的な解釈は困難のように思われるところです。

同社の原発事業が窮地に陥っていたが故に、同事業を維持継続するためには無理にでも拡大を図る姿勢を見せる必要があったという事なのか、それとも、危機とは関係なく、単にWH買収時と同様、リスクを承知で強行したというだけの事なのか。何にせよ無謀という他ないのでしょうけれども、それをやってしまうというのが、前代未聞の会社ぐるみの不正を起こし、またもんじゅ等による国家への損害も含めて原発事業を通じ損失を積み上げ続けてなお反省するところの皆無な東芝たる所以なんでしょうか。

リスクを負うのもそれで損失を被るのも、自分たちで責任を負える範囲内でというならそれぞれの自由であろうけれども、原発のような、それでは済まない公共的な事業でのこの無謀ぶりには、その担い手としての資格に欠けるものと断ぜざるを得ないのです。

Chicago Bridge & Iron 社の WEC に対する 差止請求 の棄却について
米国 CB&I ストーン・アンド・ウェブスター社の買収完了について

東芝、米原発サービス会社買収で数千億円減損の可能性

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12/26/2016

[biz] 恒例行事化したMRJ納入再延期、漂う諦観

三菱重工が開発中の短距離向け旅客機MRJの納入予定、さらに延期の運びになったんだそうです。同機の予定延期は1年ぶり、通算で実に5回目。もはや殆ど毎年の恒例行事と言っていいだろう現状、驚いている人は殆どいないのでしょうけれども。

度重なる延期のもたらす帰結、その詳細については既に各所で散々言い尽くされて来たところですし、ここで繰り返す意味もないでしょうから省略しますが、これでembraelとbombardierはじめ競合他社への顧客流出はさらに進み、既に回収不能と評価する他ない巨額に達した開発費等初期投資の額もさらに積み上がる事となりました。その意味するところは明らかです。

今回の延期の理由はいつもの通り、要するに品質管理の不手際による開発の遅延。直接的な事象としては、型式取得に必須の評価試験の開始が予定から大幅に遅れている事と、主に米国での規制当局の動向を読み間違え、重量超過に対する仕様変更が必要な見込みとなった事、と言われます。

前者は兎も角、後者は擁護のしようもありません。当然ながら、重量は航空機における最も基本的な仕様であり、基本設計に影響を与えずにそれだけを削減することなど出来ません。座席数や航続距離を減らすなら用途自体が変わって顧客の計画も練り直しになり、当然受注も(ANAのような特殊な顧客を除き)やり直しになるし、そこは変えずに機体の軽量化で乗り切るというのなら、それこそ基本構造や材質の設計から修正する事になり、もはや延期では済まなくなってしまうわけですから、いずれにせよ致命的と言うべきところです。もっとも、その理由がなんであれ、どうせリリースされないのなら結果としては同じだし、一々云々する意味もさほどない、とも言えるわけですが。ただ、どうもその辺が定まらないからか、今回は延期先の見積もり自体が困難になっているっぽいのが不穏ではありますけれども。

結局のところ、再延期がなされても驚きも感じられないという、ある種の諦観が広まっている事実それ自体が、同事業の先行きがもはや絶望的と言っていい状況にある事を証明しているのではないかと思うのです。少なくとも世間の大半がそう認識している、とは言えるでしょう。

この種の、当初の見込みの甘さ、準備段階の不備、実行における能力不足、それらがもたらす費用超過による不採算化、といった事業の立ち上げ全般に渡る失敗により泥沼に陥った状況、そしてそこに至ってなお有効な修正も撤退も出来ず、ただ損害を積み上げながら死の行軍を続ける以外に何も出来ない、という有様は、正しく惨状という他ないものです。東京五輪も似たような状況ですが、あちらは単発につき上限や終りが見えるだけまだマシと言えるでしょうか。

航空機事業を甘く見て、無謀にも突っ込んだ報いを受けているだけ、とも言えそうですが、何にせよ、さてこれからどう始末を付けるのか。事業規模の大きさとそのスパンの長さから、自ずと損害の桁も洒落にならないものになる事は避けられないだろうところ、他の事業も火の車な事もあるし、場合によっては自動車よろしく、とまではいかずとも、近い所まで行ってしまう可能性も否定できないところですが、さて。

MRJ開発で追加負担=納期時期「読めず」-三菱重工社長